時はEV戦国時代!熾烈を極める販売競争を自動車大国日本は勝ち残れるのか

グローバル

脱炭素社会の実現に向け、世界では今自動車のEV化が本格的に進んでいます。
中でも中国やヨーロッパの成長ぶりは目覚ましく、EV市場はもはや「戦国時代」に突入しつつあると言っても過言ではありません。
さらに自動車メーカーはもちろん、Appleをはじめとした異業種参入の動きも出てくるなど、自動車産業全体が大きな転換期を迎えています。

一方、ハイブリッド車(HV)を中期的に電動車の中心に据える日本勢はEVでは遅れをとっており、このままでは競争から脱落するのではないかとの懸念が広がっていました。
中でもトップシェアを誇るトヨタに対しては、「EVシフト戦略に対して慎重派」という見方がなされてきました。

しかしそのトヨタも先日、2030年のEV世界販売目標を350万台に引き上げることを発表しています。
一体世界のEV競争は、今後どのように展開していくのでしょうか。

今回は、世界が取り組むEV事業の現状や、日本の動きについて解説していきます。

世界各国におけるEVシフトの現状

アメリカ

現在アメリカでは、クリーンエネルギー関連企業の最大手であるテスラ社製のEVがほとんどのシェア数を占めています。

そんな中で今新たに注目を集めているEVは、フォード社が来年発売を予定している「F150ライトニング」という、アメリカで最も売れているピックアップトラックをEVにしたモデルです。
高性能のバッテリーを搭載することで、一回の充電で走行できる距離をおよそ480キロメートルとし、力強い走行性能を実現しています。
価格は日本円でおよそ440万円からとなっており、現時点で既に15万台以上の予約が入っているそうです。

こうした動きは他のメーカーにも広がっており、大手メーカーのGM(ゼネラル・モーターズ)も近々ピックアップトラックのEVモデルを発売することを計画しています。
さらにはスタートアップ企業も参入し、各社が続々とピックアップトラックの新しい姿を打ち出しています。

アメリカでピックアップトラックのEV化が進む背景には、EVシフトの遅れがあります。
2020年に販売された新車のうちEVが占める割合は、EUが10.5%、中国が5%であるのに対し、アメリカではおよそ2%となっていました。
この結果に危機感を募らせたバイデン大統領は2021年8月、EVをはじめとした走行中に排気ガスを出さないゼロエミッション車が新車販売全体に占める割合を、2030年には50%に引き上げる大統領令に署名をしました。

これを受けてGMやフォードは、2030年までに年間販売台数のうち40%から50%をゼロエミッション車に切り替える目標を示しました。
この目標はアメリカにおける主力車をEV化しないことには達成できないため、各社はこぞってピックアップトラックのEV化に力を入れ始めたというわけです。

とはいえ、課題が全て払拭されたわけではありません。
最も大きな課題は、国土の広さに対してEV充電スポットがまだまだ少ないことです。
これに対しバイデン政権は、全米に50万か所の充電スポットを設置する方針を示しています。

参考URL:NHK「アメリカ EVシフトは進むのか 起爆剤はこんな車!?(2021年12月26日)

中国

中国では自家用車のEV化はそれほど進んでいないものの、タクシーや配車サービスに使われる自動車は今やほとんどがEVとなっています。
街中を走る中国ブランドのEVにはさまざまな車種がありますが、中でも注目を集めているのが昨年よりウーリン社が販売している4人乗りEVの「宏光(ホンガン)MINI」です。
現在のEV平均価格が300~400万円台なのに対し、このモデルは日本円で約50万円という圧倒的な低価格を実現しています。

ウーリン社は、都市走行に必要な最低限の機能や装備以外を削ぎ落し、通常のEVよりも低コストかつ低スペックのバッテリーを採用したことを低価格化実現の理由に挙げています。
長距離走行には向いていないものの、近場の買い物などには十分なスペックを備えています。
宏光MINIの登場が市場に与えたインパクトは大きく、中国では月に3万台ほど売れるスマッシュヒットとなっています。

ウーリン社に限らず、現在多くの中国EVメーカーが続々と低価格EVを発表しており、その波は日本にも影響を与えています。
2021年12月22日には、京都の路線バスで中国のEVメーカーBYD社製の電気バスが4台運行を開始したとのニュースが報じられました。

中国製の電気バスが採用された理由は、やはり「圧倒的な安さと性能の良さ」です。
今回の場合、国産の電気バスが約7000万円なのに対し、BYD製は約1950万円となっていました。
BYDは今後10年以内に、4000台の電気バスを日本で販売する計画を発表しています。

このように、中国のEV戦略は日本の自動車産業にとってかなりの脅威となりつつありますが、一方で「安さの裏に潜む弱点」を指摘する声も挙がっています。
その一つは、政府による過剰なまでの助成金です。
中国政府はEVを国の基幹産業にするべくメーカーに莫大な資金を投下していますが、激安EVが増えればその分財政が圧迫されるため、いずれは事業として立ち行かなくなるのではないかと懸念されています。

その他にも、激安EVの安全面に対する不安などの声も挙がっていますが、いずれにせよ日本は中国EV産業の動向には今後、特に注視すべきだと言えるでしょう。

参考URL:ダイヤモンド・オンライン「中国製50万円EVが「日本の脅威になる」は本当か?安さの裏にある“2つの弱点”」(2021年12月26日)
参考URL:JBpress「京都の路線バスに中国製EV、圧倒的低価格で日本市場に殴り込み」(2021年12月26日)

ヨーロッパ

早い段階からEV普及に積極的な姿勢を見せていたヨーロッパは、世界で最も厳しい燃費(CO2)規制を掲げていると言っても過言ではありません。

欧州委員会(EC)は、かねてより2030年までにガソリン車とディーゼル車の販売を実質禁止とする目標を掲げていましたが、2021年7月14日、自動車によるCO2排出量を2035年までに100%削減するという厳しい目標を新たに設定しました。
これはガソリン車とディーゼル車だけでなく、ハイブリッド車(HEV)も事実上販売禁止になることを意味しています。

厳しい規制によってEVシフトが加速する中、ヨーロッパではドイツのメーカーBMWが存在感を発揮しています。
2019年のEV販売台数では、同じくドイツのメーカーであるフォルクスワーゲン(VW)を抑え、テスラや日産などに続いて第5位となっています。

VWやBMWなどの大手に限らず、近年では多くの欧州車メーカーが中国を重要な生産拠点として捉えています。
欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、2019年にヨーロッパで生産された乗用車の輸出先として中国が占める割合は金額ベースで17.4%となっており、アメリカの30.2%に次いで第2位であることが分かっています。
VWやBMWは、EVの生産拡大に向けて中国のEVメーカーに投資するなど、巨大な中国市場の獲得に向けた大胆な動きを見せています。

参考URL:東洋経済「2035年、欧州で「ハイブリッド禁止」となる意味」(2021年12月26日)

自動車大国・日本のEV戦略

EVシフトに向けた活発な動きが見られる世界市場の中で、HVや軽自動車といった独自の低燃費技術を発展させてきた日本の自動車メーカーは、EVに対し長らく慎重な姿勢を見せていました。
中にはホンダや日産のようにEVシフトに積極的なメーカーもありましたが、業界最大手であるトヨタは一貫してその潮流から距離を置いていました。

ところが2021年12月14日、トヨタはEV戦略に関する説明会において、「2030年のEV販売台数を350万台にする」という大胆な計画を打ち出し、EV業界に衝撃が走りました。
トヨタが元々掲げていた目標は、「2030年までにEVとFCV(燃料電池車)の販売台数を200万台にする」というものだったので、350万台という数字がいかに大幅な引き上げかが分かります。

この説明会では、EV専用ブランド「bZシリーズ」の4車種、さらにトヨタの高級車ブランド「レクサス」のEVモデルなど、合わせて15パターンのEVが初公開されました。
さらにはコンパクトSUVからセダン、スポーツカーまで多種多様なコンセプトのラインナップを揃え、2030年までに30パターンのEVを展開する方針を掲げています。

ちなみに2020年に各国のメーカーが販売したEVの台数は、全て合わせて約220万台です。
つまり今回トヨタが掲げた350万台という目標は、熾烈さを極めるEVの世界市場においてトップクラスに食い込むことを意味します。
そのために、トヨタはEV事業に総額4兆円を投じる意気込みを示しています。

ただ、トヨタの豊田社長はEVだけに注力するのではなく、各国のニーズに合わせ、HVやFCVなども含むフルラインナップで電動車を展開する従来の戦略を変える気はないとしています。

参考URL:テレ東プラス「トヨタ EV戦略に”本腰” 世界販売 「2030年に350万台」」(2021年12月26日)

まとめ

世界各国のメーカーが参入するEV市場において日本はこのまま遅れを取り続けるのかと思いきや、ここに来てトヨタの大胆な計画が発表されるなど、EV競争は怒涛の展開を迎えています。
各国のメーカーの動向からは、今後も目が離せませんね。

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