コロナ以降、不織布マスクのポイ捨てが急増!環境への影響は?

環境問題

新型コロナウイルスの感染拡大以降、外出時のマスク着用はもはや国内外問わず習慣的なものとなりました。
一口にマスクと言ってもウレタンマスクや布マスクなど様々な種類がありますが、中でも不織布マスクは新型コロナウイルスを防ぐ効果が高いこと、使い捨てができて楽なことから、毎日多くの人が使用しています。

しかしその一方で、嘆かわしいことにコロナ以降は使用済みの不織布マスクをポイ捨てする人が増え、深刻な環境問題を引き起こしています。
海洋環境の保護団体「オーシャンズアジア」の調べによると、新型コロナウイルスが流行し始めた2020年には、世界中でなんと15億枚以上の不織布マスクが海に捨てられたことが分かっています。
その報告書には、2020年のマスクの世界生産量合計520億枚のうち、少なくとも約3%が海に流出しているとも記されています。
「3%」と聞くと少ない感じもしますが、これは重さにすると5000トン前後にも及びます。
連日コロナ関連のニュースが流れる一方で海洋環境がここまで危機的な状況に陥っていたとは、知らなかった人も多いのではないでしょうか。

今世界で起きていることを知るためにも、今回は「ポイ捨てされた不織布マスクが自然環境や私たちに与える影響」について考えていきましょう。

不織布マスクのポイ捨てが環境に良くない理由

一見不織布マスクは紙のような質感に見えますが、多くの場合、その原材料にはプラスチックの1種であるポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどが使われています。
つまり、使用済み不織布マスクはれっきとしたプラスチックごみということになります。
海洋プラスチックのリサイクル団体「ウェイスト・フリー・オーシャンズ(WFO)」によると、ポイ捨てされた不織布マスクは自然分解するまでに400~500年は要すると考えられています。
これは、あまりにも途方もない年月だと言えます。

海に捨てられた不織布マスクは、紫外線を受けたり波に揉まれたりして、徐々に小さなプラスチックの粒子となります。
当コラムページに以前掲載した「今、問題視されている「マイクロプラスチック」とレジ袋有料化の関係とは」の中でも触れていますが、最終的に5mm以下にまで小さくなったプラスチックは「マイクロプラスチック」と呼ばれ、海洋環境を崩す大きな原因となっています。
プラスチックゴミの中でもマイクロプラスチックはひときわ小さく、そのためクジラや魚などの海洋生物が餌と勘違いして食べてしまうことがあります。
しかしプラスチックは体内で消化されないため、そのまま胃の中に蓄積したり、消化器官が傷つけられたりすると、最悪の場合死に至ることもあります。

それだけではなく、海洋生物はマイクロプラスチックを吞み込むことで、有害な化学物質を体内に取り込みやすくなることも分かっています。
環境省は平成28年度に発表した「海洋ごみ調査の結果」の中で、マイクロプラスチックには海中に存在する「残留性有機汚染物質(POPs)」という化学物質を吸収しやすい特徴があることを発表しています。
POPsには魚の肝機能障害を引き起こす成分や、ホルモンバランスを崩して生殖を妨げる成分が含まれていることが明らかになっています。
また、海の小魚などがマイクロプラスチックを食べてしまうと、その小魚を食べる他の魚や海鳥にもPOPsが取り込まれるため、様々な生態系を連鎖的に崩してしまう可能性があると懸念されています。

プラスチックが海洋生物に及ぼす影響

世界最大規模の環境保全団体WWFによると、世界では毎年100万羽以上の海鳥と、10万匹以上のウミガメや海洋哺乳動物(ホッキョクグマやラッコなど)が、海に捨てられたプラスチックを誤って体内に取り入れたことによって命を落としています。
また、複数の機関や財団による協力のもと2017年に発表された「ニュー・プラスチック・エコノミー」という報告書の中では、このままプラスチックごみが増加の一途を辿れば、2050年には海中のプラスチックごみの総数が魚の総数を上回るという試算が出されています。

これらのデータから分かる通り、海洋プラスチック問題は新型コロナウイルスの感染拡大以前から深刻な環境問題として注目されていました。
コロナ以降は、ポイ捨てされたマスクなどによる「コロナごみ問題」が加わり、さらに環境汚染に拍車がかかっているのが現状です。

それでも不織布マスクがコロナ対策に効果的な理由

使い終わったマスクをポイ捨てするのは言語道断ですが、コロナ予防における不織布マスクの有効性は、様々な研究によって立証済みです。
ここでは改めてマスクの主な原材料をチェックするとともに、不織布マスクがコロナ対策に効果的な理由について見ていきましょう。

冒頭でも述べた通り、マスクには大きく分けて「不織布」「ウレタン」「布」の三種類があります。
ウレタンマスクと布マスクは洗えば何回か使用することができ、またウレタンは通気性が良く呼吸しやすい点が特徴です。
一方で不織布とは、「ポリプロピレンやポリエステルなどの化学繊維を織らずに絡み合わせたシート」のことを指します。
強度があり伸びにくく、安価で大量生産できる点が特徴です。

2020年12月、国立研究開発法人「理化学研究所」はスーパーコンピューター「富岳」を使って、上記の素材ごとの飛沫防止効果を調べるシミュレーション実験を行いました。
実験の結果、自分から他人に対する「吐き出し飛沫量」は、ウレタンマスクは約50%カット、布マスクは約70%カットできるのに対し、不織布マスクは約80%もカットできることが分かりました。

また、自分が他人の飛沫を吸い込んでしまう「吸い込み飛沫量」は、ウレタンマスクは約30~40%のみカットできるのに対し、不織布マスクでは約70%カットできることも分かっています。
その他、理化学研究所以外の研究機関でも度々近しい研究は行われていますが、多少の数値の違いはあれ、やはり「不織布マスクは圧倒的に飛沫防止効果が高い」という研究結果が出ています。
ここまで歴然とした差が出れば、多くの人が不織布マスクを選ぶのは当然の流れだと言えるでしょう。

大切なのは「コロナ対策」と「環境配慮」の両立

コロナ予防効果の高い不織布マスクを使うことは決して悪いことではなく、むしろ感染防止の観点から見れば、不織布マスクを使うのは賢明な判断だと言えます。
環境意識の高い人、または肌が弱く不織布マスクを着けられない人などは布やウレタンを選ぶ傾向にありますが、それ以外の多くの人は不織布マスクを使わざるを得ないのが現状です。
しかし、だからと言って使用済みマスクをポイ捨てして良いことにはなりません。
環境問題は新型コロナウイルスの収束を待つことなく、今なお進行し続けています。

また、ポイ捨てされたマスクが悪影響を及ぼすのは自然環境だけではありません。
たとえば街中に使用済みマスクが捨てられていた場合、そのマスクの素材がなんであれ、表面にはウイルスが付着している可能性があります。
もし誰かがそのマスクをきちんと捨てようと拾ってしまうと、それをきっかけに感染することもあり得ます。

当然のことではありますが、使い終わったマスクは決してポイ捨てせず、自治体の指示に沿って廃棄することが大切です。
マスクを捨てる際は、以下の2点を押さえておきましょう。

➀表面にはなるべく触れずに紐部分から外す
②ごみ袋に入れ、口をしっかり縛ってから捨てる


もちろんマスクを捨てた後は、必ず手をよく洗うようにしましょう。

まとめ

今回は、不織布マスクのポイ捨てが招く環境リスクなどについて解説しました。
ワクチン接種の進んだ一部の国ではマスクなしでの外出が許可されるようにもなりつつありますが、日本ではまだまだマスクを着用する日々が続きそうです。
引き続きコロナ対策はしっかり行いつつ、環境への配慮も忘れず過ごしていきたいものですね。

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