太陽光発電といえば、一般的に「エコで省エネ」という印象が強いですが、一方で発電設備の設置規則やパネルの処理問題などがニュースで取り上げられると共に、「本当に地球に優しいの?」「むしろ環境に悪いのでは?」という疑念の声を耳にすることもあります。そこで今回は、太陽光発電に抱きがちな疑問に一つずつ答えながら、「太陽光発電は本当にエコなのか」を解明していきます。
設置や発電に関するギモン
太陽光発電には大規模な設備が必要なので、そもそも太陽光発電システムを設置すること自体が環境破壊に繋がるのではないかと考える人もいるようです。
太陽光発電システム設置のために森林伐採するって本当?
太陽光発電システムによる環境破壊で、最も問題視されるのが、産業用メガソーラーを建設するための森林伐採です。メガソーラーを建設するためには、広く日当たりの良い土地が必要です。売電制度がスタートした頃、売電収入に目がくらんだ事業者が建設のために所かまわず木々や植物を伐採する事例が多発しました。このように美しい自然が破壊された結果、地域住民たちの怒りに触れて大規模な反対運動に発展するケースもありました。環境保護のために生み出された太陽光発電が、自然環境を破壊してしまっては元も子もありません。
このような事例は近年では減少したものの、一度伐採された森林が元に戻ることは簡単ではありません。また、いつか戻るとしてもそれまでには非常に長い年月がかかります。メガソーラーを建設する合は、環境への負荷を考慮して土地を選ぶことが大切です。
発電時に電磁波が出て危険だと聞いたけど…
エコかどうかという観点からは外れますが、太陽光発電は発電する際に電磁波が出るため危険だと考える人もいます。たしかにソーラーパネルやパワコンからは、稼働時に微量の電磁波が発生します。しかしスマートフォンやパソコンなど私たちの周りには他にも数多くの電気機器が常に存在しており、そのほとんどが微量の電磁波を発生させているもののそれが原因で体調を悪くするというケースはほとんどないはずです。
つまり、太陽光発電システムから電磁波が出ているからといって気にする必要はありません。電磁波については詳しく書いた記事もあるので、そちらも併せてチェックしてください。
ソーラーパネルに関するギモン
ここからは、ソーラーパネルに関する疑問にお答えします。
ソーラーパネルの生産に使うエネルギーは無駄じゃないの?
「太陽光発電はシステムを製造する際には大量のエネルギーを使うため本当にエコなの?」と思う人もいると思います。この疑問を解決するための目安となるのが「エネルギー・ペイバック・タイム(通称EPT)」です。
EPTとは「エネルギー回収期間」を意味しており、太陽光や風力などの再生可能エネルギー(以下再エネ)を用いた発電システムが、生産時に消費したエネルギーを自らの発電によって回収するまでの期間を指します。この期間が短ければ短いほど環境への負荷は少ないと考えられるため、EPTは再エネシステムの運用において重要な指標の一つと言えます。
太陽光発電システムのEPTは、設置から1~5年以内だと言われています。システム自体の寿命は約30~40年なので、太陽光発電はかなり早期でエネルギー回収が実現できると言えるでしょう。つまりソーラーパネルの生産時に使ったエネルギーが無駄になる可能性は極めて低いのです。
生産時にCO2を排出するのでは?
CO2の排出量に関しても、前述したEPTと同様に「CO2ペイバックタイム(通称CO2PT)」という指標が存在します。
CO2PTは、再エネシステム運用開始後のCO2削減効果によってシステムの生産時に発生するCO2を取り戻す期間を表します。
産業技術総合研究所のデータによると、ソーラーパネルの種類によって若干の差はあるものの、太陽光発電システムの場合は基本的に1~3年以内には生産時に発生したCO2を回収できることがわかっています。さらに生産技術が進歩するにつれ、CO2を含む温室効果ガスの排出量は年々減少しています。生産における技術革新の余地はまだまだあるとされているので、今後のさらなる温室効果ガス削減に期待したいところです。
システム生産時にCO2は排出するものの、これらの指標を考慮すれば太陽光発電は間違いなく「エコ」と言えるはずです。
ソーラーパネルは廃棄方法が確立されていない?
ソーラーパネルには、鉛やカドミウムといった有害物質が多く含まれています。このような製品は有害物質に適した処理を行う必要があり、ソーラーパネルは「最終処分場」という決められた場所に廃棄しなければなりません。しかしこの最終処分場は早ければ2040年にひっ迫すると言われており、大量廃棄に対する懸念がささや囁かれていました。
しかし太陽光発電では、使用済み設備のリサイクルを推進する動きが年々活発になっています。東日本大震災で原発の廃棄方法が確立されていなかったことが問題視されたこともあり、現在は環境省によって有害物質の廃棄についてのガイドラインが作成されています。環境省が作成したリサイクルに関するガイドラインによると、「ソーラーパネルに使用されている金属やガラス、シリコンなどの物質は再資源化し、それ以外の有害物質のみを適正処分することが望ましい」とされています。ガイドライン通りに再資源化できる物質を選別した場合、一枚のソーラーパネルのうちなんと約95%の部分がリサイクル可能とも言われています(パネルの種類によって若干の差はあり)。
また近年では使用済みパネルを点検し、中古品として販売する「リユース」に取り組む企業も増えています。ソーラーパネルを再利用する動きはまだまだ普及しきっていませんが、今後20年の間にこれらの動きが浸透してくれることを願うばかりです。
地球環境を守っていくために…
売ここまで「太陽光発電は本当にエコなのか?」という観点から、太陽光発電に関するさまざまな疑問に答えてきました。そして総合的に見て、太陽光発電システムはやはり「エコ」な存在だということがわかって頂けたと思います。しかし「環境負荷の軽減」を目的に発展した太陽光発電システムにおいても、そのシステムが正しく運用されなければ環境を壊す原因になる可能性があります。つまり、太陽光発電システムをエコにするのもしないのも、それを扱う私たち「人」の手にかかっているのです。
急速な経済成長を遂げるなかで、私たちは常に自然の恩恵を受けているということを忘れてはいけません。その自然を守り、人と自然が共存できる世界を作ることは私たちの責務と言えるでしょう。既に太陽光発電システムを導入している方もまだ検討中の方も、日ごろからこのような意識を大切にしたいですね。