2009年に「余剰電力買取制度」が策定されてから今日に至るまで、住宅用太陽光発電システムを取り巻く環境は年々改善され、その結果日本の多くの家庭へ普及しました。
今後、ますます再生可能エネルギーへの関心が高まっていくと見られていますが、
その中で太陽光発電はどういった立ち位置になり、またどのように発展していくのでしょうか。
気になる6つのポイントに絞り、太陽光発電における未来を予想していきましょう。
初期費用は上がる?下がる?
日本初の住宅用太陽光発電システムは、今から25年以上前の1993年に開発、販売されました。
しかし当時、一般的な家庭用容量である4kW分の設備を導入するためには、
なんと1500~2000万円もの費用が必要だと言われていました。
その高額さと、世間的にはまだまだ太陽光発電自体が未知の存在であったことから、
販売してからしばらくの間は、率先して導入する家庭はあまり多くはなかったそうです。
1993年はまだバブル崩壊から間もない時期ということを考えても、当然と言えば当然でしょう。
しかし、その後革新的に技術が向上したことで製造コストの減少が実現し、
それに比例するように設置費用の低価格化も進んでいきました。
2020年現在、4kW前後の設備を導入するために必要な費用は、およそ150~300万円だと言われています。
このまま順調に低価格化が進めば、2030年代の初期費用は100万円を切るのではないか
との声も上がっています。
「なるべく安く太陽光発電システムを導入したい!」とお考えの方は、今後の価格推移をしっかりチェックしておくと良いかもしれません。
”FIT”の次は”FIP”?
現在、日本における住宅用太陽光発電の売電は、FIT法こと固定価格買取制度
(一定の期間、一定の価格で国が買い取ることを約束する制度のこと)の上で成り立っています。
この制度は2012年に策定されて以降、変更されることはありませんでしたが、
2020年度に突入した今、内容の抜本的な見直しが現在進行形で行われています。
実はフランスやドイツなどの欧州では、数年前からFIT法ではなく「FIP法」という制度を導入しており、
日本でも早ければ2021年度からFIP法に移行する可能性があると一部で囁かれています。
FIP(フィップ)とは「フィード・イン・プレミアム」の略で、簡潔に説明すると、
「発電した電気を市場で販売した場合、特別割増金が上乗せされる制度」のことを指します。
FIT法とFIP法の大まかな違いは、以下のようになります。
★目的
FIT法…再生可能エネルギーの普及促進、システム設置者の初期費用回収をサポート
FIP法…再生可能エネルギーの自立促進、売電の完全自由競争化
★売電方法
FIT法…電力会社と直接行う
FIP法…各発電事業者が参加する電気卸市場にて行う
★売電額
FIT法…国が年度ごとに定めた価格から一定期間(10年)変動なし
FIP法…市場価格によって変動あり
※売電額に上乗せされる割増金は「固定型」、「上下限ありの変動型」、「上下限なしの変動型」の3パターンあり
上記の違いだけではなく、FIP法が策定された暁には、政府による再生可能エネルギーに関する補助金負担も軽減する可能性があると言われています。
それぞれを見比べてみると、FIP法はFIT法よりもさらに先を見据えた、より革新的な制度だということが分かりますね。
現時点では制度の移行はまだ確定事項ではなく、今後も議論が重ねられていく点ではありますが、国にとっても太陽光発電システムの運用者にとっても、よりよい環境で売買電できるようになることを期待したいですね。
今後は「余剰売電」より「全量自家消費」が主流に?
太陽光発電システムの初期費用が安くなることは喜ばしいですが、
実はその影響を受けたことにより、売電額も年々低価格化の一途を辿っています。
実際、FIT法(固定価格買取制度)が策定された2012年度の売電額が42円だったのに対し、2020年度の売電額は21円となっており、その差は歴然です(どちらも10kW未満の場合)。
さらに今後も初期費用の低価格化が進めば、売電額は最終的に11円ほどになると言われています。
とはいえ、この価格は年度ごとの太陽光発電システム相場に合わせて設定されており、
「導入時にかかったコストの回収が可能な額」としては妥当と言えます。
ただ、やはり「売電で副収入を得る」ということを最大の目的にして導入を決めてしまうと、「思っていたほど稼げない…」と落胆してしまうかもしれません。
そのため、近年では蓄電池を同時設置したりオール電化にすることによる、
「全量自家消費」を進めるメーカーや施工店が増えてきています。
使い切れなかった分の電力を蓄電池に貯めておけば、災害時や停電時に役立ちますし、
またオール電化にすれば、光熱費が電気代に一本化するため、ガス代を払う煩わしさから解放されます。
これらは売電に比べると、利益が目に見えて発生するようには思いにくいかもしれません。
しかし見方を変えれば、「安全性」や「省エネ」に対し長期的な投資を行っているとも言えます。
何より日本では年々、災害対策や環境配慮への意識が高まっているため、
メーカーや施工店が推進せずとも、全量自家消費を選択する世帯はおのずと増えていくと見られています。
「SDGs」と太陽光発電
「SDGs」(エスディージーズ)とは2015年に国連サミットにて採択された、
「2030年までの達成を目指す、持続可能な世界共通の目標」のことを指します。
このSDGsでは、貧困や人種差別などをなくすための17つの目標が掲げられており、
そのうちの4つは「再生可能エネルギーの普及促進」に関するものとなっています。
そしてSDGsの策定から今日に至るまで、当社を含む太陽光発電業界全般は、
この4つの目標を達成するべく多大な貢献を行ってきました。
以下、再エネ普及のための主な4つの目標に対する、太陽光発電の働きを見ていきましょう。
目標①「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」
太陽光発電は読んで字のごとく、限りなくクリーンかつ自然な太陽光のみをエネルギー源として、発電を行っています。
この点に関しては、今後も決しても揺らぐことはないと言えるでしょう。
目標②「産業と技術革新の基盤をつくろう」
日本は古くから「太陽光発電先進国」として、ソーラーパネルの性能及び製造効率の向上に尽力してきました。
長い年月の中で築き上げてきた産業基盤は、次世代、次々世代の技術者たちをも支える礎となるはずです。
目標③「つくる責任 つかう責任」
2章でも言及したように、近年では自家発電した電気の全量自家消費を推進する動きも多くなっています。
電気を「つくる」ところから「つかう」までの流れを知り、エネルギーの重要性を理解する人々が増えれば、さらなる再生可能エネルギーの普及に繋がることでしょう。
目標④「気候変動に具体的な対策を」
多くの電力会社が主な発電方法として用いている火力発電に比べ、太陽光発電はCO2の排出量が極めて少ないことが分かっています。
今後さらに住宅用太陽光発電システムが普及すれば、一人一人の力で地球温暖化を食い止めることも不可能ではないかもしれません。
まとめ
地球環境の変化や産業技術の革新とともに、太陽光発電に関する課題も変化していきます。
当社は今後も太陽光発電業界の刷新の一端を担い、誰もがより安心かつ快適に運用できるシステムを普及できるよう、企業努力を続けていきたいと思います。