以前にアップした「太陽に寿命はあるのか?」というテーマのコラム内でも触れましたが、遠い将来地球上の生命体が太陽系外の惑星へ移住する可能性は、決してゼロではありません。
とはいえ人類やその他の生物の生命活動を育み、存続していくためには、地球と同様に水がある惑星、そして太陽と同様に光のエネルギーを自ら発している恒星の2つが近すぎず、かつ遠すぎない距離間で存在していなければなりません。
「そんな都合の良い話、中々ないんじゃないかな…」と思ってしまうのも無理はありませんが、近年では遥か彼方の宇宙に地球と太陽によく似た惑星が存在していることが分かってきており、さらに「それは決して1つではない」と言われています。
そこで、今回は他惑星に移住するための条件を探りながら、「いつか地球以外の惑星に暮らす可能性」について考えていきたいと思います。
居住可能な惑星の条件
安定した公転軌道
太陽を中心に綺麗な円状の軌道を描いている太陽系惑星は、太陽(恒星)から受けるエネルギーの変動が少なく、そのため惑星内の環境も安定しやすいと考えられています。
そして、そのように安定したエネルギーを受けている惑星では生命が誕生しやすく、また発展しやすいとも言われており、実際に数多の生命体が生まれたのが私たちの「母なる星」である地球です。
反対に、惑星群の軌道がいびつだったり楕円状に大きく公転している場合は、惑星と恒星との距離感が不安定になるため、それによりエネルギーを多量に受ける時と全く受けない時とで大きな差が生まれてしまいます。
このようにエネルギーの受け取り方が不安定な惑星では、生命が誕生するのは難しいとされています。
十分な質量
私たち人間や動物が呼吸をするために、そして植物たちが育つためには、地球を包む大気の存在は無くてはならない存在となっています。
そのため地球に代わる惑星もまた、生命活動のための大気を十分に含んでいられる質量を有している必要があります。
仮に質量が小さい惑星に移住できたとしても、生命を維持するための地質学的なエネルギー源を速く失ってしまう可能性が高いため、長期的に生命を存続させることは難しいと言われています。
また、それだけではなく十分な質量を有している惑星の中心核には、「恒星風」から惑星を守るための鉄が多く含まれている可能性が高いと言われています。
「恒星風」とは恒星から吹き出されるガスの流れのことで、この恒星風は磁気嵐の発生源となっています。
磁気嵐の発生は電波障害や人工衛星の故障原因となるのですが、鉄を多く含んだ惑星であれば恒星風からの影響を防ぐ壁となる「磁気圏」を生み出すことができるため、この点に関しても惑星の質量は十分にあった方が良いということが分かります。
ちなみに恒星風と磁気圏がぶつかる際に発生するのが、いわゆる「オーロラ」と呼ばれる大気の発光現象です。
自転速度が遅すぎる惑星はNG
地球は常に時速約1700kmの速さで自転しており、これは新幹線の6倍以上の速さだと言われています。
「そんなに速いの!?」と驚くかもしれませんが、これだけの速さで自転しているからこそ地球内部のバランスが保たれ、大気を地球全体に奇跡的なバランスで行き渡らせることができています。
もしこの自転速度が遅い場合には大気が均等に行き渡らず、地域によっては極端に酸素が薄くなってしまう可能性があります。
また、地球は自転によって磁気圏を発生させているのですが、自転速度が遅いと磁気圏の力も弱まってしまい、大量の放射線や強い紫外線が惑星に降り注ぐのではないかとも言われています。
そのため、たとえ地球に環境が似ているように見える惑星でも自転速度が地球よりあまりにも遅い場合は、残念ながら居住には不向きということになります
四元素の存在
ここで言う四元素とは「酸素」「炭素」「水素」「窒素」の4つのことです。
これらは「生体元素」と呼ばれる元素群の中にも含まれており、大気、生物、地球を作る上では無くてはならない存在となっています。
これらが存在しない惑星では生物が生まれることはおろか、生物が存続するための環境を整えることがまずは難しいと言えるでしょう。
太陽の代わりになり得る恒星の条件
大きさ
天文学上では、太陽と地球のような「生命を育むための条件」を揃えている恒星と惑星が存在する領域は「ハビタブルゾーン」(別名に生存可能圏、ゴルディロックスゾーンなどもあり)と呼ばれています。
このハビタブルゾーンに長く留まれば留まるほど生命が誕生する可能性は高くなると考えられていますが、質量の大きな恒星の場合は寿命が短いため、長い間ハビタブルゾーンに留まることは難しいとされています。
ちなみに太陽の直径は1,392,700kmなので、代替となる恒星もこれと同等サイズ、もしくはやや小さめな方が理想的だと考えられています。
温度
現在分かっている限り、太陽の温度は約5700K(※)前後だとされています。
生命が誕生から発展を遂げるため、また液体状の水を存在させるために必要な温度は4000Kから7000K程度と言われているため、太陽のこの温度は生命の繁栄を助けるためには丁度良いということが分かります。
そのため地球外惑星に移住する場合は、太陽の代わりとなる恒星の温度が非常に重要になります。
※K(ケルビン)…絶対温度の単位。
周辺に大型惑星がないかどうか
もしハビタブルゾーン付近に大型惑星が存在していた場合には、その大型惑星による重力がハビタブルゾーンにまで影響を及ぼす可能性があります。
実際、太陽系惑星最大の質量を誇る木星の周辺には、強い重力の影響を受けたことで惑星になり損ねてしまったと考えられる小惑星帯があることが分かっています。
現在見つかっている居住可能な惑星の一部をチェック!
ティーガーン星b、c
「ティーガーン星b、c」は、地球からおひつじ座の方向に見て約12.5光年先に位置する恒星「ティーガーン星」の周りを公転する惑星の1つです。
太陽の誕生が約46億年前であるのに対し、ティーガーン星は誕生から80億年ほど経過している大変長寿な恒星だということが分かっています。
それだけ長い間存在していたにも関わらず、太陽に比べて重量も表面温度も低く認識が難しかったため、2003年になるまで発見されることはありませんでした。
そしてこのティーガーン星周辺を公転する「ティーガーン星b」と「ティーガーン星c」はサイズ、公転周期ともにどちらも地球に近く、特にティーガーン星bは非常に高い地球類似性を有していることが分かっています。
さらにはティーガーン星とティーガーン星b、c間にはハビタブルゾーンが存在していることも判明しており、「既に生命体が暮らしている、または暮らしていた可能性もある」として、現在も研究者達による研究が続けられています。
K2-18b
「K2-18b」は2015年に発見され、2016~2017年には大気中に水蒸気を有していることが発見された巨大地球型惑星(※)です。
実は水の存在を確認できた惑星自体は過去にもあったのですが、「惑星のサイズが大き過ぎる」「高温過ぎる」などの理由から、生命が誕生し快適に暮らすには不向きだとされてきました。
しかしK2-18bの場合、サイズは地球より2倍ほど大きいものの、液状の水が存在するための最適温度である摂氏0~40℃を保っていることが分かっています。
近年の地球外惑星居住に関する研究において、この発見は大変貴重かつ驚異的なものだということが分かりますね。
K2-18bは地球から約111光年も先にあるため、現時点では直接探査することは不可能となっています。
しかし今後10年の間に宇宙開発が進み、現在使用されているものより遥かに高性能な宇宙望遠鏡が誕生すれば、「K2-18bには生命は存在しているか、もしくは過去に存在していたか」という疑問を解明することも可能になると言われています。
もし生命の痕跡が確認された場合、それは人類史に残る大発見になると言っても過言ではないでしょう。
※巨大地球型惑星…地球と同様に岩石や金属を主成分とした、地球より数倍大きな質量を有する惑星。別名スーパーアース。
まとめ
地球以外の惑星に移住するためには、惑星だけではなく恒星に関しても様々な条件を満たす必要があるということが分かりましたね。
いつか私たちの子孫が太陽系から遠く離れた惑星に暮らしながら、太陽によく似た恒星の光を利用した発電システムを開発している可能性もあるのでしょうか?
そう考えると、想像もつかないほど遠い未来も少し楽しみになりますね。