今年で本土復帰50周年!沖縄におけるエネルギー事業の「これまで」と「これから」

エネルギー(再エネ・化石燃料etc.)

2022年、沖縄は1972年に施政権がアメリカから日本へ返還されてから、50周年を迎えました。
1970年代、終戦後もなお米軍統治下にあった沖縄と、既に高度経済成長期に突入していた本土との間には大きな経済格差がありました。
その差を埋めるかのごとく、本土復帰後の沖縄では産業振興やインフラ整備が急速に進みました。

そして経済発展はエネルギー分野にも影響し、現在沖縄では地理や環境を考慮した独自の電力供給システムが確立しています。
今回は沖縄のエネルギー分野におけるこれまでの歩みや、今後の展望などについて解説していきます。

沖縄の電力源はほぼ「石炭火力」

沖縄の電源構成では、ほとんどの割合を石炭火力発電が占めています。
沖縄電力によると、地理的・地形的に水力や原子力の開発が難しく、エネルギー資源を化石燃料に頼らざるを得なかったことが理由として挙げられています。

沖縄は160の島から構成されており、そのうち49の島は人々が生活している「有人島」となっています。
有人島の多くには火力発電所が設置されており、沖縄の島々ではそれぞれ自立した電力供給体制が確立しています。
その特徴的な体制ゆえに、沖縄では電力供給不足になることは滅多にありません。

しかし、石炭や石油などの化石燃料を用いた火力発電はCO2を多く排出するため、当然ながら環境には良くありません。
特に世界的に環境意識が高まっている近年では、「唯一無二の美しい自然を有する沖縄に化石燃料由来の発電は似合わない」といった声も多く挙がっています。

このような流れを踏まえ、沖縄では他の化石燃料よりも比較的環境負荷の低いLNG(液化天然ガス)を採用する火力発電所が徐々に増えています。
とりわけ有名なのは、2012年から稼働開始している中頭郡中城村(なかがみぐん・なかぐすくそん)の「吉の浦火力発電所」です。
吉の浦火力発電所には、LNGを使った「コンバインドサイクル方式」が採用されています。
ガスの燃焼を利用してガスタービンと蒸気タービンの両方を回して発電するこの方法は、非常に発電効率が高く環境負荷も少ない点が特徴です。

このような特性を持つことから、沖縄電力は吉の浦火力発電所を「温暖化対策の要の発電所」と位置づけています。

沖縄の再エネ開発

太陽光発電

一年中眩しい日差しが照り付けるイメージの強い沖縄は、一見太陽光発電にうってつけな場所のように思われがちです。 しかし沖縄はその地理上、曇りや雨の日が多く、また台風にも見舞われやすいことから、年間を通した日照時間は全国的に見ても実は短いことが分かっています。
また海に囲まれていて塩害の危険性も高いため、沖縄で太陽光発電を行うのはややハードルが高いのが実状です。

とはいえ、太陽光発電事業が全く行われていないわけではありません。
たとえば、2012年から稼働している名護市の「安部メガソーラー」は、曇天時でも発電効率が低下しにくい「CIGS型薄膜太陽電池」と、高気温でも高い発電力を発揮できる「アモルファスシリコン+多結晶シリコン多接合型太陽電池」という2種類のパネルを採用することで、沖縄の気候的な弱点をカバーしています。
総出力1,000kWを有する安部メガソーラーの年間想定発電量は、一般家庭約300世帯分の電気使用量に相当すると考えられています。

その他、2015年にはうるま市に沖縄県最大の12Wを有する「うるまメガソーラー」が、2018年には国頭郡今帰仁村(くにがみぐん・なきじんそん)に沖縄本島初の「蓄電池付きメガソーラー」が誕生しています。
なお、これらのメガソーラーには台風・塩害対策として、基礎や架台に他の地域とは異なる配合を施した鋼管が採用されています。
さまざまな工夫によって地理的、気候的な弱点を乗り越えながら、沖縄の太陽光発電事業は年々拡がりを見せています。

風力発電

沖縄には20年以上前から風力発電設備が設置されており、その多くは本島ではなく離島にあります。
本島に比べて需要が少なく、それでいて燃料費や輸送費といったコストがかさむ離島においては、発電コストの少ない風力発電が重宝されています。
一方で、太陽光発電と同様に風力発電もまた、沖縄特有の気候現象と戦っています。

その気候現象とは、まさしく台風です。
沖縄周辺はちょうど台風が通過する地点であることから、毎年のように台風の直撃を受けています。
その度に風力発電設備も損傷や倒壊などの被害を受け、修繕には莫大な費用と時間がかかりました。

このような事態を繰り返すうちに、関係者の間では「沖縄では風力発電はもう難しいのではないか」という空気が生まれつつありました。
一時は廃止にまで追い込まれかけた沖縄の風力発電事業でしたが、そんな中、一筋の光明となる技術が海外より持ち込まれることになります。
「可倒式風力発電」と呼ばれるこの技術は、台風などの強風が迫った際、風車を地上に倒して強風を避けるといったものです。

2009年、沖縄電力は日本最南端にある波照間島(はてるまじま)に最初の可倒式風力発電設備を2基導入しました。
さらに2011年には南大東島(みなみだいとうじま)に2基、2014年には粟国島(あぐにじま)に1基導入し、着実に可倒式風力発電を拡大しています。
なお2019年には、沖縄の台風対策ノウハウを詰め込んだ可倒式風力発電設備が、トンガ王国に納入されるに至っています。

現在開発が進む「沖縄ならではの発電技術」

海洋温度差発電

海洋温度差発電は、太陽の熱エネルギーによって温められた「表面海水」と、その下の冷たい「深層海水」との温度差を利用して電力を生むクリーンな発電方法です。
現在の技術では、表層海水と深層海水との温度差が年間平均20℃以上ある亜熱帯、熱帯地域が海洋温度差発電に適した場所とされています。

この条件にまさに適している沖縄県久米島町には、日本唯一の海洋温度差発電実証試験設備が設置されています。
県を挙げた事業として2012年に建設されて以降、施設では発電出力を上げる実証事件の他に、海洋深層水を活用した空調管理や海ぶどうの養殖など、産業振興への取り組みも進められています。

台風発電

可倒式風力発電とは別に、近年沖縄では「台風そのものを発電に利用してしまおう!」という動きが進んでいます。 開発に取り組んでいるのは、東京都墨田区に拠点を置くベンチャー企業の「チャレナジー」です。
チャレナジーが実証を進めている「マグナス風力」には一般的な風車に付いているプロペラではなく、風に対して垂直に回転する円柱が組み合わせられています。
この特殊な構造によって、国内を通過する大抵の台風は制御できるようになっています。

チャレナジーはまず2016年に沖縄県南城市で最大出力1kWの実証機を稼働させ、2018年には石垣島に最大出力10kWの実証機を設置し、約2年間にわたり台風時のデータ収集などに取り組みました。
とはいえ、設置後は中々大型台風が沖縄に接近する機会が無く、記録は2018年10月の台風25号時の秒速24mで止まっていました。

この記録が塗り替えられたのは、2020年8月のことです。
この年、石垣島に台風が接近し暴風域に入る中、チャレナジーの実証機は秒速30.4mの強風下でも発電を成し遂げる新記録を達成しました。
チャレナジーは今後、量産に向けてコストダウンなどの改良に取り組みつつ、海外への実証機設置も進めていくとされています。

サトウキビを使ったバイオマス発電

サトウキビの名産地である沖縄では、「バガス」と呼ばれるサトウキビの搾りかすを使ったバイオマス発電事業の導入も進んでいます。
沖縄に拠点を置く日本分蜜糖工業会が運営するバイオマス発電所では、製糖工場でサトウキビを加工する際に発生したバガスを利用した発電が行われています。
2017年には、味の素がこの発電所の発電実績をグリーン電力調書として購入し、味の素グループの国内営業所すべてのグリーン電力化に役立てています。

まとめ

独自の歴史を持つ沖縄では、エネルギー史もまた独自の軌跡を辿っていることが分かりましたね。
沖縄が次に歩む新しい50年が、エネルギー分野に限らず実りのある50年になることを願います。

参考URL:沖縄電力の石炭火力について(沖縄電力)
参考URL:可倒式風力を設置せよ(沖縄電力)
参考URL:目指せ、台風発電 ベンチャーのチャレナジー沖縄・石垣島で量産化に向け実証進む(電波新聞)
参考URL:海洋温度差発電実証試験設備(沖縄電力)
参考URL:味の素が使用電力を100%バイオマスに、サトウキビの搾りカスで発電(スマートジャパン)

タイトルとURLをコピーしました