「はやぶさ2」が地球に帰還!その快挙から見える未来への可能性

宇宙
イラスト:池下章裕

2020年12月6日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2014年に打ち上げられた日本の小惑星探査機「はやぶさ2(hayabusa2)」のカプセルが、6年間のミッションを終え地球に無事帰還したことを発表しました。
オーストラリアのウーメル砂漠で発見された「はやぶさ2」のカプセルからは小惑星「リュウグウ」で採集したと見られるサンプルが入っており、現在は相模原市にあるJAXAの宇宙研究所にてこのサンプルの分析が進められています。

この「はやぶさ2」カプセルの帰還は「歴史的な快挙」として大いに話題となりましたが、宇宙にあまり詳しくない人からすれば、「何がそこまで凄いのか分からない…」と思ってしまうのが正直なところではないでしょうか。
そこで今回は「はやぶさ2」が宇宙へ飛び立つまでの歴史を学びつつ、「はやぶさ2の成し遂げたことはどれだけ凄いことなのか」という点について紐解いていきたいと思います。

日本における宇宙探査機の歴史

惑星間試験探査機「さきがけ」(MS-T5)(C)JAXA

日本初の宇宙探査機

日本で初めて宇宙探査機(人工惑星)が打ち上げられたのは、今から35年前の1985年になります。
その探査機は「さきがけ」と名付けられ、後にハレー彗星を探査する目的で打ち上げられた探査機「すいせい(PLANET-A)」の試験機として打ち上げられました。
「さきがけ」は1986年には国際協力による探査機群「ハレー艦隊」の1つとしてハレー彗星付近の太陽風磁場やプラズマを観測し、1992年には日本の探査機として初の地球磁気圏の断面観測などを行いましたが、推進剤の不足により1999年には送信機が停止され、その役目を終えました。

「MUSESシリーズ」の誕生

「さきがけ」が打ち上げられてから5年が経過した1990年、宇宙科学研究所は後の「はやぶさ」「はやぶさ2」へと続くMUSESシリーズの第一号である「ひてん(MUSES-A)」を打ち上げることに成功します。
「ひてん」は宇宙における軌道制御技術を習得するための工学実験機を最大の目的として打ち上げられましたが、宇宙塵の観測や月探査など数々の宇宙探査も行いました。

また「ひてん」とその孫衛星である「はごろも」は、米ソ以外の宇宙探査機では初めて月周回を行ったため、工学実験機ではなく月探査機として見なされることもしばしばあったそうです。

その後、1997年に第二号として打ち上げられた「はるか(MUSES-B)」は、3年と言う寿命を遥かに超える8年9ヶ月もの間、宇宙空間で天体観測を行う「電波天文衛星」として運用されました。

歴史に残る初代「はやぶさ」の功績

小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)イラスト:池下章裕

数々の探査機の打ち上げと運用に成功した宇宙科学研究所は、「ひてん」「はるか」に続く「MUSESシリーズ」の第三号目にあたる探査機の打ち上げを目指し始めます。
それこそが、先日帰還した「はやぶさ2」の前身である小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」です。

「小惑星の表面から物質を採集して地球に帰還する」という目的を背負い2003年に打ち上げられた「はやぶさ」は、見事2年後の2005年には「小惑星イトカワ」へ到達し、惑星表面の観測およびサンプルの採集に成功します。

その後、燃料漏れや音信不通などの様々なトラブルに見舞われながらも、それらを乗り越え「はやぶさ」は2010年に無事サンプルの入ったカプセルを地球へと戻し、役目を終えた探査機は最後、大気圏突入と共に燃え尽きます。

この「様々な困難に直面しながらもミッションをクリアし、最後は儚く燃え尽きた」というドラマチックさに、当時は多くの人々が心を揺さぶられました。
そして「はやぶさ」は「世界で初めて地球重力圏外の天体の表面に到達し、サンプルを地球へ届けた探査機」として、宇宙開発の歴史にその名を刻んだのでした。

「はやぶさ2プロジェクト」のはじまり

小型副衛星PAF結合時の種子島宇宙センター衛星整備棟における「はやぶさ2」(C)JAXA

「はやぶさ」の功績によって一気に躍進した宇宙研究をさらに先へ進めるべく、はやぶさの後継機として改良を重ねられ誕生したのが「はやぶさ2」です。

初号機である「はやぶさ」が小惑星と地球間の往復に初めて挑んだ「実験機」だったのに対し、「はやぶさ2」は水や有機物が存在している惑星を調査し、より明確に生命誕生の謎に迫ることを目的とした「実用機」として開発されました。
そのため目的地には、水や有機物が含まれている可能性が高いC型小惑星の「リュウグウ」が選ばれました。

そして2014年12月に打ち上げられた「はやぶさ2」は、約3年半の歳月をかけて2018年6月に目的地であるリュウグウに到達します。
到達後は搭載された3台の光学航法カメラでリュウグウの形状や表面を撮影したり、レーザー高度計を用いて探査機とリュウグウ間の距離を測定するなどのミッションを行いました。

また2018年9月には、同じく搭載してきた小惑星探査ロボット「MINERVA-II1」(ミネルバ2-1)2機をリュウグウ表面に投下します。
ミネルバはモーターを利用して移動しながら、カメラと温度計で小惑星表面の様子を観測できる仕組みとなっています。
このミネルバの働きにより、「はやぶさ2」はリュウグウ表面から一面に岩塊の広がる画像を多数送信することにも成功しました。

決して順風満帆ではなかった「はやぶさ2」の挑戦

 小惑星「リュウグウ」(C)JAXA、東大など

リュウグウに到達してから数々のミッションを達成し、順調に思えた「はやぶさ2プロジェクト」でしたが、決して1から10まで計画通りに行ったというわけではありませんでした。

中でも「最大のミッション」として2018年の9~10月には実施予定となっていたサンプル採集は、リュウグウの表面が事前に予想されていた「平坦な砂地」とは大きく異なる「凸凹な岩地」だったことから思うように進まず、当初の予定からの大幅な延期を余儀なくされてしまいました。
しかし、プロジェクトチームによる賢明な技術開発および改良により、延期の末2019年2月に行われた「第一回タッチダウン(着陸)」では見事全ての運用シーケンスを成功させ、念願のサンプル採集を実現させることができました。
このタッチダウン時に舞い上がったリュウグウ表面の岩の欠片は、「タッチダウンの成功を祝福する紙吹雪のようだった」とも例えられています。

「はやぶさ2」の成し遂げた快挙

リュウグウ表面の人工クレーター (C)JAXA、東大など

第一回タッチダウンに続き第二回タッチダウンも成功させた「はやぶさ2」は、その他の「リュウグウ表面に人工クレーターを作る実験」や「重力場の観測」などのミッションも次々と成功させます。
そして2019年11月に全てのミッションを終えた「はやぶさ2」は、約1年後に無事カプセルを地球へと帰還させました。

「はやぶさ2」が地球へ投下したカプセルを分析チームが開けてみると、中には予想を上回る大量のサンプルが入っていました。
2020年12月18日にはそのサンプルの量は5.4gだということが判明していますが、これは当初目標としていた100mgのなんと54倍にあたります。
また分析チームによると、カプセルから採取したガスを分析した結果、そのガスはリュウグウ由来のものであることが分かっています。
何より気体状態の物質が地球圏外からサンプルリターンするという事例自体、世界的に見ても初めてだそうです。
今後分析チームは半年ほどかけてさらにサンプルを分析していきますが、目標を上回る量のサンプル採集に成功したというだけでも、「はやぶさ2」は歴史的な快挙を成し遂げたと言えるでしょう。

「はやぶさ2」の偉業がもたらす未来の可能性

今回のカプセル帰還で「はやぶさ2」は大いに話題となり、テレビなどのメディアやネットニュースなどでも連日取り上げられています。
しかし「はやぶさ2」のミッションはまだまだ終わりではなく、カプセルと分離した後探査機は再び地球を離れています。

次なる目的地にはリュウグウよりも遥かに小さい「1998 KY26」という小惑星が予定されており、2021年に正式にミッションが決定すれば、「はやぶさ2」はまた長い旅路に出ることになります。
このような人類未到達の小惑星に次々ランデブー(接近)することができれば、小惑星由来の隕石との衝突から地球を守る手がかりを見つけられるだけでなく、未知なる生命の存在に出会う可能性も一気に上がると考えらえています。

まとめ

今回は日本における宇宙探査機の歴史から、「はやぶさ2」が成し遂げた様々な快挙などついてチェックしていきました。
「はやぶさ2」の持ち帰ったサンプルに関しては現在もまだ分析が続けられているため、今後新たな情報が発表され次第当コラムでも取り上げていけたらと思います。
日々進化する日本の宇宙開発からは、今後も目が離せませんね!

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