太陽光パネルを設置する建物は2012年以降、着実に増えています。
その中には一般住宅も含まれており、今や広く普及した太陽光発電ですが、「パネルが壊れたので買い替えた」「もう寿命がきた」などの話を聞いたことは、意外にも少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、パネルの種類ごとの特徴や寿命、主な劣化原因について解説します。
太陽光パネルの種類と特徴
太陽光パネルの種類は、主に太陽光パネルを作る材料により分けられます。
国内で一般的に流通するものは、大きく分けると「シリコン系」と「化合物系」に分けられます。
ここではどのような種類分けがされるのか、また、それぞれどのような特徴を持つのかについて紹介します。
なお、国内で使われていないものは省略しています。
結晶シリコン系
結晶シリコン系は、主に以下の2つに分けられます。
①単結晶シリコン
シリコン結晶が規則正しく並んでいます。発電効率が高く、一般住宅の屋根に多く使われます。
各メーカーが主力製品として取り扱うため、形状のラインナップが豊富で、品質の強みはさまざまなものがあります。
材料の生産に手間がかかるので価格は高めです。
②多結晶シリコン
シリコン結晶が不規則に並んでいることが特徴です。
発電効率は単結晶シリコンに比べ多少低くなりますが、価格が抑えられるので、この種類は広面積に設置する産業用に多く使われます。
非結晶シリコン系
「アモルファスシリコン」という原料を用いた非結晶系は、さまざまな形に加工できる点が特徴です。
温度変化に強く、夏の高温時や日照の少ない冬場でも安定した発電を期待でき、低コストで導入できます。
しかし、結晶シリコンに比べると変換効率は3~7%ほど低く、直射日光などの強い光で内部の水素結合が切れる初期劣化を起こす場合があります。
なお初期劣化は、初期の頃から大体10%程度出力が下がったところで安定することがほとんどです。
ヘテロ接合型
結晶シリコン系と非結晶系を組み合わせたものが、ヘテロ接合太陽電池です。
単結晶シリコンの「発電効率の高さ」、非結晶系の「高温時も発電量が下がりにくい」という性質を両方持ち合わせている点が特徴で、面積の小さな場所でも発電量を挙げることができます。
その反面、製造が複雑で高価な点がデメリットです。
化合物系
化合物系は別名「CIS」とも呼ばれており、 銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)の3つが主原料であることからその名が付いています。
この種類は光吸収係数がシリコン系の約100倍あり、薄膜化が可能で省資源、低価格で製造できる点が特徴です。
半面、シリコン系と比較して変換効率が低い点がデメリットです。
寿命について
太陽光パネルは経年劣化によって発電量が下がりますが、その後も機能し続けることが多く、明確な定義はありません。
とはいえ事業の場合、収益を考えると発電量低下率は問題です。
そこで、ここでは法定耐用年数やメーカー算出寿命、周辺機器も説明します。
太陽光パネルの法定耐用年数
太陽光パネルの法定耐用年数は、国によって「17年」と定められています。
ただし、これは「購入費用を17年で減価償却する」という、あくまで法人や個人事業主が資産計上をする際の数値であり、実際の耐用年数とは異なります。
メーカー算出寿命
メーカー算出寿命は、基本的に20~30年とされています。
後に紹介するパワーコンディショナーよりも長寿命なのは、可動部分が少ないためです。
保証は主に「出力保証」「システム保証」があります。
一例として、出力保証は「20年以内に出力が81%未満に低下」、システム保証は「10年以内にパワーコンディショナーなどの周辺機器が故障」の場合に保証が受けられます。
パワーコンディショナーの寿命
パワーコンディショナーは、作り出した電気を「直流」から一般的に使用できる「交流」に変換する機器です。
パワーコンディショナーの寿命は10~15年で、多くのメーカーのシステム保証がおおよそ15年となっており、期間内は無料で部品交換や取替えができます。
有償交換の費用は20万円が目安となります。
太陽光パネルの劣化原因
太陽光パネルは屋外にあることで、直射日光、雨風、自然災害、動植物など外部から多くのダメージを受けます。
さらに、PID劣化現象といわれる特有の発熱現象があり注意が必要です。
また、経年により発電効率が下がる特性があり、種類によって違います。
ここでは、太陽光パネルが劣化する主な原因について見ていきましょう。
パネル表面の汚れ
太陽光パネルは屋外で野ざらしのため、鳥のふん、落ち葉、黄砂、大気中の粉塵の影響を直接受けます。
鳥のふんや落ち葉はホットスポットという異常発熱を起こし内部の破損や、火災の原因になり危険です。
また、洗浄する際に使う水道水のカルキの残りも注意が必要です。
パネルの破損
パネル部分は強化ガラスでできており、自動車のフロントガラスと同じで高強度です。
ところが、カラスによる投石や、製造過程でついたごく小さな傷が寒暖の繰り返しなどでひび割れることがあり、ひび割れから雨水などが侵入し、寿命を短くする原因となることもあります。
配線トラブル
太陽光パネルと同様に、配線類も太陽光や雨風にさらされており、皮膜が傷つき中の銅線がさびるケースが起こりやすく、銅線がさびると電気が通らなくなります。
これによって発電量が下がり、断線の恐れがあります。
断線部分から劣化が進むこともあるので要注意です。
PID劣化現象
多くは産業用の大規模太陽光パネルで発電量が大幅に下がる現象です。
パネル表面のカバーガラスとセル(太陽電池を構成する最も小さい部分)の間が高電圧になり、カバーガラスに含まれるナトリウムがセル内部に移動し起こります。
高温多湿で起こりやすく日本でも発生例が確認されており、各メーカーで高温多湿で高電圧をかけたテストをして耐性証明としています。
経年劣化による発電率の低下は?
下記の表は太陽光パネルの発電効率が出荷時から5年後に、どの程度下がったのかをまとめたものです。
CIS>ヘテロ結合(HIT)>多結晶シリコン>単結晶シリコン>アモルファスシリコンの順で下がりにくいことがわかります。
CISは発電効率が良いですが、新しい技術のため10年、20年後のデータがなく、あくまで現段階のデータとなります。
太陽光パネルの種類 | 5年後の発電効率(%) | 発電低下率(%) |
単結晶シリコン | 96.8~96.1 | 3.2~3.9 |
多結晶シリコン | 97.7~97.2 | 2.3~2.8 |
アモルファスシリコン | 94.3 | 5.7 |
ヘテロ結合(HIT) | 93 | 2.0 |
CIS | 98.5 | 1.5 |
太陽光パネルの寿命を延ばすために必要なこと
太陽光パネルは発電率の経年変化や外部環境により劣化しますが、特に外部環境による劣化は定期的なメンテナンスで未然に抑え、寿命を延ばせます。
何もせずに放っておくと、それだけで本来の寿命を縮めることとなるので必ず対策をとりましょう。
太陽光パネルの定期メンテナンス
住宅用の太陽光パネルには定期メンテナンスの法的な義務はありませんが、雨風によって機器に不具合が生じることがあります。
資源エネルギー庁の資料では、4年に1回以上のメンテナンスを推奨されており、費用は1回あたり2万円程度とされています。
実際には、無料で請け負う販売店もあるようですが、相場は1回1万円程度です。
太陽光パネルの清掃
太陽光パネルの表面には多くの汚れが付着します。雨により表面の汚れは流れ落ちますが、鳥の糞などのこびりつき汚れはなかなか取れません。
さらに、汚れた部分が発熱するホットスポット現象でパネルの一部が故障、最悪の場合は火災の原因となります。
個人で清掃もできますが、高所作業となるので転落の危険があるほか、パネルに傷をつけてしまうこともあります。
これらを踏まえると、やはりメンテナンス業者に依頼するのが一番安全安心だと言えるでしょう。
まとめ
太陽光パネルは、種類によって発電低下率およびそれに伴う寿命が若干異なることが分かりました。
ただし、これは導入価格にも注目する必要があります。
例えばアモルファスシリコンの発電低下率は大きいですが、低価格で導入することができます。
それに対し、CISの発電低下率は低いものの、導入の際のコストは高くなります。
また、メンテナンスも重要です。
自己流で誤ったメンテナンスをすると、発電効率が下がり、故障の原因につながることもあります。
専門業者に依頼し、発電効率をできるだけ下げずに長く使うことで、効果的な発電ができるでしょう。
実例として、元三洋電機社長の桑野幸徳氏宅に設置された太陽光パネルとパワーコンディショナーは、設置から25年以上が経った現在でも故障なく稼働しています。
みなさまが太陽光パネルを選択する際に、寿命について考えていただければと思います。