自然に囲まれた生活を送るため、サステナブルな暮らしを実現するため、または現代社会に疲れた心身を癒すため、近年では自然の中で自給自足生活を営む人が増えています。
確かに自給自足生活にはさまざまなメリットがありますが、「やりたい!」という気持ちだけで始めてしまうと、後から思いもよらぬトラブルに頭を抱えることになるかもしれません。
そうならないためにも、今回は自給自足生活のメリットと、自給自足生活を始める上で押さえておくべき具体的なポイントについて解説していきたいと思います。
まずは「自給自足生活の定義」について考えよう
自給自足生活を始めたいと思ったら、まずは「どの程度自給自足で賄うか」について具体的に考えることが大切です。
というのも、自給自足の本来の意味は「生活に必要なもとを他所に求めず、すべて自分で賄い、足りるようにすること」です。
この意味に完璧に沿って自給自足生活を行うのであれば、衣食住のすべてを自分で賄うことになります。
その場合は、もちろん電気、水道、ガスなどのライフラインも使いません。
しかし、いくら自給自足生活を始めたい人でも、ここまで文明とかけ離れたサバイバル生活をしたい人はさすがに少数でしょう。
大多数の人が想像する自給自足生活は、自家栽培した作物で食料を賄い、あとは無理のない範囲で自然に寄り添った生活を送る、いわゆる「スローライフ」と呼ばれるものではないでしょうか。
そこで今回は、スローライフ寄りの自給自足生活を前提に、実践する上で具体的なポイントについて考えていきましょう。
自給自足生活には「農業」がマスト
前述したように、自給自足生活において日々の食べ物を賄うためには、自家栽培つまり「農業」が欠かせません。
中には山菜採りを行う人もいますが、もし他人の敷地内と知らずに山菜を採った場合は違法行為となり、仮に自分の敷地内だとしても毎日安定した量が採れるとは限りません。
また、食べられる山菜を見分ける知識が無いと、知らずに毒性の野草を食べてしまい体調を崩す可能性もあります。
これらの点を踏まえると、やはり自給自足生活には農業がマストだと言えるでしょう。
とはいえ、健康な身体を保つためには、野菜だけではなくタンパク質を含んだ食材も欲しいところです。
川が近くにある場所で自給自足生活を行う場合は、釣り具などがあると魚を自給できるかもしれません。
そうでない場合は、鶏を飼うという方法もあります。
鶏は雑草を食べてくれる上に、品種によっては交配させなくとも貴重なタンパク源となる卵を産んでくれます。
ちなみに肉として食べることもできますが、食肉処理の知識や経験が無い方や、飼育した鶏を食べること自体に抵抗を感じる方にはお勧めしません。
なお、鶏を飼育する場合は毎日鶏の体調をチェックし、鳥小屋の維持や害獣対策をしっかり行う必要があります。
これらのことを理解した上できちんとこなせれば問題ありませんが、単に「自給自足で卵を手に入れたい」という理由だけで飼った場合は、大きな負担を感じることになるかもしれません。
何より当たり前のことですが、生き物の飼育には多くの責任が伴います。
そのことを踏まえた上で、実際に飼うかどうかはじっくり考えて決めた方が良いでしょう。
自給自足生活にかかる諸費用
ここまでは食料面における自給自足について紹介しましたが、食料はある程度自力で賄えても、他の部分ではどうしても費用が発生します。
ここでは、自給自足生活にかかる諸費用について考えていきましょう。
地方で暮らす場合
自給自足生活と訊くと、都会より先に地方が思い浮かぶかもしれません。
実際、地方は都会に比べ物価や家賃が安いため、都会よりも自給自足生活に向いているのは確かです。
しかし自給自足する場合、自家栽培を行うための農地の賃料や維持費、そして野菜の種や農機具代といった初期費用がかかります。
また生活スタイルにもよりますが、地方に暮らすのであれば自動車はほぼ必須です。
そのため、マイカーの維持管理費も計算しておく必要があります。
その他、前述したように鶏を飼う場合は、鳥小屋代や害獣対策の電気柵代なども発生します。
都会で暮らす場合
都会でも農業ができる十分な土地があれば、自給自足生活は不可能ではありません。
むしろ買い物などの点においては、地方よりも都会の方が便利と言えます。
ただ、都会は家や土地の敷地が地方より狭い一方で、賃料は地方よりも高い傾向にあります。
加えて敷地が狭いと育てられる作物も少なくなるため、食糧を自給自足で賄いきれない可能性もあります。
このように、地方も都会も両方メリットとデメリットがあります。
いずれせよ予算面や生活しやすさなどを考えた上で、自分に合った環境を選ぶことをお勧めします。
自給自足しながら収入を得るには
自給自足生活を送りながら収入を得る方法としては、自家栽培した作物を売ったり、あるいはその作物を使った料理を出すレストランなどを経営し、現金収入を得るのが理想的です。
とはいえ、スーパーに並んでいるような見栄えの良い作物を自家栽培で作るのは実際のところ難しく、レストラン経営も決して簡単ではありません。
これを踏まえると、生活費は別の仕事で稼ぎつつ、可能な範囲で作物を育て、無理のない範囲で自給自足をしていく「半自給自足」が最も現実的です。
近年では在宅ワーク可能な仕事も増えているため、農業と仕事をバランスよく両立させる人も増えています。
この方法は、「できるだけ本格的な自給自足生活を送りたい」という人には物足りないかもしれません、
しかし、最初から農業一本を目指すよりも、半自給自足から徐々に自給自足の割合を増やした方が結果的には無理なく楽しく生活できる場合もあります。
いずれにせよ、選択肢の一つに入れておいて損はないでしょう。
【パターン別】自給自足生活の気になるポイント
ここからは、自給自足生活を始める上での基本的なポイントからもう少し視野を広げ、様々なパターンにおける自給自足生活の気になる点について見ていきましょう。
海外で自給自足生活を始める際の注意点
コロナ禍の今となっては実現は厳しいものの、「いつかは日本ではなく海外で自給自足生活してみたい!」と考える人もいます。
確かに日本よりも物価が安い国の場合、日本にいる間にある程度貯蓄してから移住すれば、金銭面では生活しやすい場合もあります。
しかし、現地で自給自足生活を始めるためには、言葉の壁や土地を得るための手続きなど、日本で行う以上に困難な事態に直面するかもしれません。
いざという時に頼れるツテが現地にある場合を除けば、海外での自給自足生活は中々ハードルが高いと言えるでしょう。
子供を育てながらの自給自足生活は可能?
自然が身近な環境の中での生活は、子供たちの豊かな経験を育むことも期待できます。
だからと言って、あまりにも社会から孤立した暮らしを強いることはお勧めできません。
子供がいる場合は社会性を育むためにも、地域とつながれる範囲で自給自足生活を送ることが望ましいです。
「自給自足生活を始めたい」と思ったら事前にしっかり調べよう!
自給自足生活には、一見「世間のペースに流されず自分のペースでのんびり暮らせる」といったイメージがありますが、実際は決して楽なことばかりではありません。
そのため実行に移す前には、必ず入念に下調べを行っておくことが大切です。
ちなみ近年では、シェアハウスのように複数人で自給自足生活を送る人たちもいます。
このように自給自足生活の在り方は年々多様化しているので、理想とする生活と現実的な部分を照らし合わせ、「自分にあった暮らし方とは何か」を多角的に考えることが大切です。
まとめ
今回は、自給自足生活を実現する上で押さえておくべきポイントについて解説しました。
自給自足生活の実践方法は人それぞれですが、大切なのは事前にしっかり調べ、自分にとって無理のない生活スタイルを構築することです。
自給自足生活にはもちろん大変なこともありますが、続けていくことで暮らしをより豊かにするアイデアもきっと湧いてくるはずです。
「興味はあるけど自信がなくて…」となかなか踏み出せない人は、まず自分にできそうなことから始め、慣れてきたら少しずつ自給自足の範囲を広げてみてはいかがでしょうか。