稼働していない発電所は認定取り下げ?新たに改正された「設備認定失効制度」とは

太陽光発電

昨年資源エネルギー庁は、2022年4月1日より「設備認定失効制度」を施行することを発表しました。
そして先日、再び資源エネルギー庁より「設備認定失効制度についての情報を更新した」との発表がありました。
「設備認定失効制度」とは、FIT法による価格認定を受けているにもかかわらず、長期間運転を開始していない、もしくは着工すらしていない未稼働案件の認定を取り下げる制度のことです。

この制度の背景には、再エネの固定買取価格が年々下がっていることから「下がる前の価格で仮押さえしておこう」と稼働予定のない発電所を申請する事業者の存在があります。
このような事業者たちによって設備認定を受けた未稼働案件が残ったままだと、電気系統やコストなど、さまざまな部分に問題点が生じてしまいます。
それを回避すべく、これまでも何度か設備認定失効に関する法改正は行われてきましたが、2022年からはより強固な制度が課されることになったのです。

今回は、未稼働案件が各方面に及ぼす影響や、今回更新された設備認定失効制度の概要について解説していきます。

未稼働案件における問題点

国民負担の増大

固定買取価格は「再生可能エネルギー促進賦課金(再エネ賦課金)」として私たち国民が負担しており、その額は既に年間2.4兆円に達しています。
それに加えて現在未稼働となっている案件が後々稼働した場合、国民負担はさらに増大し、事業者だけが過剰な利益を得ることになると考えられています。

コストダウンの停滞

なるべく高い固定買取価格のうちに設備認定を受けたい事業者は、未稼働高額案件の発掘・開発を優先します。
この現状は、再エネのコストダウンを阻む要因の一つとなっています。

新規案件の開発が停滞

送配電網の容量は限られており、たとえ未稼働でもその発電所分の系統は確保されているため、未稼働案件が残ったままだと新規事業者の参入が難しくなってしまいます。

未稼働案件に対するこれまでの対応

2016年措置

2016年、再エネ未稼働案件全般を整備するための「計画認定制度」が導入されます。
この制度は、「原則2017年3月末までに接続契約が締結できていない案件は設備認定を失効する」というものです。
これにより2016年8月以降に接続契約を締結した案件には、「認定から3年以内に運転開始しなければ認定失効」という制度が課され、期限超過分は調達期間(20年間)が短縮されることになりました。

2018年措置

2018年には、太陽光発電所のみを対象とした新たな措置が取られました。
その内容は、2012~2016年の案件のうち一定期限までに運転開始準備を進めなかった場合、運転準備段階に至った時点の適正な価格に固定買取価格を変更するというものです。
この措置に合わせて、運転開始期限の設定されていない案件にも運転開始期限が設定されました。

今回新たに設定された認定失効条件

運転開始期限が2022年4月1日以降の案件

この場合、系統連系工事着工申込書を提出していなければ、運転開始期限から1年後に認定を失効します。
なお、申込みを行った案件には、運転開始期限に猶予期間として運転開始期間(太陽光発電の場合は3年)を加え、運転開始に至らなければ失効となります。

2022年4月1日以前に運転開始期限を迎える案件

この場合、2023年3月31日までに系統連系工事着工申込書が受領されなければ、その時点で失効となります。
また、2023年3月31日までに申込書が受領された場合でも、2025年3月31日までに稼働が実施されなければ失効となります。

『未稼働太陽光措置』の対象案件

未稼働太陽光措置の対象案件とは、2012~16年度に認定をうけ、かつ2016年7月31日までに接続契約を締結した案件のことです。
この対象となる案件の場合、未稼働措置用の着工申込書を提出しているかいないかで措置が変わります。

着工申込書を提出済かつ2022年4月1日以前に運転開始期限を迎える場合、2025年3月31日までに運転開始に至らなければ失効となります。
着工申込書が未提出の場合、2023年3月31日までに申込書が受領されなければ失効となります。
もし2023年3月31日までに受領された場合、受領日から1年後が運転開始期限となり、そこに3年加えた日までに運転開始に至らなければ失効となります。

制度更新の目的

今回、設備認定失効制度が更新された主な目的は、以下の2点です。

・適用される固定買取価格の適時性の確保
・送配電網の容量を活用し、適切な新陳代謝が促される仕組みづくり

この目的を達成するためには、長期間未稼働状態が続いている案件について、「確実な事業実施が期待される案件」と「そうでない案件」を明確に分けることが重要だとされています。
そのため稼働実施が期待できるかどうかについては、一定の期限までに事業実施に向けた一定の進捗があったかどうかで判断されます。
また、今回の制度は運転開始に至っていないすべての認定案件が対象となります。

事業の進捗を確認するタイミング

稼働に向けた事業の進捗は、主に以下のタイミングで確認されます。

➀系統連系⼯事の着⼯申し込み
発電所事業者が設備設置エリアの送配電事業者に対して⼯事の申し込みを⾏い、送配電事業者は⼯事費負担⾦(接続契約締結時に請求)を受領し、系統連系⼯事を開始するタイミング。

②環境影響評価における準備書への勧告
環境影響評価法に基づいて事業者が⾃ら実施した調査・予測・評価などを記した準備書を、主務⼤⾂である経済産業⼤⾂に提出。
その後、経済産業⼤⾂からの勧告等をもって環境影響評価の最終段階である評価書を作成し、確定後事業の実施に着⼿するタイミング。

③⼯事計画届出提出
電気事業法の規定に基づき経済産業省に対して届出を提出した後、事業者は資金調達と設備発注を行い、本格的に開発⼯事が開始する。

これらのタイミングで進捗を確認した上で、再エネ発電設備の区分等ごとに認定から失効までの期間を設定します。

系統連系工事着工申し込みの提出要件

認定事業者が一般送配電事業者等へ系統連系工事着工申込書を提出する時点で、以下の要点を満たすことが条件となります。

設備を設置する場所の所有権や、その他の使用権限を有していること
②設備を設置する場所の農業振興地域整備計画の変更または農地転用許可を得ていること
③再生可能エネルギー発電事業計画の実施に必要な林地開発許可を得ていること

なお②と③に関しては、設置場所によっては必要ない場合もあります。

案件によっては例外措置が取られる場合も

大規模案件については、運転開始に向けた準備が進められていることや、確実に事業実施が行われることが証明されれば、資金調達に必要な期間などを踏まえた例外措置がとられる場合もあります。
事業実施の確実性を証明するためには、以下の2点が必要となります。

・環境影響評価の準備書に対する経済産業大臣からの勧告通知
・工事計画届

これらの提出により、開発工事への着手が公的手続きによって確認できる大規模案件に関しては、資金調達期間にあたる年数を猶予期間として数え、失効リスクを取り除ける場合もあります。

まとめ

今回は設備認定失効制度の概要と、認定を失効しないために必要な届出等について解説しました。
認定を受けた案件はすぐ稼働するに越したことはありませんが、もし当記事を読んでいる方の中に未稼働案件を所有している事業者の方がいましたら、なるべく早く然るべき手続きをとることをお勧めします。

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