「温泉大国・日本」における地熱(温泉)発電普及の課題とは?

エネルギー(再エネ・化石燃料etc.)

箱根湯本温泉、草津温泉、銀山温泉…など全国各地に有名な温泉地がある日本は、
世界的に見ても「温泉大国」と言って過言ではありません。
実際、日本は温泉の源となる地熱を世界で3番目に多く保有している国と言われています。

そのため時代とともに地熱発電所の開発及び設置も進みつつあるのですが、その発電量は全エネルギーの国内総発電量の中で見ても僅か2%と、まだまだ普及しているとは言えないのが現状です。

日本において地熱発電が普及していない理由とは、一体何なのでしょうか。
今回はその点を探りつつ、「地熱発電の新しい可能性」として近年注目を集め始めている「バイナリー発電」についても掘り下げていきたいと思います。

日本で地熱発電がイマイチ広まらない理由

莫大な開発コストがかかる

地熱発電所を建設するためには、まず初めに地質調査を実施する必要があります。
具体的には地盤の強度や地熱兆候(地下活動の存在を表す兆候)などを入念に調べる必要があり、そのためには深い掘削をしなければならず、この段階で既に相当な額の調査費用が発生します。

次にその土地に合った設備を技術者たちが熟考、開発した上で、いよいよ着工という流れになります。
この一連の作業を行うためには莫大な時間を費やすことになり、またコストも最大で総額なんと200億円近くかかるケースもあるとされています。
このような時間面やコスト面の課題が、地熱発電が中々普及しない理由の1つだとされています。

国が積極的に推進活動を行っていなかった

現在日本において再生可能エネルギーの中で最も普及しているのは太陽光発電システムとなっており、次いで大規模水力発電システムとなっています。
太陽光発電は企業向けの「産業用」のみならず一般家庭向けの「住宅用」があり設置バリエーションが多い点、そして水力発電は約120年前より日本では実用化されていた身近な存在である点が、国としても普及を進めやすかった理由だとされています。

一方で、地熱発電は太陽光発電ほど設置バリエーションが多くなく、また水力発電に比べると開発の余地がまだ残っていたため、国としても長らく積極的な推進活動に踏み出さなかったのではと言われています。

建設できる場所が限られている

地熱発電所の建設に適した土地だと判断するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
その中でも特に重要な点は、 以下になります。

・火山に近い
・海抜が低い
・凹凸が少なく平坦

上記のような土地は地熱資源に恵まれている可能性が高いのですが、日本の場合そういった土地は既に自然公園になっているか、または既に温泉施設が建設されているケースが大半となっています。
そして何より自然公園内に発電所を建設することは違法となっているため、地熱発電所は建設数を増やすのが中々難しいまま今日に至っています。

地域産業のバランスを崩すおそれがある

前述したように自然公園内の地熱発電所建設が厳しいとなれば、必然的に温泉施設付近に建設することになるのですが、温泉関係者によっては「地熱発電のせいで温泉の質や温度に影響が出るのではないか」という懸念から、地熱発電の建設に踏み切らないケースがあることも事実です。
そういった場合、建設者側と温泉関係者との意見のすり合わせや発電所と地域環境とのバランス調整を入念に行う必要が生じます。
双方の主張によっては建設が実現するまでに長い時間を要してしまう場合があるため、この点もまた普及が広まらない理由だと言えるしょう。

地熱発電の可能性を広げた「バイナリー発電」とは

前章で紹介した通り、コスト、土地、地域産業との兼ね合いなどの複合的な理由から長らく普及率が足踏み状態だった地熱発電ですが、近年では「バイナリー発電」によってその現状が壊されるのではないかという期待が高まっています。

バイナリー発電とは、地熱を含んだ蒸気を直接利用してタービンを回す従来の地熱発電
(以下、フラッシュ発電)とは違い、水よりも沸点の低いアンモニア、または代替フロンなどといった媒体を用いて発生させた蒸気でタービンを回す発電方法です。
フラッシュ発電の場合
は150℃以上の高温かつ高圧な蒸気もしくは温水が必要になりますが、バイナリー発電の場合は前述したように沸点の低い媒体を用いるため、たとえ熱源が150℃以下だったとしても発電を行える点が特徴となっています。

バイナリー発電のメリット

低コストかつ短期間で開発が進められる

低沸点媒体で発電が行えるバイナリー発電であればフラッシュ発電ほどの入念な地質調査(深い掘削など)を行う必要が無いため、調査費用も期間もフラッシュ発電に比べて大幅に削減することが可能となります。

温泉地との共存共栄が可能

1-4.でも触れましたが、温泉地付近に地熱発電所を建設することを快く思わない温泉関係者は少なくありません。
事実、フラッシュ発電の場合は高温高圧な蒸気を多用することで温泉資源を枯渇させてしまう可能性もゼロはありませんが、バイナリー発電の場合は最低限の地熱エネルギーのみを利用するため、温泉資源を奪う心配はほぼないと言えます。

また、既に温泉施設で使用したお湯を再利用して発電に役立てることもできます。
さらに源泉の温度が高くそのまま温泉に利用できない場合、バイナリー発電を利用してお湯を入浴に適した温度まで下げることも可能です。

バイナリー発電は温泉の存在を脅かさないだけでなく、地熱を最大限活かすことのできる優れた発電方式だということが分かりますね。

発電効率が高い

バイナリー発電は天候や日照に左右されることがないため、一日のうちほとんどの時間安定した発電効率を保つことができます。
規模にもよって若干異なりますが、その発電量はなんと太陽光発電の約5~7倍にもなると言われています。

バイナリー発電のデメリット

規制事項が多い?

日本の特性を活かした新しいエネルギーとして期待が高まりつつあったバイナリー発電ですが、少し前までは投資面や点検面において複雑かつ厳しい規制が多く、それゆえに事業者への負担が大きい点がネックだとされていました。
しかし2014年5月にはそれらの規制が緩和されたため、旅館や温泉施設などを運営する事業者たちが少ない負担でバイナリー発電事業に乗り出せるようになりました。
こうして時代の追い風を受けたバイナリー発電は、着実に発電所の建設数を増やし続けています。

こまめなメンテナンスが必要

美肌効果に肩こり腰痛解消など、温泉には私たち人間にとって嬉しい様々な成分が含まれています。
しかしこれらの成分は、バイナリー発電システムにとっては厄介な存在です。
万が一「湯の花」と呼ばれる温泉成分の沈殿物が配管内に残ってしまうと、錆びや腐食を起こして発電効率が低下し、最悪の場合故障を発生させてしまう可能性があります。
そのためバイナリー発電所を建設した場合は、こまめなメンテナンス及び配管内の洗浄は必要不可欠になると言えるでしょう。

まとめ

国内での再生可能エネルギー普及の動きは年々活発化しているとは言え、2017年度での日本におけるエネルギー自給率はわずか9.6%と決して高いとは言えないのが現状です。
しかし、日本が誇る資源である地熱を用いた発電システムが今後より多く、そしてより広域に普及すれば、日本のエネルギー自給率は飛躍的に向上するかもしれません。

大規模な地熱発電所の建設数を増やすのは現実問題中々難しいですが、バイナリー発電を全国各地の温泉施設が少しずつでも導入すれば、現状は確かに変わっていくと言えるでしょう。
いずれにせよ、バイナリー発電事業を今以上に多くの事業者が始めやすくなることを期待したいですね。

当社は太陽光発電システムを主に取り扱っている会社ではありますが、太陽光に限らず様々な再生可能エネルギーについての知識を深めていくことは、非常に大切なことだと常々感じています。

その思いを忘れることなく、今後も「エネルギー自給率の高い省エネ社会を実現させるためにはどうすべきか」という点について考え続けていきたいと思います。

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