沖縄のサンゴ礁を脅かす赤土問題とは?そのメカニズムと対策を解説

環境問題

皆さんはサンゴ礁を見たことがありますが?
日本では主に沖縄に分布しており、その神秘的な美しさには地元住民、観光客問わず
多くの人々が魅了されています。
また美しい観光資源としてだけではなく、サンゴ礁の周辺には多くの海洋生物が生息しているため、生物多様性を守るための重要な砦としても機能しています。

そんなサンゴ礁ですが、近年では沖縄に限らず世界各地で絶滅の危機に追いやられています。
その原因は地球温暖化や自然現象など様々ですが、中でも最も深刻視されているのが「赤土流出問題」です。
今回は、サンゴ礁の存在を脅かす赤土流出が発生する理由や、赤土流出を防ぐために沖縄で現在行われている対策などについて詳しく解説していきます。

沖縄で赤土問題が起こりやすい理由

沖縄で深刻な赤土問題が多発する背景には、沖縄特有の「地質」があります。
まず、基本的に土壌の表層部分は「黒土」と「赤土」という2種類の土で構成されています。
微生物が落ち葉などを分解している過程状態が黒土(腐植層とも言う)、分解が全て終わって下に堆積していく土が赤土と呼ばれます。

この「黒土の下に赤土が堆積する」というメカニズムは本土も同様ですが、沖縄の土壌と本土には大きく異なる点があります。
それは、沖縄の土壌の方が黒土の層が薄めとなっていることです。
沖縄は本土よりも気候が温暖かつ湿度が高いため、黒土の分解スピードも本土より早くなっており、そのため黒土は常に薄く、地中深くに堆積するはずの赤土層が地表面に露出しやすくなると考えられています。

また、粘度の高い黒土に比べて赤土はパサパサしているため、地表から流れ出やすいという特徴もあります。
もし雨が降っても、本土であれば高粘度の黒土が膜となり赤土を抑え込んでくれるのですが、前述したように沖縄では黒土層が薄いため、赤土の流出を抑えるには頼りないと言えます。

さらに沖縄は豪雨や台風が多く、また地形の傾斜も激しいことから、土壌流出を防げないまま赤土流出が多発してしまうと考えられています。

近年、赤土の流出が増えたのはナゼ?

前述したように、沖縄の赤土流出の一因は沖縄特有の自然環境にあります。
とはいえ、基本的に森林や山地などの自然豊かな場所では木々の根や植物が土壌を抑える役目を担っているため、多量の赤土が流出することはほぼないと言えます。
しかし、それらのいわゆる「自然のストッパー」を激減させたのが、他でもない人間の活動です。

1972年の本土復帰以降、沖縄では土地の開墾や宅地開発が急速に進められ、かつて森林や山地だった多くの場所は失われました。
結果的に農地や住宅は増えましたが、それと引き換えに赤土流出が急増し、近年社会問題として大々的に取り上げられるようになっています。
現在では、耕作時期でない畑、工事現場、米軍基地などからも赤土流出が発生していることが分かっています。

つまり、「元々沖縄は赤土流出が起こりやすい環境を有していたが、そこに人間の活動が加わったことでさらなる流出を招いた」ということになります。

赤土流出でサンゴ礁が絶滅の危機に

沖縄の沿岸には、サンゴ礁に囲まれた浅く穏やかなプールのような「イノー(礁地)」という場所があります。
イノーには小魚や貝が豊富に生息しているため、古くから「海の畑」として大切にされてきました。
しかし、土壌から流出した赤土が用水路などを伝ってイノーにまで流入してしまうと、水の循環が少ないイノーでは赤土が滞留してしまうことがあります。

これにより何が起こるかというと、まず赤土によって海中~海底に届くはずの日光が遮られてしまいます。
サンゴは光合成によって体内に必要な栄養素を生み出しているため、海中が暗くなるとすぐに死の前段階である「白化現象」が起こり、まもなく死んでしまいます。
また、サンゴの上に赤土が直接積もることによってサンゴが呼吸できなくなり、そのまま窒息死してしまうケースもあります。
サンゴの白化はサンゴ自身の死を招くだけではなく、サンゴ礁を住処にしている様々な海洋生物の生態系を著しく崩すことにもつながります。

このままの状態が続けば、沖縄の美しいサンゴ礁や多様な生物たちが消えてしまう未来が来るかもしれません。
次は、そのような最悪な事態を防ぐために現在沖縄で実施されている、さまざまな赤土流出防止策について見ていきましょう。

さまざまな赤土流出防止策

画像引用元:NPO法人おきなわグリーンネットワーク

赤土等流出防止条例の制定

沖縄では、2017年に「赤土等流出防止条例」が制定されています。
この条例は、「工事現場で赤土流出が起こらないよう防止策をとること」を事業者に義務付ける内容となっており、制定されて以降は工事現場からの赤土流出はかなり減少傾向にあることが分かっています。

しかし、この条例はあくまでも工事業者向けとなっており、農地などからの赤土流出対策については現状これといった規定はありません。
赤土流出問題の根本的な解決を目指すためには、農地における赤土流出もしっかりと対策する必要があります。

グリーンベルト

沖縄の農地における赤土流出防止策として近年注目を集めているのが「グリーンベルト」です。
グリーンベルトとはその名の通り「緑で形成した帯(緑化帯)」のことで、都市部では交通事故を防ぐためや、住宅地の無秩序な拡大を防ぐために設置されることがあります。
沖縄の農地におけるグリーンベルトは、畑の周辺にレモングラスやリュウノヒゲなどの植物を帯状に植えることを指しており、赤土などの流出を畑の周囲でせき止める効果があると言われています。近年ではグリーンベルトの植栽を支援するNPO法人や、植え付け体験プログラムなども増えつつあります。
また、実際にグリーンベルトを導入する農家も着実に増えていることが分かっています。

とはいえ、グリーンベルトは赤土流出を「完全に」防ぐわけではありません。
確かに全く対策をしていない畑に比べれば流出を抑えることはできますが、激しい雨が降った後などはどうしても多少の赤土は流出してしまうそうです。

マルチング

農地における赤土流出防止策には、グリーンベルトの他に「マルチング」というものもあります。
マルチングとは、耕作していない時期の畑の表面に紙やプラスチックフィルムなどを被せたり、草刈りで刈った草などを撒くことです。
グリーンベルトは畑の周辺のみを囲みますが、マルチングは畑の表面全体を覆うため、グリーンベルト以上に赤土の流出を抑える効果があると言われています。

しかし、グリーンベルトは一度植えるだけで済むのに対し、マルチングは雨が降るたびに作業し直さなければならないため、グリーンベルトに比べて手間がかかる点がデメリットです。

赤土流出防止には地域住民の意識向上も必要不可欠

グリーンベルトやマルチングなど様々な防止策が挙げられる一方で、現在沖縄の農家では高齢化および過疎化が進んでいます。
そのため大変な労力を要し経済的負担も大きいマルチングなどの設置は、実際のところ農家の方々にとってはメリットも少なく、あまり現実的ではありません。
この点については行政側も理解しているため、農家の赤土流出対策に関してはあくまでも法による強制はなく、「可能であればお願したい」という形に留めているのが現状です。

確かに、農家の方々だけでマルチングなどの設置作業に取り組むのは決して楽ではありません。
しかし、もし地域住民が協力して作業を行えばどうでしょうか?
きっと農家の方々だけで作業するよりも、スムーズかつ確実に赤土流出対策ができるのではないでしょうか。
これを実現するためには、赤土流出の深刻さを住民全員が理解し、サンゴ礁をはじめとした自然環境保全活動に積極的に参加できるシステムが構築されることが必要です。
そのため現在沖縄行政には、より一層地域住民の意識向上を促す施策が求められています。

まとめ

今回は、沖縄で深刻化している赤土問題について解説してきました。
日本有数の美しい海とサンゴ礁、そして多くの生物を守るためにも、引き続き赤土流出対策が強化されていくことを願いたいですね。

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