紙やプラスチックに大変身!廃棄米を減らすためのさまざまな取り組み

SDGs

SDGsの17の目標のうち2番目には、「飢餓をゼロに」という目標が掲げられています。
この目標の背景には、世界人口70億人のうち約8億人が空腹に苦しんでいる現状があります。
それにもかからず、世界では今先進国を中心に、大量の食品ロスが問題となっています。

農林水産省の調査によると、世界では年間約13億トンの食料が廃棄されており、そのうち日本の廃棄量は約62万トンとなっています。
これを国民一人あたりに換算すると、毎日お茶碗一杯分の食料を一人一人が捨てていることになります。

今回は、日本で大量の廃棄米が出てしまう原因と、廃棄米を減らすために近年行われているさまざまな取り組みについて解説していきます。

日本で大量の廃棄米が出る原因

食の多様化と時短ブーム

まず、大量の米が廃棄される背景には、ここ数十年間における日本人の米離れがあります。
和食ブームや一汁一菜ブームなどは度々起こるものの、米の消費量自体は1962年度のピーク以降、減少の一途をたどっています。
その大きな理由は、「食の多様化」と「時短ブーム」にあります。

もし米を一から炊こうとすると、

➀米を洗う
②30分~1時間米に水を吸い込ませる
③炊飯器で小一時間炊く
④30程度分蒸らす

といったように最低でも2時間程度かかり、無洗米や早炊き機能を使ったとしても30分~1時間はかかります。
女性の社会進出も進み多忙な人が増えた昨今では、お米よりも袋から出してそのまま食べられるパンや、15分程度で茹で上がるうどんやパスタを好んで食べる人が増えています。
特に単身世帯の場合、「一合だけ炊くのはめんどくさい」「まとめて炊いて冷凍できるほど冷蔵庫が大きくない」などの理由から、炊飯器自体家に置かない人も増えているようです。

ちなみにこの傾向は、若者世代ほど顕著になっています。
2020年に農林水産省が18~60歳以上を対象に行った「米の消費動向に関する調査」によると、男性の18~29歳、男女ともに30~39歳の多くが、「(米の消費量が減ったのは)炊飯する時間がなくなったから・準備に手間がかかるから」だと回答しています。

糖質制限ブームによる「米=太る」という認識

ここ数年ですっかりダイエット方法の定番となった「糖質制限ダイエット」。
文字通り糖質の摂取を控えるダイエットとなっており、効果が出やすいと話題です。

糖質は米や小麦などの炭水化物や、ミカンやりんごなどの果物など多くの食べ物に含まれていますが、糖質制限にトライする多くの人は、まずは糖質を多く含んでいる炭水化物から控えるようになります。
中でも米は「お腹に溜まるから太りやすそう」という理由から、ダイエット中の人には避けられがちです。

しかし、過度な糖質制限は必要な筋肉量や骨量を低下させるため、一時的には痩せても著しく体調を崩してしまうか、かえって太りやすくなってしまう可能性があります。
また、軽い食べ口のパンやツルツルと食べられるパスタなどは、一見米より太りにくそうに感じますが、実はパンやパスタに使われている小麦に含まれるグルテンには食欲増進効果があり、米よりも肥満の原因になりやすいと言われています。
さらにグルテンを過剰摂取した場合、腸内環境の悪化による便秘を引き起こす可能性があります。

一方、米には糖質だけでなく食物繊維も含まれており、腸内環境を整えて快便を促す効果があります。
他にも腹持ちが良い、体脂肪の蓄積を抑制するなど、ダイエットに効果的な要素がたくさん含まれています。
そのため糖質制限を行う際は米を完全に断つのではなく、適量をヘルシーなおかずとともに食べた方が良いのですが、世間の「米=糖質=太る」という誤った認識は中々拭えず、米の消費量減少につながっています。

飲食店での「ライス残し」

近年では、レストランでライスだけ残したり、回転寿司屋でネタだけ食べてシャリだけ残したりといった「ライス残し」をする人が増えています。
これも前述の糖質制限ブームの影響によるものだと考えられており、一時はメディアにも度々取り上げられるほどの社会問題となりました。

もちろん、「思ったよりもお腹いっぱいになってしまい食べきれなかった」という場合は仕方ありませんが、最初から残すつもりでライス付きのメニューを頼んだり、お寿司屋さんに行ったりするのは、お店にも米を作っている方にも失礼だと言えるでしょう。

その他の廃棄理由

ここまで紹介した以外にも、廃棄米が出る原因にはさまざまなものがあります。
あるスーパーでは、精米してから1ヶ月経ったものは商品棚から撤去し、廃棄しているそうです。
また、スーパーやお惣菜屋に並ぶお弁当やおにぎり用の米飯を加工する会社では、一旦製造ラインを回すと、自動的に10キロ以上の米飯が炊けてしまうため、1キロだけ必要な場合は残りの9キロを廃棄しているという事例もあります。

このような原因がいくつも重なって、大量の廃棄米が出てしまう日本の現状を生み出しているのです。

廃棄米を減らすための取り組み

フードバンクに寄付

フードバンクとは、包装が破れるなどして市場には流通できないものの品質的には全く問題ない食品を、企業から受け取り生活困窮者などに配給する活動およびその活動を行う団体のことです。
米に関しては、スーパーへの輸送途中で袋が少し破れてしまったものなどが寄付されています。
袋全体が破れて中身がこぼれたりしたわけではない限り、セロテープやガムテープで塞げば問題なく使うことができるそうです。
また、前述した「製造ラインで大量に炊かれてしまった米」も、近年ではフードバンクに寄付されることが増えています。

プラスチックに再生

新潟県南魚沼市に拠点を置く「株式会社バイオマスレジン」は、食用に適さない古米や米菓メーカーで発生する破砕米などの廃棄米を「資源」として使い、バイオプラスチックの「ライスレジン」を作り出す事業を行っています。
ライスレジンは100%国産米を使用しているため、海外情勢に影響されない安定的な供給が可能となっています。
また小ロットでの対応が可能となっているため、余剰分の出ない効率的な生産を実現しています。

何よりライスレジンを使って作られたプラスチック製品は、石油系のプラスチック製品に比べて圧倒的に環境負荷が低いというエコフレンドリーな性質を持っています。
加えて製造コストや強度も石油系プラスチック製品と変わらないため、近年ではカトラリー、歯ブラシ、レジ袋など、さまざまな製品の原料にライスレジンが使われています。
廃棄米を有効活用し、環境負荷低減にも貢献するライスレジンは、まさに一石二鳥を実現する存在だと言えるでしょう。

紙に再生

奈良県奈良市に拠点を置く「株式会社ペーパル」は、2021年2月に廃棄米を活用した紙素材「kome-kami(コメカミ)」を開発し、2021年4月よりkome-kamiを使ったノートや名刺などのオンライン販売を開始しました。
これらの売上のうち1%は、フードバンクに寄付されることになっています。

kome-kamiには、企業や自治体が災害用に備蓄していたものの、古くなり廃棄対象となってしまった米などが使用されています。
紙そのものが本来持つ風合いに米の質感が加わることで、ラフでありつつもしっとりとした独特な質感の紙となっています。

レストランによる「ライス残し」対策

前述した「レストランのライス残し問題」を解決するために、近年ではお店側もさまざまな対策を行っています。
たとえば人気チェーン店のCoCo壱番屋、びっくりドンキー、大戸屋などでは、「ご飯を小盛りにすると値引き適用システム」が導入されています。
加えて白米ではなく雑穀米を選べるなど、通常メニューの他に糖質オフメニューも用意しているお店もあります。
また回転寿司チェーンの「くら寿司」では、一部メニューを除いて通常のシャリの半分である「シャリハーフ」を選べるシステムが導入されています。

まとめ

近年、さまざまな企業や団体によって行われている廃棄米対策ですが、一番大切なのは、私たち消費者がお米の貴重さ、大切さをしっかり感じながら、なるべく無駄なく食べることではないでしょうか。
毎日の食事に対する意識を少し変えるだけでも、食品ロス問題の解決に貢献できるかもしれません。

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