もし「地球に暮らす私たちにとって最も身近な天体は何?」と訊かれたら、「太陽」の次に「月」と答える方が大多数ではないでしょうか。
また、快晴時であれは真昼に月が見えることもありますが、基本的に太陽は「昼の顔」、月は「夜の顔」というイメージが強いですよね。
今回は、意外と知らない月に関する情報や「月に秘められた様々な可能性」などについて、確かな実験データや未来への展望を交えた上で皆さんにシェアしていきたいと思います。
知っているようで知らないかも!月に関する基礎知識
月と地球は兄弟?
地球と合わせて「兄弟星」と呼ばれることもある月は、地球にとって唯一の衛星です。
太陽系衛星の中では5番目に大きく、地球から見ると太陽の次に明るく輝く星となっています。
しかし太陽と月が決定的に異なっているのは、前者が自らのエネルギーで光を放っているのに対し、 後者は太陽の光を反射して光っているだけという点です。
地球の周りを公転することで太陽光の反射する面が少しずつ移ろっていき、それが月の満ち欠けに反映されています。
つまり、「太陽光と月光は実質同じ光」ということですね。
潮の満ち引きの発生源は月にあり!
地球は月に最も近い天体であるだけに、月から発せられる引力の影響も大きく受けています。
その1つが「潮の満ち引き」です。
月に面した側の海では、月の引力で海面が持ち上げられ満潮になります。
一方で反対側では月の引力が微弱なため海水は取り残されるのですが、地球の自転の遠心力の影響を受けることで同様に満潮になります。
また、月と直角の方向では月に海水が引き寄せられることで、海面が下がり干潮が発生します。
これらの現象を引き起こす月の力のことを、「潮汐力(ちょうせきりょく)」と言います。
ちなみに太陽が発する引力も地球へ影響を与えますが、月と地球との距離が384,400kmであるのに対し太陽と地球との距離は1億4960万kmもあるため、太陽の引力による影響は月の引力による影響の約半分ほどだと言われています。
長い歴史を持つ月と人類の関係
月に関する科学的な基礎知識の次は、文化的な側面から月という存在について見てみましょう。
日本最古の物語と言われている「竹取物語」が月を題材にした物語であることから分かる通り、遥か昔から月は人類にとって身近でありながらも神秘的な存在でした。
そのため竹取物語に限らず、月をテーマとした芸術作品や詩などは今日に至るまで数多く残されています。
平安時代、藤原道長が自らの栄光を満月に例えた句を詠んだという逸話も有名ですよね。
またジャズのスタンダードナンバーに「Moon river」や「Fly me to the moon」といった
曲があるように、音楽作品におけるインスピレーションの源となることも多くあるようです。
そして月と人類の関係を語る上で外すことができないのは、何と言っても1969年に成し遂げられたアポロ11号の月面着陸でしょう。
当時のNASA、そして船長のニール・アームストロング氏と月着陸船操縦士のバズ・オルドリン氏によって成し遂げられた人類史上初となるこの偉業は、後の宇宙開発の躍進に大きく貢献することになりました。
その後もJAXAが2007年に月周回衛星「かぐや」を打ち上げたり、NASAでは有人月面基地建設の構想が練られるなど、人類による月への挑戦は続いています。
さて、月に関する基本情報や月と人類との歩みについて理解できたところで、
いよいよ次の章からは気になる「月光発電システム実現の可能性」について考えていきたいと思います。
月光発電システムが実現できる可能性
実はとあるテレビ番組が検証していた!
実は、過去に「月の光で発電は可能なのか」という疑問を解明すべく実験を行ったテレビ番組があります。
それは、なんと日本の『所さんの目がテン!(日本テレビ)』という番組です。
この番組は「身近な疑問を科学的に解明する」というテーマのもと、1989年から2020年現在に渡って約30年間放映されている長寿番組です。
そして肝心の月光発電実験は、今から10年以上前の2009年9月の放送にて行われました。
専門家たちによる試行錯誤の末に採用された実験方法は、次のようになります。
➀ソーラーパネルを準備する
②単三乾電池1本でも作動する電子オルゴールとソーラーパネルを繋ぐ
③ソーラーパネルに満月の光を当てて電圧と電流を測定する
上記の装置を用意し実験を開始したところ、微かではありますが電子オルゴールから「ジジジ…」と音が鳴り、実験自体は一先ず成功となりました。
しかし発生した電圧と電流を測定したところ、電圧は0.8V前後、電流は1μA(マイクロアンペア)とどちらも非常に少なく、その数字は単三電池1本分にも満たなかったそうです。
たとえ光の波長や質が同じだったとしても、太陽からダイレクトに届く光と月の反射光とではやはり効率に大きな差が生じてしまうようですね。
それでも「僅かではあるものの、月の光でも発電はできる」という結果が出たこと自体、非常に画期的で意義のあることだったのではないでしょうか。
番組で実験が行われてから長い年月が経とうとしていますが、ふとした場面で月光発電が活かされる可能性は今後もゼロではないと言えるでしょう。
「月光発電」とは違う?月面を利用した発電システム
月光発電システムが実用化されるのはまだまだ先になりそうですが、それとは別に近年では月面上にソーラーパネルを設置する『月太陽発電 –LUNA RING-』という計画が、
日本の清水建設株式会社によって進められています。
「発電設備に使う原料は月から調達する」「24時間発電し続けられるようにソーラーパネルは月の赤道上に設置する」など、数々の驚くべき構想が練られているこのプロジェクトが実現された暁には、なんと最大8.8TW(テラワット)もの電力を生み出せるのではないかと想定されているそうです。
それだけの量を発電できれば、世界中の電力を賄ってもなお余らせることができそうですよね。
そしてこの構想を知ると、「もしかしたら月光発電ではなく月太陽発電こそが、月のポテンシャルを最大限活かせる発電システムなのかもしれない」と思えてくるような気もします。
世界中が注目しているこのプロジェクトからは、今後も目が離せませんね。
<おまけ>発電だけじゃない!月が秘めた様々な可能性(資源)
前章にて「発電設備に使う原料は月から調達する」と述べましたが、実際月には多種多様な資源が豊富にあります。
現時点で月に存在していることが分かっている主な資源は、以下になります。
➀酸素
ロケットなどの燃料になるのはもちろん、将来的に有人月面探査基地を実現させるためには欠かせない存在です。
月には地球のように大気が存在しないため、酸素は岩石や水の中に含まれる形で存在していますが、
近年ではその酸素を取り出すための技術も生まれています。
②水素
酸素と同様にロケット燃料として使うことができ、酸素と合わせれば水を生み出すことのできる資源です。
後述するレゴリスの中に含まれています。
③鉄
言わずもがな、鉄は探査基地のような建造物を頑丈に作るにはうってつけの資源です。
月面の岩石、あるいは鉱物の中に粒として含まれています。
④レゴリス
レゴリスとは、月の表面にある砂のことを指します。
それ自体から金属や水素を抽出することができる他に、焼き固めて太陽熱の蓄積材料や宇宙探査設備の資材として用いることも可能です。
上記に挙げた以外にも、月にはまだまだ多くの資源が眠っています。
これらを全て有効活用することができれば、宇宙開発にとって大きな一歩となるだけでなく、地球上をよりクリーンな資源やエネルギーで満たすことも実現できるのではないかと言われています。
まとめ
たとえ月光発電が今後しばらく実現されなかったとしても、未知なるエネルギーや宇宙開発への手掛かりなど、月にはまだまだ多くの可能性が秘められていることが分かりましたね。
今夜は月を見上げながら、未来の月や太陽、そして地球の在り方などについて思いを馳せてみてはいかがでしょうか?