「太陽光発電って、結構歴史浅いんじゃないの?」
とお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、一般家庭にも設置できるほど身近な存在となったのはここ25年程度です。
しかし太陽光発電システム自体は、実は何十年も前に誕生しています。
今やすっかり馴染み深い存在となった太陽光発電ですが、一体いつ世の中に誕生し、住宅用まで普及するに至ったのでしょうか。
ここでは太陽光発電の始まりから、住宅用太陽光発電システムが普及した今日までの軌跡を辿っていきたいと思います。
〈太陽光発電システムの誕生〉
太陽電池の発明はなんと60年以上前!
今から60年以上前の1954年、アメリカの研究施設で世界最初のシリコン太陽電池が発明されました。
この太陽電池は1958年、人工衛星『ヴァンガード1号』に搭載され、宇宙に打ち上げられるという形で初めて実用化されています。
前年の1957年に打ち上げられた人工衛星がわずか3週間で電池切れしてしまったのに対し、ヴァンガード1号は6年以上の活動を成功させました。
この記録を見れば、いかに太陽電池が偉大な発明であったかが分かるでしょう。
ヴァンガード1号の観測により「地球は完全な球体ではない」ということが判明するなど、この当時の太陽電池はその後の宇宙研究において大きな役割を果たしています。
アメリカでの発明から一年後の1955年には、日本でも国産メーカーにより国内初の太陽電池が作成されました。
日本もアメリカと同様実用化に向けて動き始めてはいたものの、メンテナンスに高額費用がかかることやサイズの大きさに反して短命だったことなどから、長い間実用化するには厳しい状況が続いていました。
太陽光発電普及のきっかけはオイルショック!?
普及に向けた開発が難航していた太陽光発電ですが、その研究を飛躍的に進めるきっかけとなったのが、1973年に起こった第一次オイルショックです。
リアルタイムで当時を知らなくても、歴史の教科書などでトイレットペーパーを買い占める人々の写真を見たことのある方は多いのではないでしょうか。
当時ほとんどの燃料をアラブ諸国からの石油輸入に頼り切っていた日本は、原油価格の高騰により経済面に未曽有の大打撃を受けました。
しかしこの歴史的な混乱をきっかけに、限りある化石燃料に代わる再生可能エネルギーの普及が重要視されるようになりました。
「サンシャイン計画」の策定
第一次オイルショックの翌年1974年、政府は「サンシャイン計画」を打ち出します。
この計画は環境とエネルギーに関する問題を抜本から解決していくことが目的とされ、専門の技術研究分野には策定年から1992年までの間に約4400億円が投じられました。
これにより潤沢な資金を得ることが出来た再生可能エネルギー分野は、念願だったシステム実用化への道を着実に進んでいきます。
少しでもエネルギー使用量を抑えることを指す「省エネルギー」という言葉が流行り始めたのも、この頃です。
決して楽ではなかった!再エネの重要性認知までの道のり
サンシャイン計画の後押しもあり、幅広い普及に向けた研究が進んでいた太陽光発電ですが、やはり設置やメンテナンスに高額な費用がかかることから、しばらくの間は産業用の普及に限られていました。
また策定当初、高度経済成長の真只中にあった日本では、自然由来のエネルギーよりも最先端の技術を用いた原子力発電が注目されていました。
そのためサンシャイン計画はこのまま失速していくと思われましたが、第二次オイルショックに見舞われた1979年頃から、改めて再生可能エネルギーの重要性が問われるようになったと言われています。
住宅用太陽光発電が普及するまで
遂に住宅用太陽光発電システム登場!
1992年に策定された「ニューサンシャイン計画」によって、太陽光発電の普及は新たな局面に進んでいきます。
前身であるサンシャイン計画は「エネルギー供給源の確保」が主な目的だったのに対し、ニューサンシャイン計画はより一層環境保護の側面を強めたものとなっていました。
中でも太陽光発電システム普及促進の動きは目覚ましく、遂に1993年、待望の住宅用太陽光発電システムが登場します。
しかし満を持して登場したとは言え、当時の太陽光発電システムは設置容量1kWあたり400万円前後、全国平均である4kW設置の場合はなんと1500万円前後は必要になると言われていました。
バブル崩壊から間もない時期という点を鑑みても、一般家庭への導入は中々ハードルが高かったと言えるでしょう。
また、1994年には補助金制度も生まれましたが、それでも環境面や技術面に相当の関心がない限り、太陽光発電システムを設置する世帯はあまり多くありませんでした。
大々的な普及のきっかけとなった「売電制度」
導入にかかるコストの高さから設置が敬遠され気味だった住宅用太陽光発電システムですが、性能及び生産効率が上がったことにより、2000年頃から徐々に低価格化が進んでいきます。
1993年当初に比べると大幅にコストカットされたことを受け、2006から2年間は補助金も一時廃止されました。
それでも決して手軽に設置できる存在ではありませんでしたが、2009年に余剰電力買取制度(売電制度)が制定されると、それまでとは打って変わって大々的に広まっていくことになります。
売電自体は2009年以前から電力会社と設置元との個別のやり取りで行われていましたが、その時の買取価格は微々たるものだったため、設置コストに見合うメリットとがあるとは言えませんでした。
しかし売電側に損失がでない買取額が設定される売電制度が出来てからは、「設置コストも回収できる上に収入も得られる!」という点が話題となり、経済的な利益目的で設置する世帯が着実に増えていくことになります。
近年ではシステム自体の低価格化に併せて売電価格も下がっているため、売電収入目的の設備導入は必ずしも最適とは言えないのが現状です。
それでも今日における住宅用太陽光システムの普及は、売電制度の存在なくしては成しえなかったと言っても過言ではないでしょう。
自家発電に対する意識の変化とこれから
昨今では、住宅用太陽光発電システムを導入する最大の目的が「売電による経済的利益」から「環境への配慮」及び「災害対策」に移行しつつあります。
元々、太陽光発電普及の発端は「環境への害が少ない再生可能エネルギーを活用していく」という目的からでしたが、年々進行する地球温暖化を受け、近年はより一層その意識が強まっています。
また自然災害の多い日本においては、「太陽光発電と蓄電池を併せて活用することで、万が一の災害時に備えていきたい」との考えから設置される方が多くいらっしゃいます。
環境に配慮しつつ、有事の際に備えておくために自家発電を行うという近年の動きは、サンシャイン計画が策定された太陽光発電システム普及当初の目的と重なります。
近年では、環境に限らず数多の分野においてサスティナビリティ(持続可能性)が関心を集めています。
太陽光発電システムはサスティナビリティをいち早く成功させた先駆的な存在として、これからも企業や個人に限らず幅広く普及していくことでしょう。
まとめ
安定した設置率を誇っていると思われがちな住宅用太陽光発電システムですが、普及までには様々な危機や困難に直面していたことが分かりました。
今後も時代の移り変わりと共に、主流となるエネルギーも変わっていく可能性があります。
再生可能エネルギーによる自家発電システムを設置しておくことで、変わりゆく時代に柔軟に対応することができるでしょう。