皆さんは、腕時計をつけることはありますか?
もしかすると、「以前はつけていたけれど、時計代わりになる携帯電話が普及してからは日常的につけることが減った」という方もいるかもしれません。
それでも、ファッションアイテムやガジェットとして腕時計が好きだったり、「そもそも腕時計集めが趣味」という方は、まだまだ多くいらっしゃいます。
そんな腕時計ですが、多くの場合素材にプラスチックや貴金属などが使われており、これらの素材は「電子ゴミ」として問題となっています。
電子ゴミの量は年々増え続けており、2030 年には 約7400 万トン、2050 年には約 1 億 1000 万トンまで増加すると予想されています。
電子ゴミの中にはスマホやPCなどの素材も含まれているため、そのすべてが腕時計の素材というわけではありません。
しかしながら、腕時計の素材が環境を脅かす一因となっていることもまた事実です。
この問題を解決すべく、近年ではさまざまな腕時計メーカーが「サステナブルな腕時計づくり」に乗り出しています。
今回はその具体的な取り組みについて、メーカーごとに紹介していきたいと思います。
国内メーカーの取り組み
シチズン
シチズンは1976年、太陽光や室内のわずかな光で腕時計を駆動させる『エコ・ドライブ」を世界で初めて開発したことで知られています。
そんなシチズンでは、2012年よりサステナブルなウォッチブランド『CITIZEN L(シチズン エル)』がスタートしています。
2022年3月には『シチズン エル』のシグネチャーライン『アンビリュナ』から、エコ・ドライブに加えてサステナブルな素材も使用した新たな4つのモデルが発売されました。
これらのモデルには、この世界を構成すると言われている四元素の「火・水・風・地」をテーマに、地球の美しさをイメージしたデザインが取り入れられています。
『呼び覚ます陽』、『巡りゆく水』、『軽やかに運ぶ風』、『恵みあふれる大地』をそれぞれ表現した文字盤には、環境、安全、労働基準に最大限配慮して100%ラボ(研究所)で生み出されたエシカルなダイヤモンド『ラボグロウ・ダイヤモンド』があしらわれています。
またベルト部分には、回収されたペットボトルや衣類から生まれたリサイクル繊維「エコペット」を一部使用したニットバンドが採用されています。
スポンジのように無数の小さな孔が開いているニットバンドは、伸縮性や耐久性に優れており、手洗いも可能となっています。
ちなみに4つのモデル全てに、簡単に付け替えができるステンレスメッシュの替えバンドも付属しています。
CITIZEN L(シチズン エル)|CITIZEN
カシオ
1980年代や1990年代に一世を風靡した『G-SHOCK』や『チープカシオ』でお馴染みのカシオは、2021年より梱包形態を大きく見直し、主原料にリサイクルペーパーを使用することで、プラスチックの使用量を従来の82%削減しています。
これにより、製品の保護や効率的な運送などの機能と、プラスチックごみ削減の両方を実現しています。
また2022年3月からは、アウトドアライン『PRO TREK(プロトレック)』の新モデルとして、カシオ製品では初めてバイオプラスチックを採用した『PRW-6611』と『PRW-6621』を発売しています。
再生可能な有機資源由来の原料から生み出された素材であるバイオプラスチックは、その環境負荷の低さから循環型社会の実現に不可欠な存在だと言われています。
なおプロトレックには、トウモロコシまたはトウモロコシの種を原料に含んだバイオプラスチックが採用されています。
もちろん環境に優しいだけでなく、高度・気圧、方角、温度を計測できる『トリプルセンサー』や、腕を傾けるだけで明暗を感知してライトが点灯する『オートライト機能』など、アウトドアシーンで頼りになる高い機能性も備えています。
持続可能な社会へ。 カシオのサステナブル・プロダクト|CASIO
ウープウッド
2012年に設立した『WoopWood(ウープウッド)』は、主に木製腕時計を展開するグリーンブランドです。
ウープウッドの木製腕時計の特徴は、素材にリサイクルウッドが採用されていることです。
リサイクルウッドとは、家具や建材を作る際に出てしまう端材や、不用品として廃棄されてしまった木材のことです。
ウープウッドはこれらの素材を活かし、腕時計として再利用することで、「環境に配慮しながら自然への理解を深める」ことを提案しています。
現在ウープウッドでは、洗練されたデザインと高い機能性を備えた『MokunoGraph(モクノグラフ)』、バタフライバックルを採用した『Uka(ウカ)』、シンプルな美しさが魅力の『Musuhi(ムスヒ)』の3つのシリーズを展開しています。
リサイクルウッドが100%使用されたこれらの腕時計は、優しい付け心地と自然素材ならではの質感や色合いが特徴です。
また、使い込むほどに艶や傷が出てくるため、「世界に一つだけのオリジナル腕時計」を持ちたい方にはピッタリの製品です。
WoopWood
海外メーカーの取り組み
スウォッチ
スイス発の腕時計メーカー『swatch(スウォッチ)』は、2020年よりバイオ素材を製品に取り入れています。
2020年9月にはバイオプラスチックを採用した『BIORELOADED(バイオリローデッド)』シリーズを、2021年4月からはバイオプラスチックとセラミックの混合素材を採用した『BIG BOLD BIOCERAMIC(ビッグボールド バイオセラミック)』シリーズを発売しています。
スウォッチが独自に開発した新素材であるバイオセラミックは、トウゴマの種から抽出した自然素材で作られたプラスチックとセラミックを掛け合わせたものです。
このバイオセラミックをケースに採用することで、高い耐久性と弾力性、そしてシルクのような心地良い肌触りを実現しています。
なお、2022年2月に発売開始したバイオセラミックシリーズの新作コレクション『COLORS OF NATURE』では、バイオセラミックというサステナブルな素材と呼応するように、森林、氷河、砂漠などの雄大な自然をモチーフにした全5色のアースカラーモデルが展開されています。
BIOCERAMIC – スウォッチだけのオリジナル – Swatch
ノードグリーン
デンマークで2017年に誕生した『Nordgreen(ノードグリーン)』は、「時計で未来を変える」をモットーに掲げる、新進気鋭の腕時計メーカーです。
シンプルでジェンダーレスなデザインがSNS世代を中心に人気を集め、営業開始からわずか2年で約17億円の売り上げを達成しています。
そんなノードグリーンが2022年4月、同社初となるサステナブルウォッチとして発売した『Guardian(ガーディアン)』は、「100年使える腕時計」をコンセプトに、製造、輸送、リサイクルなどのすべての過程において、環境負荷を抑えるための見直しがされています。
たとえば、腕時計の素材にはリサイクルステンレスを、梱包材にはリサイクル樹脂で作られた3Dパッケージを採用しています。
また、配送の際は1度に多くの製品を輸送することで、回数を最小限に抑えています。
このような取り組みによって誕生した「100年使える腕時計」は、保証期間も勿論「100年」となっています。
さらに、ノードグリーンはサステナブルウォッチの開発だけでなく、持続可能な社会を実現するための社会貢献プログラムも実施しています。
そのプログラムとは、ノードグリーンの腕時計を購入すると、「教育・健康・環境」に特化した3つの慈善団体から一つを選び、購入金の一部を寄付することができるというものです。
この取り組みによって、ノードグリーンは2018年から2021年までに、以下のような支援を実現しています。
・教育支援団体に約46,000ヵ月分の教育費を寄付
・飲料水支援団体に約140,000ヵ月分の支援費用を寄付
・熱帯雨林保護団体に約2,800,000㎡分の保護支援費を寄付 など
(参考:CSR活動報告 – ノードグリーン)
また、日本の購入者を対象に実施された「日本特別社会貢献プログラム」では、新型コロナウイルスの影響でマスク不足に陥っていた医療・福祉施設に対し、約3,664枚分のマスク支援につながる寄付などが実現しています。
この他にも、ノードグリーンは幅広い分野で社会貢献活動を行いながら、持続可能な社会の実現を目指しています。
Nordgreen – 日本公式サイト – 北欧デザイン時計ノードグリーン
まとめ
今回は、腕時計業界におけるサステナブルな取り組みについて紹介しました。
老舗から比較的新しい腕時計ブランドに至るまで、業界全体で高い意識を持ってサステナブルな腕時計づくりに取り組んでいることが分かりましたね。
もし腕時計を購入する機会がありましたら、デザインや機能性の他に、「サステナブルであること」も購入基準の一つに加えてみてはいかがでしょうか?
アイキャッチ画像:Karolina GrabowskaによるPixabayからの画像