世界中の海でクラゲが大量発生!その原因は「人間の活動」?

環境問題

美しく、神秘的な海の生物として水族館で人気の高いクラゲ。
水中をフワフワと漂う姿は癒しを与えてくれますが、直接触れると触覚で刺されることがあるため、できれば海水浴中には出会いたくない存在です。

そんなクラゲですが、近年世界中の海で大量発生しており、海洋環境などに深刻な影響をもたらしていることが分かっています。
そしてその原因は、他でもない私たち人間にあると考えられています。

今回は、クラゲの大量発生の原因となった私たち人間の活動や、クラゲの大量発生が環境や漁業などに及ぼす影響などについて解説していきます。

クラゲが大量発生するメカニズム

まず意外と知られていませんが、実はクラゲはプランクトンの一種です。
プランクトンは、自力で泳ぐ能力が弱く、また海底に固着する能力も持たないことから、水中を漂って生きる浮遊生物の総称です。

プランクトンと聞くとミジンコやミドリムシといった微小な生物のイメージが強いため、クラゲがプランクトンだと聞いてもあまりピンとこないかもしれません。
しかし水に身を任せてフワフワと漂って生きていれば、大きさに関係なくプランクトンということになります。
一方で、クラゲはイソギンチャクやサンゴと同じ腔腸動物(※)にも分類されています。

日照時間が長くなり、気温が上昇する夏季になると、海では水温上昇や富栄養化(海中の栄養分が増えすぎること)が起こり、プランクトンが大量発生することがあります。
海が赤く染まる「赤潮」は主に植物プランクトンの繁殖によって起こる現象ですが、同条件下ではクラゲも同様に繁殖すると考えられています。
また一見繁殖したように見えても、実際はただ単に風や潮流に運ばれ、いつの間にか一か所に集まっただけという場合もあります。

このように、クラゲの大量発生自体は度々起こることであり、決して珍しい現象ではありません。
しかし近年では明らかに頻度が高まり、その規模も拡大していることから、海洋環境バランスの崩れを懸念する声が増えているのです。

※腔腸(こうちょう)動物…無脊椎(むせきつい)動物の一群で、ほとんどが海産。

クラゲが大量発生する頻度が高まった原因

地球温暖化

地球温暖化は、私たち人間の活動によって排出された温室効果ガスが原因で起こっている環境問題です。
私たち人間が化石燃料を大量に使用したり、CO2を吸収してくれるはずの森林を減少させたりした結果、いまや大気中の温室効果ガス濃度は深刻な数値に達しています。

海は、そんな危機的状況から地球を守ってくれています。
気象庁によると、1971年~2010年までの40年間に蓄積された地球全体の熱エネルギーの90%以上は海に吸収されていることが分かっています。
また、海には森林と同様にCO2を吸収する力があり、人間の活動によって放出されたCO2の30%以上は海が吸収していることも分かっています。

しかし一方で、熱を吸収することによって海自体も年々温暖化しており、近年では世界中の海で水温と海面の上昇が確認されています。
そして温暖化によって気温の高い状態が長引くことで、クラゲは従来よりも長い期間繁殖し、広範囲に拡大するようになっていると考えられています。

魚類の乱獲

海には、プランクトンや甲殻類をアジやイワシなどの小形魚が食べ、小形魚をマグロやカツオなどの中形魚が食べ、中形魚をサメやシャチなどの大形魚が食べる…という「食物連鎖」があり、これによって海洋生態系のバランスは保たれています。
しかし大量消費社会の拡大や埋め立て化の加速に伴い、むやみやたらに水産物を獲る漁業関係者が増えたことで、海洋生態系は著しくバランスを崩しつつあります。

人間の乱獲によって海の魚が減少すると、クラゲを餌とする生物もいなくなり、結果としてクラゲの大量発生を招きます。
そうして過剰に繁殖したクラゲが稚魚や魚卵を餌として消費すると、魚の数はますます減り、海はクラゲの独壇場となってしまうのです。

人工物へのポリプ付着

多くのクラゲは成長過程において、「ポリプ」と呼ばれる形状になる時期があります。

ポリプとは腔腸動物に見られる体型の一つで、海底の岩や貝殻などに付着して生活するのが特徴です。
イソギンチャクやサンゴはポリプのまま一生を過ごしますが、クラゲは多くの場合「ポリプ世代」を経てから浮遊生活を行う「クラゲ世代」になります。

例えばミズクラゲの場合、卵から「プラヌラ」と呼ばれる幼生が放出されると、岩や貝殻に付着して「ポリプ」になります。
ポリプは何層にもくびれて「ストロビラ」と呼ばれる形状になり、数日経つとそれぞれの層は「エフィラ」と呼ばれる個体となって分離し、やがてクラゲになります。
ポリプは無性生殖を行うため、環境条件によっては際限なく新しい個体を生み出します。

現代においては、沿岸開発によってポリプが付着しやすい人工物が増えたことも、クラゲが大量発生する一因であると考えられています。

クラゲの大量発生がもたらす影響

海洋生態系の破壊

前述したように、海洋生態系の絶妙なバランスは食物連鎖によって成り立っています。
しかしクラゲの大量発生によってそのバランスが崩れると、いずれ海洋資源は枯渇し、海そのものの再生力も失われてしまう可能性があります。
生命の源である海の再生力が失われれば、私たち人間の生活にも大きな影響が生じることは想像に難くありません。

また、クラゲの大量発生によって新たな食物連鎖が生じると、副産物として大量のCO2が発生する可能性もあることが指摘されています。
つまり、クラゲの大量発生は海洋生態系の破壊だけでなく、気候変動を助長するおそれもあるのです。

発電所への流入

クラゲの大量発生は、沿岸部に設置された火力発電所の稼働にも影響を及ぼしています。

基本的に沿岸部の火力発電所には、冷却時に必要な海水を取り込むための取水口が設置されています。
取水口には海洋生物が流入することが多く、中でもミズクラゲは最も流入頻度の高い生物として警戒されています。

ミズクラゲの流入によって取水口が詰まると、最悪の場合発電所は稼働停止を余儀なくされてしまいます。
実際、2016年には富山県の富山新港火力発電所に、2017年には福岡県の苅田火力発電所に大量のクラゲが押し寄せ、自動停止する事態となっています。
いずれの発電所もクラゲ除去装置を設置していたにも関わらず、装置の能力を上回るクラゲの流入があったとのことです。

これらのケースでは電力供給への影響はほぼ無かったものの、今後さらに大量のクラゲが来襲した場合、深刻な電力不足に陥る可能性もゼロではありません。

毒による被害

クラゲのほとんどは触手に毒を持っており、刺されると痛みや痒みなどが発生します。
万が一強い毒を持つクラゲに刺された場合は、最悪ショック死を引き起こす可能性もあります。
猛毒を持つクラゲとしては、カツオノエボシ、ヒクラゲ、ハブクラゲなどが知られています。

上記のクラゲに比べて毒性は低いものの、日本ではエチゼンクラゲによる被害が多く報告されています。
世界最大級のクラゲであるエチゼンクラゲは、日本海近海で定期的に大量発生し、漁業関係者や行楽客に被害をもたらしています。

エチゼンクラゲの毒は、一般的には痒くなる程度の強さだとされていますが、実際には刺された後で重症化したケースも報告されています。
またエチゼンクラゲが漁網にかかり、同じ網の中にいる魚に毒が付着すると、その魚は売り物にならなくなり、経済的な損失が生まれてしまいます。

クラゲの大量発生は食い止められるのか

クラゲの大量発生を食い止めるためには、もちろんCO2削減や乱獲規制に取り組むことも重要ですが、実際にクラゲの繁殖数が減るまでには長い時間がかかると考えられています。
そのため大量発生を食い止める取り組みと並行して、「既に発生してしまったクラゲを有効活用する方法」についての取り組みも進められています。

クラゲの活用方法として最もポピュラーなのは「食用加工」ですが、近年ではより幅広い分野で活用されるようになっています。
例えば、神奈川県横浜市に本社を構える「株式会社 海月研究所」では、クラゲから「クラゲコラーゲンJelliCollagen®」と「クラゲムチンJelliMucin®」という物質を抽出することに成功しています。

クラゲコラーゲンは化粧品の原材料として販売されている他、同社が展開する基礎化粧品シリーズにも使用されています。
また、クラゲムチンはドライアイや関節疾患の治療薬として役立てるべく、研究開発が進められています。

まとめ

クラゲの大量発生は環境だけでなく、漁業、健康、ライフラインなど、あらゆる方面に影響を及ぼすことが分かりましたね。
「クラゲが増えた原因は人間にある」と言われても、多くの人は釈然としないかもしれません。

しかし一人一人が無意識にとった行動が積み重なることによって、環境や生態系は良くも悪くもなるのです。
できればより良い方向に変えていけるよう、まずは身近な環境問題に意識を向けることから始めてみませんか。

参考URL:株式会社 海月研究所
参考URL:富山新港火力発電所1号機の運転停止について(北陸電力)
参考URL:苅田火力発電所、クラゲで停止 福岡(産経新聞)

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