環境配慮行動を起こす上で重要な「心理学的視点」とは

環境問題

これまで当コラムでは、様々な環境問題をテーマに据えたコラムを掲載してきましたが、
世の中には環境問題に対する理解を深めてもなお、「中々環境に配慮した行動を起こせない…」というジレンマを抱えた人が少なくありません。
そんな「環境配慮行動」を起こしにくい背景には現代の社会構造があることが指摘されており、社会のシステムを変えていくためには、まずは人々の行動心理を理解する必要があると考えられています。
今回は、どうすれば多くの人が環境配慮行動を起こすことができるのかについて、心理学的な視点から探っていきましょう。

「環境配慮行動」ってどんな行動?

環境配慮行動とは文字通り、地球温暖化をはじめとした環境問題に対し、日々の生活や経済活動を委縮させることなく、一人一人が自主的かつ積極的に環境保全に配慮した取り組みを行うことです。
主な環境配慮行動としては、「省エネルギー」「緑化活動」「エコドライブ」「3R(リサイクル・リユース・リデュース)」「公共交通機関の利用促進」などが挙げられます。
これらの環境配慮行動は年々広がってはいるものの、まだまだ十分とは言えないのが現状です。

心理学における基本的な行動プロセス

心理学では、私たちが何かに対して行動を起こす時、5段階の「行動プロセス」を辿っていることが示されています。
この行動プロセスは勉強、買い物、人助けなど様々な場面に当てはまり、近年では特にマーケティング分野で重視されていますが、もちろん環境配慮行動も例外ではありません。
何かしらの行動を起こす時、私たちは一体何をどのように考えているのでしょうか。
まずは、5段階の基本的な行動プロセスについて見ていきましょう。

➀Attention注目)
行動を起こす対象を認知し、注目している段階です。
「全く知らない段階」から「少しでも知っている段階」へと変わる重要なプロセスです。

②Interest関心)
ただ対象を知っているだけではなく、「あれは何だろう?」と興味や関心を持ち、どんなことが起きているのかを知ろうとしていく段階です。
この時の関心の強さが、後の行動プロセスを起こす動機や実際の行動まで影響を与えます。

③Desire欲求)
「関心」からさらに踏み込み、「(対象に向けて)行動したい」「関わりたい」といった欲求が芽生えてくる段階です。
しかし、まだこの段階では具体的に行動を起こすか否かは決まっておらず、漠然とした目的意識のみがある状態です。

④Memory(記憶)
対象についてより深く掘り下げて理解する(記憶する)段階です。
この時に得た情報が、行動を起こす上での決定的な動機となります。

⑤Action(行動)
関心と動機が高まり、行動意図を考え具体的に行動を起こす段階です。
ちなみに行動を起こした後、他者にも対象のことを教える「share(共有)」という段階が加わる場合もあります。

環境配慮行動において、こと日本では多くの人は④にまでは到達するものの、⑤に至る人は少ない傾向にあります。
次は、環境配慮行動のハードルが高い理由について考えていきましょう。

環境配慮行動を阻む「社会的ジレンマ」とは

日本で環境配慮行動が今一つ広がらない背景には、「社会的ジレンマ」の存在があると考えられています。
社会的ジレンマとは、「一人一人が『自分にとって合理的な選択』をすることによって、たとえその行動が個人レベルでは取るに足らない些細なものだったとしても、多くの人が利己的な判断をすることで結果的に社会における最適な選択と乖離(かいり)してしまう」というメカニズムを指す心理学用語です。

こうして聞くと少し難しい気もしますが、たとえば朝、満員電車に駆け込み乗車をした人がいたとします。
駆け込んだ本人にとってそれは「遅刻を免れる最適な決断」だったかもしれませんが、もし他にも大勢の人が駆け込み乗車をした場合、電車の大幅な遅延や事故が発生するなどの社会的な問題が起こる可能性があります。
反対に、この駆け込み乗車をした個人が会社や学校などに遅刻したとしても、それが社会全体に影響を及ぼすことはほぼありません。
相反するようですが、これはどちらも社会的ジレンマと言えます。

環境問題の場合、たとえばゴミを分別せずに捨てる人にとってそれは「効率的で合理的な選択」かもしれませんが、同じ選択をする人が大勢いることで、結果的に大気汚染などの社会問題を発生させることになります。
反対に、「このままではいけない」と環境配慮行動を起こす人がいたとしても、たった一人が尽力するだけでは環境問題を根本的に解決することはできません。
いくら個人が省エネ活動や緑化活動を行ったとしても、社会全体で目に見えた変化が無ければ、次第に環境配慮行動を起こすモチベーションも下がってしまうでしょう。

環境配慮行動を促すための心理学的アプローチ

個人で環境配慮行動を続けていても社会全体が変わらなければくじけてしまう、と前述しましたが、だからと言ってそこでやめてしまっては本末転倒です。
ここからは、どうすれば環境配慮行動を自分にも他者にも促すことができるかについて、心理学的な観点から考えていきましょう。

シェア(共有)する

環境配慮行動を社会全体に促すためには、行動プロセスの項目で触れた「share(共有)」の段階を踏むことが大切になります。
家族や友人など、まずは身近なコミュニティに環境配慮行動の大切さを共有することで、少しずつでも実際に行動を起こす人を増やしていくことができるでしょう。

ポジティブな姿勢で向き合う

ドイツの心理学者であるハンス・アイゼンク氏(1916年-1997年)が提唱した「計画的行動理論」によると、私たちが日常的にとる行動は「行動意図」に基づいたものであり、その行動意図に大きな影響を与えているのは、行動対象に対する

・態度
・他者からの期待
実行可能性

だと言われています。

まずここで言う「態度」とは、環境配慮行動などの特定の行動に対する評価のことであり、「その対象をどれだけポジティブ(正しい、望ましいなど)に捉えているか」を指します。
この態度がポジティブであればあるほど対象の行動をとる確率は高くなり、反対にネガティブであればあるほどその行動をとる確率は低くなると考えられています。
次に「他者からの期待」とは、「行動を起こす当事者にとって重要な他者(親、友人、恋人など)が、その行動をとることをどれだけ期待しているか」を指します。
この期待値が高ければ高いほど、当事者がその行動をとる確率は高くなると考えられています。
最後の「実行可能性」とは、「行動を起こす当事者にとってその行動がどの程度可能か」を指します。

これらを総括すると、「ポジティブ」な姿勢で向き合い、身近な人物とその行動の大切さを「共有」し、無理のない「実現可能」な範囲で動くことこそが、環境配慮行動を促すポイントだと言えるのかもしれません。

まとめ

今回は「どうすれば環境配慮行動を起こす人が増えるのか」について、心理学の観点から考えてみました。
普段何気なく起こしている行動も実は心理学に基づいていたのかと思うと、中々興味深いですよね。
そして、今まであまり心理学に触れてこなかった人は今回少し難しい印象を受けてしまったかもしれませんが、結論としては「周囲の人に環境配慮行動の重要性を共有し、前向きに行動を継続すること」が大切だと分かったのではないでしょうか。
当コラムもこれを参考にしつつ、今後もより多くの人が環境問題に関心を持ってくれるよう、引き続き情報発信していきたいと思います。

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