エネルギー危機の今、原発は再稼働すべきか?メリットとリスクを比べつつ考えてみた

エネルギー(再エネ・化石燃料etc.)

相次ぐ自然災害や異常気象の発生、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、日本は今、深刻なエネルギー危機に直面しています。
元々日本はエネルギー自給率が低く、長年エネルギーの大半をロシアを含む海外からの輸入に頼っていたことも、現在の危機的状況を招いた一因だと考えられています。
そんな中、国内では「原発を再稼働すべきだ」という声が大きくなりつつあります。

確かに、現在停止している原発のうちいくつかが再稼働すれば、エネルギーは一時的に安定するかもしれません。
しかし忘れてはならないのは、日本は世界で唯一の被爆国であることと、2011年3月11日に発生した福島第一原発事故の爪痕が未だ大きく残っていることです。
このような背景があるため、日本では「再稼働賛成派」と「反対派」で大きく意見が分かれているのが現状です。

そこで今回は、原発を再稼働するメリットとリスクを見比べながら、本当に原発は再稼働すべきなのか、改めて考えていきたいと思います。

原発を再稼働するメリット

電気料金の値下げにつながる

東日本大震災および福島第一原発事故が発生した2011年から現在に至るまでの間で、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーによる発電量は大幅に増えました。
しかし、これだけで十分な電力量を賄うことはまだ難しく、実際は全国の火力発電所が震災以前よりも多くの燃料を使って発電量を増やし、稼働停止した原発分の穴を埋めているのが現状です。

その結果、燃料価格と再エネ賦課金の値上げが重なり、電気料金の上昇傾向が続いています。
東日本大震災が発生する前の2010年度と現在を比較すると、中小企業では年間およそ600万円、一般家庭では年間約1万円電気料金が上がっていることが分かります。
中でも原発への依存度が最も高かった関西電力管内では、値上げが顕著になっていました。

しかし2017年8月、関西電力は震災以降に大手電力会社で初めて電気料金の値下げを実施しました。
この値下げの実現には、震災以降稼働を停止していた福井県の高浜原子力発電所3号機と4号機が、2017年6月と7月に運転を再開したことが大きく貢献しています。

しかし冒頭でも触れたように、2022年月24日にエネルギーの輸入先であるロシアが起こしたウクライナ侵攻によって、日本は再び燃料不足による電気料金値上げのリスクにさらされています。
そのため、「日本のエネルギー自給率を上げて電気料金を安定させるためには、原発を再稼働する他ない」という意見が上がっているのも事実です。

猛暑や極寒時の電力需給ひっ迫に備えられる

「エネルギー自給率を上げたいなら、再エネをもっと利用すればいいのではないか」という意見もあります。
しかし、再エネはまだコストが安定しておらず、今むやみに増やしてしまうと、国民の負担がさらに上がる可能性があります。

再エネ利用において考えるべきリスクは、他にもあります。
たとえば2022年6月下旬、季節外れの厳しい暑さによって、東京電力管内では電力需要が想定以上に増加し、「電力需給ひっ迫注意報」が発令されました。
注意報による節電要請が初めて行われた6月27日夕方には、電力供給の余力として最低ラインの「予備率3%」を下回り、一時はかなり緊迫した事態となりました。

結果的に大規模な停電などは発生しないまま、6月30日には注意報が解除されました。
解除の理由として、東電は「前日は弱いと考えられていた日射が想定よりも強まったことで、太陽光発電による150万キロワット程度の供給の見通しがついた」と解説しています。

事態が想定外に好転したことで、結果的に注意報は解除されましたが、一方で東電は「150万キロワット程度の場合、上振れする可能性も下振れする可能性も十分にある」と述べています。
つまり、天候によって太陽光発電の出力が弱まっていた場合、需給状況はかなり悪化していた可能性があるのです。

このように、太陽光発電をはじめとした再エネは、天候の影響を非常に受けやすいのが弱点です。
そのため、たとえ再エネが活用できない場合であっても安定的な需給状況を保てるよう、他の発電方法も確保しておかなければならないのが現状です。

原発の再稼働に伴うリスク

「核のゴミ」が無害化するまでに10万年かかる

原発を動かすと必ず出てくるのが、さまざまな放射性廃棄物です。
例えば、作業員が装着する手袋や防護服なども、それに含まれます。

この放射性廃棄物の中で、最も放射能レベルが高いのが使用済み核燃料です。
この使用済み燃料から、再利用できるウランやプルトニウムなどを除去し、残った廃液をステンレス製容器に流し込んで加工したものを、日本では「核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)」と呼びます。

核のゴミの放射能レベルは非常に高く、人が近づくと30秒足らずで死に至るほど危険な存在ですが、およそ1000年経てば核のゴミに含まれた放射能の99%程度は無くなると考えられています。
しかし、それでもまだ完全に安全とは言い切れないため、最低でも10万年は隔離しなければならないと定められています。

今から10万年前というと、現在の人類であるホモ・サピエンスがアフリカ大陸で誕生し、世界中に広がっていった時期です。
それだけの歳月をかけて隔離させておかなければならないモノだと考えると、核のゴミがどれだけ厄介な存在かが分かります。

さらに問題なのは、核のゴミの最終的な処分方法について、まだ正式に決まっていないということです。
日本では、経済が成長し始めた1960年代から原発が建てられるようになりましたが、当時はエネルギー需要に対応するように原発を増やし続けることで精一杯で、核のゴミの処分方法については議論が進められないまま、後回しにされ続けていました。
そして、ようやく議論が進み始めたのは、2011年3月11日に福島第一原発事故が発生した後でした。

現在、国内には約1万9000トンの核のゴミが保管されており、さらにイギリスとフランスに再処理を委託した約7000トンを合わせると、全部で約2万6000トン相当になります。
これだけの核のゴミを抱えていながら原発を再稼働するというのは、かなりハイリスクだと言えるでしょう。

再び大地震が発生し、原発事故が発生する可能性がある

2011年に発生した福島第一原発事故では、大量の放射性物質が周辺に漏出し、2022年になった今なお汚染水問題などを抱えています。
このことから分かるように、一度原発事故が発生すると、復興までには長い時間がかかってしまうのです。
地震大国である日本で、東日本大震災と同等かそれ以上の規模の地震が再び発生する可能性は決してゼロではなく、そうなると再び原発事故が起こることもあり得ます。

しかし現在、日本は2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、達成に向けて石炭火力発電の段階的な抑制や、再エネ割合の増加に取り組んでいます。
環境や経済に配慮しつつ、この目標を達成することを考えると、原発の稼働率を完全なるゼロにすることは難しいのが現状です。

そのため、日本では福島第一原発事故以降、世界最高基準の新規制を設け、この基準をクリアした原発のみを稼働することとしています。
それでも、「予測不可能な地震に対して果たして完全に安全な基準があるのだろうか」と、原発稼働への不安を抱く人が多いのも事実です。

まとめ

原発の稼働に伴うさまざまなリスクを踏まえつつも、現在の日本において全ての原発を廃炉するのは、現実問題として難しいことが分かりました。

環境、経済、そして人々の暮らしにとって最善の方法が何なのか、人によって考え方は異なるかもしれません。
それでも大切なのは、一人一人がエネルギー問題について理解を深め、「自分にできることは何か」について考えることだと言えるでしょう。

参考:資源エネルギー庁がお答えします!~原発についてよくある3つの質問
参考:核のごみ、安全になるまで10万年 処分場の選定調査に応募する利点とは?‐東京新聞
参考:1からわかる!核のゴミ(1)そもそもどんなものなの?-NHK

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