パンデミックがSDGsに与えた影響と、現状を乗り越えていくための課題とは

SDGs

2016年から開始したSDGs(持続可能な17の開発目標)ですが、目標達成年として掲げている2030年までは早くも10年を切っており、より具体的な取り組みが求められる時期に差し掛かっています。

そんな中で昨年発生した、新型コロナウイルスによるパンデミックは、少なからずSDGの達成に対する逆風となっています。
しかしそんな時代だからこそ、今、より一層SDGsの重要性が問われています。

今回は、パンデミックがSDGsの達成に及ぼした影響を様々な角度から知り、この逆境を乗り越えるために必要なことについても考えていきましょう。

パンデミック以降「人間開発指数」が減少

2020年5月に国連開発計画(UNDP)が公表した報告書によると、パンデミック以降の「人間開発指数」は、測定開始以来初めて減少するおそれがあると言われています。

「人間開発指数」とは、1990年からUNDPが毎年発表している指標で、世界各国の発展具合を「教育」、「健康(平均寿命)」、「生活水準」の3つの尺度から測定しています。
測定開始以来、いかなる世界的な経済危機に見舞われても上昇していたこの指数が減少することは、それだけ新型コロナウイルスによるパンデミックが未曽有の事態であることを物語っています

人間開発指数にはSDGsで掲げている目標と共通する部分があるため、この結果はSDGsの達成にも影響を及ぼしています。
特に教育と健康に関しては、コロナウイルス対策環境が十分に整備されていない国ほど大きな打撃を受けています。

【目標別】SDGsがパンデミックにより受けた影響

「目標1.貧困をなくそう」

世界中に大きな経済打撃を与えたパンデミックですが、特に大きな影響を受けたのが貧困層です。
貧困を根絶するための支援活動を行っている国際NGOのオックスファムによると、パンデミックの影響で貧困に陥ってしまう人は、なんと5億人にものぼると予想されています。

また日本国内おいても、パンデミックによってこれまで以上に貧困問題が深刻視されるようになりました。
「密」を回避すべく対面式の経済活動が大幅に制限されたことで、リモートワークなど非対面式に移行できる人と、そうでない人との間に大きな格差が生じました。

ハローワークの調査によると、パンデミック以降日本では約8万人が失業したと言われています。
さらに自営業などの倒産や廃業を含めると、職を失った人の数は更に増えると考えられています。
その他、失業はしていなくとも、パンデミックの影響で企業の業績が落ちるなどして、日本の相対的貧困率(※)は上昇傾向が続いています。

※相対的貧困率…低所得者の割合や経済格差を示す指標。収入から税金や社会保険料を引いた所得を高い順に並べ、中央の額の半分に満たない人が全体に占める割合。

「目標3.すべての人に健康と福祉を」

開発途上国におけるHIV/AIDS流行の制御、マラリアによる死亡数の削減努力など、「すべての人が健康でいられる世界」に向けた取り組みは近年目覚ましい躍進を遂げた一方で、それでも2030年までの目標達成には遅れが出ている点が懸念されていました。
パンデミック以降は、医療機関の逼迫やワクチン接種環境の整備不足などによって、目標達成は更に困難な状況になっています。

また、ステイホームの定着による負の側面も問題視されています。
家庭環境が比較的良好な家庭であれば、ステイホームによって一家団欒の時間ができて家族の結びつきが強まるなどの好影響も確かにあります。
しかし、もしストレスが日常的に存在している機能不全家庭の場合、ステイホームによってDVや児童虐待が発生するリスクが上がる可能性があります。
また単身世帯では、人とのつながりが薄まったことにより孤立感が増し、心身への悪影響をきたす場合もあります。

「目標4.質の高い教育をみんなに」

ユネスコが行った調査によると、パンデミックによるロックダウンの影響によって、世界では12億人以上の子供が教育の場を失っているという結果が出ています。

日本でも最初に緊急事態宣言が発令されて以降、各自治体に応じて度々休校措置が取られています。
その中でも、デジタル化が進んでいる自治体ではオンライン授業のための環境が迅速に整えられましたが、対応に遅れが出ている自治体ではまだ十分な整備がされておらず、学力格差が生じるのではないかと懸念されています。

このような「情報格差 (デジタル・ディバイド)」は以前から存在自体はしていましたが、パンデミックによって明確に可視化されました。

「目標13.気候変動に具体的な対策を」

パンデミック当初は、ロックダウンや緊急事態宣言により経済活動が制限されたことで、先進国などでは一時的に大気汚染指数が下がったことが分かっています。
しかし、その後徐々に経済活動が再開されるにつれ、ほとんどの国では再び大気汚染指数が上昇傾向にあります。
これにより、経済活動と気候変動対策を両立することの必要性が明確になりました。

またパンデミック以降、人々は日常的にマスクを着けるようになり、外出自粛の影響でテイクアウトやデリバリーを利用する人が増えましたが、それによりマスクや食品容器のポイ捨てが続出していることが問題となっています。

コロナ禍と地球環境改善の関係性については「新型コロナ以降、地球環境が改善したってホント?主な4ヶ国の状況をチェック!」で、マスクのポイ捨てについては「コロナ以降、不織布マスクのポイ捨てが急増!環境への影響は?」で詳しく書いているため、気になった方は是非チェックしてみてくださいね。

3.パンデミック以降のSDGsへの向き合い方

パンデミックがSDGsの達成に与えた影響は決して良いとは言えないものばかりですが、一方で進展が見えた部分もあります。
これまで後回しにされていたことや見て見ぬふりされていたことがパンデミックによってあぶり出され、否が応でも変化していかしなければならない局面に立たされたからだと言えるでしょう。

例えば、新型コロナウイルスの感染拡大以降は「リモートワーク」や「リモート飲み」が浸透し、人々が仕事や交流を行う場はデジタルに移行しました。
それにより、デジタル・テクノロジー分野の技術は飛躍的に向上し、ITインフラも整備されました。

このような技術向上は、キャッシュレスやハンコレスと言ったこれまでの生活習慣の見直しにも大きく寄与しています。
ただしその反面、前述した「情報格差(デジタル・ディバイド)」も今後社会的な課題となっていくと考えられています。
これからの社会では、パンデミックによって可視化したさまざまな課題を確実に解決し、SDGsの達成につなげていくことが求められるでしょう。

SDGs策定にも関わり、ノーベル平和賞を受賞しているバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス博士は、「No Going Back 」というメッセージを発しています。
この言葉には、「社会課題の息詰まる元の世界に戻るのではなく、新たな世界を創っていこう」という意味が込められています。
多くの価値観が変容した今こそ、より良い社会を創る機会なのかもしれません。

まとめ

今回は、新型コロナウイルスによるパンデミックがSDGsにもたらした影響について紹介していきました。
新型コロナウイルス収束とSDGs達成の両方が実現された未来を創るためには、私たち一人一人が今世の中で起きていることを知り、「他人事」ではなく「自分事」だと捉えることが必要なのかもしれません。
とにもかくにも今は緊張感を持って、日々感染予防対策に徹底することが大切ですね。

参考URL:UNDP「新型コロナウイルスとSDGs」

参考URL:ユニセフ「新型コロナウイルスとSDGs-だれひとり、取り残さない世界のために-」
参考URL:サステナブルタイムスbyユーグレナ「コロナ特集:前編】新型コロナウイルス感染症の危機は私たちに再出発の無限のチャンスを与えてくれた。-グラミン銀行創設者 ムハマド・ユヌス氏-」

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