ESG投資とは
ESG投資とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」といった3つの観点から、企業の持続性及び将来性等を調査した上で投資先となる企業を決める投資方法のことです。
従来の投資方法の場合は、主に企業の業績や財務状況のみが重要視されてきましたが、近年では「それらの財務的な情報だけで長期的な企業の持続性や収益を判断するべきではない」という考え方が広まり、今やESGという「非財務的な要素」を考慮した上で投資判断を下す投資方法こそがベーシックとなりつつあります。そのためESG投資においては、「財務状況は良好か」「従業員への配慮は行き届いているか」「環境保全には取り組んでいるか」「コンプライアンスは遵守されているか」等の多角的な視点から企業を評価し、投資先を決めていくという投資先選定方法がとられています。
なぜESG投資が重要視されるようになったのか
ESGの概念が認知されるようになったきっかけは、2006年に当時の国連事務総長コフィ―・アナン氏が金融業界に向けて提唱した「責任投資原則」(PRI)というイニシアティブです。PRIでは、機関投資家の意思決定プロセスにESGの概念を組み込むことが推進されており、提唱以降は投資における世界共通のガイドライン的な立ち位置となっていますさらに2008年のリーマン・ショック以降は、「短期的な利益ばかりを目指す従来の投資スタイルは見直すべき」という声が高まったため、世界中の多くの投資機関がPRIへ署名するようになりました。
2020年8月時点で、PRIに署名している企業や年金基金の数は3,000以上に達しており、日本からは85の機関が署名しています。このようにESG投資は、いまや世界的な投資の潮流となっています。
ESG投資におけるメリット
メリット➀長期的な資産形成ができる
例えば、今まさに急成長中の企業へ投資することは短期的かつ大きなリターンが見込めるものの、その反面背負うことになるリスクも大きいという特徴があります。そのため、投資初心者や「なるべく低リスクで投資したい」と思っている方にはお勧めではありません。
例えば、今まさに急成長中の企業へ投資することは短期的かつ大きなリターンが見込めるものの、その反面背負うことになるリスクも大きいという特徴があります。そのため、投資初心者や「なるべく低リスクで投資したい」と思っている方にはお勧めではありません。
一方、ESG投資は短期的かつ大きなリターンとは違い、長期的かつ安定したリターンを目指す投資方法となっているため、長期的な展望を持って資産を拡大させていくことができます。また企業が長期的な経営を続けていく上では、「経済状況の変動」「環境問題が原因による災害」「人権や労働環境に対する意識の変化」等、経営を脅かすようなリスクが発生する可能性は常にあると言えますが、ESGに取り組む企業はこれらのリスクに対する対応力が高いという傾向があります。
メリット②安定的な運用が行える
短期的な利益を追求するタイプの企業に対する評価は、業績が良くなれば一気に上がり、反対に悪化すれば一気に下がりやすいのが特徴です。また、そのような企業において万が一不祥事が発生すれば、企業価値は大幅に下落してしまいます。
短期的な利益を追求するタイプの企業に対する評価は、業績が良くなれば一気に上がり、反対に悪化すれば一気に下がりやすいのが特徴です。また、そのような企業において万が一不祥事が発生すれば、企業価値は大幅に下落してしまいます。
その点、ESG投資における投資先は長期的かつ多角的な視点から選ばれるため、一時的な業績の悪化等が起きても、投資から除外されるリスクは極めて小さいと考えられています。またESG投資の場合、投資先となる企業の資産価値は簡単には崩れにくいと考えられているため、投資家は安定して運用を続けていきやすいと考えられています。
メリット③社会課題の解決に貢献できる
ESG投資において選出される投資先は、貧困、環境、人権、教育、労働といった様々な問題の改善もしくは解決に向けた取り組みを行っている企業です。つまり、ESG投資は投資先企業の社会貢献を後押しする役目を担っているということになります。そのような側面があるため、ESG投資はしばしばSDGs(2030年までの達成を目指す持続的な開発目標)と関連付けて語られることもあります。
ESG投資において選出される投資先は、貧困、環境、人権、教育、労働といった様々な問題の改善もしくは解決に向けた取り組みを行っている企業です。つまり、ESG投資は投資先企業の社会貢献を後押しする役目を担っているということになります。そのような側面があるため、ESG投資はしばしばSDGs(2030年までの達成を目指す持続的な開発目標)と関連付けて語られることもあります。
日本におけるESG投資を取り巻く状況
2020年10月26日、菅総理大臣は就任後初となる所信表明演説にて、「2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにすることを目指す」と表明しました。この表明は、パリ協定における「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に保ち(2℃目標)、かつ1.5℃以内に抑えられるよう尽力すること(1.5目標)」という目標へ日本も明確に踏み込んだことを意味しており、改めて日本国内におけるESG投資の重要性を周知させるきっかけとなりました。
そして2021年1月19日には、経済産業省と環境省が合同で取りまとめた「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」が公表されました。このガイダンスは、政府が策定する世界初となるサーキュラー・エコノミー(循環型経済)に特化した開示及び対話ガイダンスです。サーキュラー・エコノミーやプラスチック資源循環等に関する取り組みを進めている日本企業が、国内外の投資家や金融機関等から適正な評価を受けて投融資を呼び込めるようにしていくためのポイントが、事例を交えて詳しく解説されています。このように、政府が進んでESG投資に積極的な姿勢を見せていることから、今後ますますESG投資に関心を持つ企業や投資家が増えていくと考えられています。