ファッション、雑貨、食べ物、移動手段など、近年あらゆる方面で増え続けているサステナブルでエシカルな選択肢。
その流れは、いまや私たちの生活に無くてはならない存在となったスマホにも影響を与えています。
今回は、環境や生産過程に配慮したサステナブルでエシカルなスマホや、それらを広めるために行われている取り組みについて紹介していきます。
エシカルなスマホの代表格「Fairphone(フェアフォン)」
「Fairphone(フェアフォン)」は、2013年に世界初の「エシカルなモジュール式スマホ」としてオランダの同名企業から発売されたスマホです。
発売当初は欧州を中心に、主にエシカルへの関心が高い消費者から支持を得ていましたが、2019年8月に「Fairphone3」、2020年9月に「Fairphone3+」を発表してからは、徐々に欧州以外の国や地域にも広まっています。
ここでは、フェアフォンの特徴を大きく2つに分けて見ていきましょう。
故障しても部品を買い替えれば使用し続けられる
モジュール方式とは、分かりやすく言うと「異なる機能を持つ部品を集めて一つの機器を作ること」です。
この場合、もし機器内の一つの部品が故障しても、他の部品にはあまり影響を与えない点が特徴です。
逆に部品同士が密接に関連し、互いに与える影響が大きい製品は「インテグラル型」と呼ばれます。
つまりフェアフォンの場合、もしディスプレイやカメラなど一部が故障しても、該当部品だけ買い替えればまた使用できるというわけです。
このように一つの製品を長く使い続けることは、廃棄物やCO2の削減につながります。
原料や生産過程に配慮
一般的にスマホなどの電子機器には、レアメタルや金などの鉱物が使われています。
しかし現在、鉱物の主な生産国であるアフリカのコンゴ民主共和国では、豊かな鉱物資源の権益を奪い合う紛争により、多くの国民が苦しんでいます。
また、鉱物の採掘現場では、劣悪な環境下での労働や低賃金、そして土壌や水質汚染などの問題も指摘されています。
そのような背景を踏まえ、フェアフォンの原料にはフェアトレード認証ゴールドが使用されているほか、コンフリクト・フリー(紛争の資金源とならない)のスズやタングステン、そしてリサイクルしたプラスチックや銅が使用されています。
また、機器の最終組み立てを行う台湾の委託工場では、従業員の労働環境や健康、安全性などに配慮しているほか、法定最低賃金と実際に必要な生活賃金(最低限の生活を維持するのに必要な賃金)とのギャップが生じないようにボーナスを支給しています。
こうした施策は、フェアフォン社と工場で従業員満足度調査を行い、そこから得た意見やニーズに基づいて実施されているそうです。
最新モデルは圧倒的長期間の5年保証付き
2021年5月に発売された最新モデルの「Fairphone4」には、5年間の長期保証が設けられています。
通常のスマホの保証期間が1~2年であることを考えると、これは圧倒的な長さだと言えるでしょう。
参考:Fairphone公式サイト
エコでリーズナブルな「2e」
2eは、アメリカ・カルフォルニアのスタートアップ企業「Teracube(テラキューブ)」が、「全く新しいサステナブルなデバイス」を目指して開発したスマホです。
2019年に第1弾が発売され、2020年に第2弾である2eが発表されました。
ここでは、2eの特徴を大きく3つに分けて見ていきましょう。
原料に配慮し長期間の使用が可能
2eは、デバイス本体の25%にリサイクルされたプラスチックが使われており、付属品のケース、バッテリー、スクリーンプロテクターには、生分解性素材の大豆と再生紙が使われています。
また、2eはバッテリーをユーザー自身の手で取り外し、交換できる仕組みとなっているため、フェアフォン同様に長く使い続けることができます。
リーズナブルな価格設定
近年のスマホ平均価格は大手キャリアで約7万円、格安スマホでも約4万円となっている中、2eは通常価格199ドル(約2万2,500円)とリーズナブルな価格設定となっています。
ちなみに発売当初に行われたクラウドファンディングでは、早期出資者に限り半額の99ドル(約1万1,200円)で購入することができました。
4年間の長期保証
フェアフォンに続き、2eもまた4年間の長期保証を設けています。
この無料保証には、すべての部品、性能、配送などが含まれています。
機器が故障した際の修理価格も、通常のスマホであれば150~300ドル(約17,000~34,000円)であるのに対し、2eは59ドル(約6,700円)と圧倒的な低価格を実現しています。
ただし、4年保証の対象となっている地域は、今のところアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、ポーランド、シンガポールのみとなっており、残念ながら日本は含まれていません。
ゆくゆくは、日本も保証対象となることに期待したいですね。
参考:Teracube公式サイト
事業を通じた社会課題解決を目指す「携帯市場」
携帯市場は、中古通信端末の卸・販売を手掛ける日本企業です。
創業当初から、「事業を通じて社会課題を解決する」というマインドを掲げています。
創業した2008年には京都議定書を参照し、「中古端末一台ごとに、携帯電話を廃棄したときに出るCO2を付加して販売する」というカーボンオフセット端末の販売を行いました。
ただし、当時はまだ「サステナビリティ」という概念も一般的ではなかったこと、会社の規模がまだ小さかったことなどから、大々的な普及には至りませんでした。
しかし2020年のコロナ禍の際、「家計の負担を減らし、不安を減らせるサービス」として「みんなのスマホ」を開始して以降、携帯市場の取り組みは大きな注目を集めるようになっています。
ここでは、そんな携帯市場が取り組んでいる事業について見ていきましょう。
みんなのスマホ
みんなのスマホは、スマホやタブレットのサブスクリプションサービスです。
例えば、大手キャリアで新品のiPhoneを購入する場合、旧機種のiPhone8やiPhoneSEでさえ、最低でも5万円は必要になります。
一方みんなのスマホであれば、iPhone8の64GBを月額1742円(税込)で、iPhone7であれば、月額約1000円で使用することができます。
この金額であれば、たとえスマホの平均寿命と言われる2年間使用したとしても、新品を買うより安く済ませることができます。
このサービスは、家計にダイレクトな打撃を与えたコロナ禍において、非常に有力な選択肢となっています。
もちろんレンタル用の端末は入念にクリーニングを行い、バッテリーの損耗が80%以下の機器は省くなど、厳しい基準を設けています。
スマホカエルプロジェクト
情報通信ネットワーク産業協会が令和元年に行った調査によると、国内の使用済み携帯端末のうち約7割は産業廃棄物として捨てられていることが分かっています。
また廃棄はしていなくても、各家庭に放置されたままの使用済み端末も多いと考えられています。
携帯市場はそういった端末を無償で回収し、「中古端末として使用できるもの」、「廃棄せざるを得ないもの」、「分解し、パーツごとに使用するもの」にそれぞれ約3割ずつ選別します。
そうして確保した中古端末を、学校などに格安でレンタルするサービスとして2020年にスタートしたのが「スマホカエルプロジェクト」です。
近年では、政府が子供に1人1台のデジタル端末を割り当てるという「ギガ構想」を推進する一方、デジタル端末を使える子供とそうでない子供との間に生じるデジタル・デバイド(情報格差)が問題となっています。
しかし、スマホカエルプロジェクトを利用する地域が増えれば、届くべき人に適切に端末が行き渡り、教育の場におけるデジタル・デバイドも解消することが期待されています。
なお、このプロジェクトを通じて地域で端末が募集された際には、寄付先の学校も明示されます。
これにより中古端末を手放す側も、「顔の分かる誰かの助けになっている」ということが寄付のモチベーションにつながります
このように、現在は中古端末を中心とした携帯市場ですが、ゆくゆくは環境や人権に配慮した「日本版フェアフォン」を発表することも視野に入れているそうです。
参考:携帯市場公式サイト
まとめ
一昔前は大手キャリアがシェアの大半を占めていた携帯業界は、いまや転換期を迎えています。
スマホを選ぶ基準も「性能」や「デザイン」だけでなく、「環境に配慮しているか」や「クリーンな生産過程を辿っているか」など多様化しています。
「ずっと大手キャリアのスマホを使っている」という方は、今度スマホを買い換える時は少し視野を広げ、今回ご紹介したサステナブルでエシカルなスマホもチェックしてみてはいかがでしょうか?