石油に代わるエコな資源「バイオ燃料」とは?種類や活用事例についてチェック!

エネルギー(再エネ・化石燃料etc.)

脱炭素化に向けて国際社会がさまざまな施策を行う中、日本はいまだに国内エネルギーのほとんどを化石燃料に依存している点が問題となっています。
先日行われたCOP26でもその点を指摘され、日本は気候変動対策に消極的な国に皮肉を込めて贈られる「化石賞」を受賞しました。

日本が脱炭素化を実現するためには、化石燃料への依存を断ち切り、その代わりとなるクリーンな燃料を活用する必要があります。
そこで近年注目を集めているのが、再生可能な生物由来の有機資源(バイオマス)を利用して作られる「バイオ燃料」です。
今回はバイオ燃料とは何か、どんな種類があるのか、どのように活用されているのかについて解説していきます。

バイオ燃料とは

バイオ燃料とは、バイオマスの持つエネルギーから作られたアルコール燃料や合成ガスのことです。
石油、石炭、天然ガスのように量が限られている「枯渇性資源」とは違い、再生可能な「非枯渇性資源」として注目されています。
また、
CO2(二酸化炭素)の総排出量を実質的に増やさないクリーンな資源であることから、近年では自動車や飛行機の主燃料である石油の代替物として活用されることが増えています。

バイオ燃料が注目され始めたのは、1990年代後半のことです。
当時、世界的に環境意識が高まり、CO2排出制限を厳しく求められるようになったからだと言われています。

現在、世界で最もバイオ燃料を生産している国はアメリカで、2位はブラジル、3位はインドネシアとなっています。
一方、日本の生産率及び普及率は決して高いとは言えませんが、1997年には京都市がバイオ燃料事業を開始し、2020年には国内バイオベンチャーの「株式会社ユーグレナ」がバイオ燃料の製造・販売に積極的に取り組むなど、少しずつではありますが着実に広がりを見せています。
京都市やユーグレナ社の具体的な取り組みについては、次章の中で詳しく触れていきます。

バイオ燃料の種類と活用事例

一口にバイオ燃料と言っても、その原料やエネルギーの抽出方法は多種多様です。
ここでは主な5種類と、それぞれの活用事例について見ていきましょう。

バイオエタノール

バイオエタノールは、トウモロコシ、ジャガイモ、麦などの「デンプン質原料」、またはサトウキビ、甜菜、廃糖蜜などの「糖質原料」から作られるエタノールです。

これらのバイオマスに含まれる糖分を微生物によって発酵させ、蒸留してエタノールを生産します。
バイオエタノールは、石油や天然ガスから作られる合成エタノールの代替燃料になると考えられており、主に自動車や飛行機などの燃料として、バイオエタノール単体もしくはガソリンと混ぜて使用されています。

一方で、デンプン質原料や糖質原料といった原料は食糧でもあるため、「エタノール製造に使うことで貧困地域の食糧難を悪化させるのではないか」といった指摘もあります。
この課題を解決するべく、近年では食糧以外の原料または作物の非食部分を使用した、第二、第三世代のバイオメタノールの開発が進められています。
新たな原料としては、廃木材、麦わら、稲わら、ネピアグラス(熱帯の非食用植物)などが候補に挙げられています。

バイオディーゼル(BDF)

バイオディーゼル、通称「BDF」は、菜種油やオリーブ油などの植物油、または天ぷらなどを揚げた後に残った廃食用油などを原料にして作られる、ディーゼルエンジン用のバイオ燃料です。
主にバスや自動車の燃料として、BDF単体もしくは軽油や灯油に混ぜて使用されています。
BDFは硫黄酸化物(SOx)をほとんど含んでいないため、軽油に比べてSOxの排出量を半分以下に減らすことができると言われています。

ヨーロッパでは菜種油、アメリカやブラジルでは大豆油を主な原料にしてBDFを精製しています。
特にヨーロッパでは大々的な普及政策が導入され、ドイツを中心にBDFの利用が進んでいます。

日本では1997年の京都議定書の採択をきっかけに、京都市が全国に先駆けてバイオディーゼル燃料化事業に取り組んでいます。
京都市内の飲食店や一般家庭から排出される廃食用油を回収し、同じく市内の廃食用油燃料化施設にてバイオディーゼルに精製しています。
そうして作られたバイオディーゼルは、市内を走るごみ収集車やバスの燃料として利用されています。

バイオガス

バイオガスは、有機性廃棄物(残飯などの生ごみ)、家畜の排せつ物、汚泥、汚水などが発酵した際に発生する可燃性ガスです。

バイオガスにはメタンや二酸化炭素などの成分が含まれており、主に電力などのエネルギーを発生させる燃料として使用されます。
下水処理場の活性汚泥や、焼却されるはずだった生ごみをバイオガスとして利用することで、環境への負荷を減らし、循環型社会を形成できるのではないかと期待されています。

近年では、都市ガスを供給する事業者からなる「日本ガス協会」もバイオガス利用促進センターを設置し、バイオガス利用促進の取り組みを行っています。

バイオコークス

バイオコークスは、光合成する植物由来のバイオマスからつくられる固形燃料です。
「コークス」とは、石炭を高温で蒸し焼きにして炭素以外の成分をすべて抜いたものを指します。

つまりバイオコークスとは、バイオマスを使って作られた石炭ということです。
雑草、茶葉、そば殻、野菜くずなど、光合成する植物であれば、どんなものでもバイオコークスに生まれ変わらせることができます。

バイオコークスの特徴は、従来のバイオマス燃料では不可能とされてきた「高い圧縮強度」と「高温環境下での長時間燃焼」を実現している点です。
さらに、製造時に廃棄物を排出しない、いわば「ゼロエミッション燃料」という特性もあります。 バイオコークスに関する研究は、2000年頃から近畿大学の井田民男教授によって続けられています。
現在は既に各国の特許も取得し、国内外での実用化に向けた実証実験が進められています。

バイオジェット

バイオジェットは、タバコ、廃食用油、廃木材、生ごみ、藻類などから得られる油成分から作られるジェット燃料です。
前述したバイオエタノールやバイオディーゼルはほとんどが自動車用燃料として使用される一方、バイオジェットはその名の通りジェット機用に特化した燃料として、現在世界各国の航空会社や空港で導入が推進されています。

日本では2021年6月、ユーグレナ社が製造したバイオジェット燃料「サステオ」を積んだホンダのジェット機がフライトに挑戦し、見事成功しました。
この時使用されたサステオには、原料に廃食用油と微細藻類のユーグレナが使用されています。
また、民間航空機におけるサステオの使用は、これが世界で初めてのことでした。

バイオ燃料が今後さらに普及するための課題

環境負荷が低く、さまざまな活用方法があるバイオ燃料ですが、今後さらに普及するためには、いくつかの課題をクリアする必要があります。
ここでは、特に指摘の多い2つの課題について見ていきましょう。

コストが高い

バイオ燃料は化石燃料に比べ、資源の収集、運搬、管理などに莫大なコストがかかる傾向にあります。 その理由は、バイオ燃料を安定的に供給するための生産ラインが、日本ではまだまだ確立していないことが挙げられます。

コストを削減するためには、資源収集から販売までをスムーズに行うためのシステム構築が必要ですが、日本では製造施設を建設する広大な土地を確保することが難しいため、コストが高止まりしているのが現状です。
バイオ燃料を扱う国内の各企業には、生産数を増やす中でシステムを調整するとともに、徐々にコストダウンを図ることが期待されています。

製造過程でCO2が発生する可能性も

バイオ燃料そのものはCO2排出量削減効果がありますが、もし生産プラントの建設、生産、輸送の各段階で大量の燃料が消費され、CO2が排出した場合は本末転倒ではないかという指摘もあります。
前述したように日本ではまだ大量生産の段階に至っていないため、今後はどれだけ環境負荷をかけずにバイオ燃料を普及させていくかがカギとなっています。

まとめ

日本におけるバイオ燃料事業は、まだまだこれからだということが分かりました。
普及への道は決して平坦ではありませんが、脱炭素社会の実現に向けて今後進むことに期待したいですね。

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