自然の中でのんびり過ごしたり、アウトドアな遊びを楽しんだりするのにうってつけなキャンプ。
近年ではグランピングやソロキャンプなどがブームとなり、ますます人気が高まっていますが、一方でゴミのポイ捨てをはじめとしたキャンプ場の環境汚染も年々深刻化しています。
キャンプを正しく楽しむためには、環境への配慮は必要不可欠です。
今回は、間違った方法で行われたキャンプが環境に与える影響や、環境に優しく持続可能なキャンプを行う方法について解説していきます。
環境に負荷を与えるキャンプでの行為
地面で直接火をおこす
キャンプをする際に最も注意を払わなければならないのが、火の扱いです。
着火から処理まで正しい方法行わないと、自分や周囲のキャンパーだけでなく、環境にも大きなダメージを与えてしまうおそれがあります。
キャンプ界隈では毎年、特に乾燥する冬場はキャンプにおける火の扱い方に対する注意喚起が行われていますが、残念ながらキャンプ場における火事の発生はなかなかゼロになりません。
特に注意すべきなのが、地面の上で直に火おこしをする「直火」です。
近年では危険という理由で禁止にしているキャンプ場も増えていますが、そのような決まりを調べず、また野外における火おこしの知識も無いままに直火をしてしまうと、周辺の植物や木の根に火が移り、辺り一面の自然が失われる可能性があります。
また最悪の場合大火事に発展し、キャンパー全員が命の危険にさらされる可能性もあります。
このように直火にはさまざまな危険性があるため、仮に「直火OK」のキャンプ場に行くとしても、焚火台を用意しておくのが無難だと言えるでしょう。
洗剤をつけた食器を川で洗う
キャンプの醍醐味ともいえるアウトドアご飯ですが、近年ではキャンプやバーベキュー後に使用済みの食器を川で洗う行為が各地で目撃され、大きな問題となっています。
今年の夏も、岐阜県の某河川で洗剤をたっぷりかけた食器や鉄板を川で洗う人々の姿がSNSで拡散され、それに対し多くの批判的な声が寄せられました。
このように、食器の汚れや洗剤を川に流す行為は川の水を汚染し、自然環境や生態系に大きな悪影響を及ぼします。
実際、ここ数年間で度々川魚の大量死が確認されており、川での食器洗いが一因ではないかと考えられています。
このような行為をする人々は、大抵「自分たちが洗ったくらいじゃ大した影響は無い」と考えています。
しかし、多くの人々が同じように考え、同じような行動をした結果、いまや多くの水生生物が絶滅の危機にさらされているのです。
このまま川の水質汚染が進めば、巡り巡って気候変動や漁業資源の減少にも影響をもたらす可能性があります。
ゴミを放置する
キャンプ場におけるゴミ問題は長年指摘されていますが、未だになかなか改善されておらず、この問題によって閉鎖に追い込まれてしまったキャンプ場も少なくありません。
ゴミを放置したままにすると、ゴミの臭いに誘われて野生生物が侵入する、カラスなどがゴミ袋を食い破って中のゴミが散乱する、風に飛ばされたプラスチックゴミが海や川に流入するなど、さまざまな環境問題が発生するおそれがあります。
たしかにキャンプ場によってはゴミ捨て場が設置されていなかったり、テントを張った場所からゴミ捨て場が遠かったりする場合もありますが、だからと言ってゴミを放置して良い理由にはなりません。
キャンプ場におけるゴミ問題を解決するためには、キャンパー一人一人がマナーを守り、適切な処理を行うことが大切です。
環境に配慮したキャンプの楽しみ方
火をおこす際のマナーや処理方法を事前に調べておく
キャンプで焚き火をする場合、「場所選び」を慎重に行い「後処理」をしっかり行うことが大切です。
まず「場所取り」ですが、焚き火は火の粉が飛び散りやすいため、たとえ直火でなくとも場合によっては山火事を引き起こす可能性があります。
そうならないように、焚火をする場合は周りの植物に火が移らないよう、草木からなるべく離れた場所で行うようにしましょう。
次に「後処理」ですが、焚火が終わった後、完全に消火していない炭や灰を残したままにすると、それが火種となって大きな火災が起こる可能性があります。
火災が起きなかったとしても、自然の力で分解されない炭や燃え残った薪をそのまま放置しておくと、土壌に大きなダメージを与えるおそれがあります。
これを防ぐためには、「焚き火シート」や「耐火シート」がオススメです。
どちらのシートを焚き火台の下にあらかじめセットしておくと、下に落ちる炭や灰を綺麗に処理することができます。
集めた炭や灰は持参した火消し壺に入れるか、キャンプ場の灰置き場に捨てるなどして最後まできちんと処理しましょう。
食器やカトラリーは繰り返し使えるものを選ぶ
キャンプをはじめとしたアウトドアな場面では、ついつい捨てやすい紙製のお皿やプラスチック製のカトラリーを選んでしまいがちですが、いざキャンプ場にゴミ捨て場が無かったりすると処理に困りますよね。
なるべくゴミを出さないためにも、丈夫で繰り返し使えるアウトドア用食器を揃えておくことをオススメします。
近年では木製や金属製、また無骨なデザインから可愛らしいデザインまでさまざまなタイプがあり、またアウトドアショップだけでなくホームセンターや100円ショップでも手軽に購入できるため、まずはお皿一枚だけでもゲットしてみてはいかがでしょうか。
食器を洗う時は自然由来の洗剤や石鹸を使う
キャンプ場で使った食器を洗う場合は、前述したように川ではなく炊事場で行うことが大前提ですが、キャンプ場によっては浄水設備が万全に整っておらず、間接的に近くの川や土壌にダメージを与える可能性があります。
特に石油由来の合成洗剤は自然の中で分解されにくいため、河川の生態系に悪影響を及ぼす場合があります。
なるべく食器洗いによる環境負荷を下げるためには、自然由来の成分で作られた洗剤や石鹸を使用することをオススメします。
有名どころでは、「ヤシノミ洗剤」や「フロッシュ」、「エコベール」などがあります。
キャンプ場に着いてから「うっかり合成洗剤を持ってきてしまった!」と気付いた場合は、できるだけ洗剤を薄めて使うといった工夫をすると良いでしょう。
ちなみに、食べ終わったらすぐにクロスやキッチンペーパーで食器の汚れや脂分をふき取っておくと、環境負荷を下げるだけでなく洗い物が楽になって一石二鳥です。
もしキャンプ場に炊事場が無い場合は、その場では一先ずアルコールスプレーを吹きかけてキッチンペーパーで汚れを拭き取り、帰宅後にしっかり洗うようにすると良いでしょう。
食材は下処理不要のものを選ぶか、出発前に下処理をしておく
野菜の皮やキノコの石づきなどの生ごみをなるべく減らすためには、はじめから下処理の要らない食材を用意するのが無難です。
近頃ではキャンプの定番メニューであるカレーの具(ニンジン、ジャガイモ、タマネギ)がまとめて下茹で処理されたパックもスーパーやコンビニで手軽に買えるので、そういったものを活用するのも良いかもしれません。
「きちんと一から作りたい」という場合は、キャンプに行く前日にすべての食材の下処理を済ませ、当日はジップロックなどに入れて持参すると良いでしょう。
ちなみにポトフやおでんなどのスープやつゆは製氷機で凍らせておくと、保冷剤としても使えて便利です。
まとめ
火の扱い方、食器の選び方、食材の下処理など、環境に優しく安全なキャンプを楽しむためには、すべてにおいて「事前準備」が大切だということが分かりましたね。
数十年先もキャンプを楽しめる環境を守るためにも、まずはできることからはじめてみてはいかがでしょうか?