先日、政府により「2030年代半ばには国内におけるガソリン車の新車販売を禁止する」という目標が発表されました。
このニュースは車好きや自動車業界関係者の中で一躍話題となりましたが、これは正確には「ガソリンが燃料に含まれている全ての自動車の販売が禁止される」というわけでは決してなく、所謂「100%ガソリンエンジン車」のみを禁止とし、徐々にハイブリッド車や電気自動車に移行していきたいという考えのようです。
とはいえ「ガソリン車を減らしCO2の排出量を減らそう」という動きは現在世界的に活発になっており、むしろ日本はかねてより「自動車大国であるにも関わらず他国に比べて出遅れているのでは」という指摘も受けていました。
より具体的な地球温暖化対策が求められる今、長らくガソリン車が主流となっていた自動車業界は一体どのように変化していくのでしょうか。
そこで今回はガソリン車の歴史や諸外国のガソリン車の販売に関する方針などをチェックしつつ、これからの自動車の在り方について予想していきたいと思います。
まずはガソリン車の歴史を簡単解説!
世界初のガソリン車はドイツで誕生
現在主流となっているガソリン車が生まれたのは、今から130年以上前の1885~1886年頃になります。
当時は蒸気自動車、もしくは電気自動車(なんと意外にも電気自動車はガソリン車よりも早く誕生していました!)に乗る人がほとんどでしたが、ドイツの技術者であるゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツが時を同じくしてガソリンエンジンを搭載した自動車の開発に成功したことにより、世界で初めて自動車市場にガソリン車が登場します。
ちなみにカール・ベンツは、後にドイツを代表する自動車ブランド「メルセデスベンツ」の生みの親となります。
本格的な量産化は1900年代以降
前述したように1880年代にはいくつかのガソリン車が販売されるようになったものの、1900年に差し掛かるまでは、まだまだ蒸気自動車や電気自動車が一般的には主流となっていました。
しかし、フランスの自動車メーカー「ド・ディオン・ブートン」が1900年の1月から4月にかけて1500台のガソリン車を一般向けに販売したことにより、その後の流れは大きく変化していきます。
時を同じくして広大な国土を有するアメリカではガソリン車への注目が高まり、1901年にミシガン州の自動車メーカー「オールズモーターワークス」(通称「オールズモビル」)がガソリン車を販売してからは、急速に量産化及び一般普及が進んでいきました。
日本におけるガソリン車の歴史
日本では1907年に国内初の実用型ガソリン車が開発されましたが、この頃の日本の技術は前述したドイツやアメリカに比べるとまだまだ未熟だったため、本格的な国産化には中々至りませんでした。
しかし1930年代に入り、今となっては日本を代表する自動車メーカーの「日産自動車」と「トヨタ自動車」の前身となる「ダットサン商会」と「豊田自動織機製作所自動車部」が設立されてからは、日本発のガソリン車は飛躍的な進化を遂げていきます。
両社の技術者たちの熱心な研究開発の結果、1960年代には「日産スカイライン」や「トヨタカローラ」などの名車が次々と誕生し、国産ガソリン車の地位を確固たるものにしました。
ガソリン車のメリット・デメリット
メリット
ガソリン車は、主に「低コスト」と「高出力」という点がメリットだと言えるでしょう。
「低コスト」については、前述したようにガソリン車は130年以上前から存在しており、現在市場に出ているエンジン車の中では最も長い歴史を誇っています。
そのため、多くの自動車メーカーでは既にガソリンエンジンの製造ラインは整備され尽くしており、開発および製造にかかるコストも最小限に抑えられています。
近年ではハイブリッド車のエンジン製造ラインもある程度整備されつつありますが、電気自動車や水素自動車においてはまだまだ整備の余地がありその分コストもかかるため、現状車両価格が安くなりやすいのはやはりガソリン車だと言えます。
次に「高出力」についてですが、ガソリンエンジンは他のエンジンに比べて回転数が多いため、その分出力も高くなりやすくなっています。
出力が高くなればそれだけスピードも出るため、特に速さが売りのスポーツカーにおいてはまだまだガソリンエンジンが主流となっています。
とはいえ近年ではガソリン車に並ぶ速さを実現した電気自動車も登場しつつあるため、「速さならガソリンエンジンがダントツ!」という常識は塗り替えられつつあります。
デメリット
ガソリン車のデメリットには「燃費が悪い」というのもありますが、一番はやはり何と言っても「CO2を排出する」という点ではないでしょうか。
国土交通省によると、2018年度の国内におけるCO2総排出量のうち18.5%は自動車や船舶等が含まれる運輸部門が占めており、その運輸部門のうち86%以上は自家用乗用車や貨物車などの自動車全体からの排出が占めているそうです。
運輸部門のCO2排出量自体は1990~1996年辺りがピークとなっており、2001年以降は減少傾向にありますが、それでも今なお地球温暖化は進行しているため、「特にCO2排出の大部分を占めるガソリン車を今後どう減らしていくかという点」が近年では重要視されています。
しかし冒頭でも述べたように、この点に関し日本は国際的にやや遅れを取っているのが現状です。
では、諸外国ではどのような動きを取っているのでしょうか。
次の章では、その点についてチェックしていきたいと思います。
ガソリン車販売禁止に関する諸外国の動きをチェック!
ガソリン車の販売台数の引き下げおよび新車販売の禁止にいち早く乗り出したのは、イギリスやアメリカなどの欧米諸国です。
イギリス政府はかねてより「ガソリン車とディーゼル車の新車販売規制を早ければ2035年、遅くとも2040年には実行する」と表明していましたが、今年11月には「予定をさらに早めて2030年には規制を開始する」といった方針を固めています。
それまでに電気自動車の普及率を上げるべく、首都ロンドンでは現在充電スタンドが急速に増えています。
一方アメリカでは、カルフォルニア州にて「2035年までに州内で販売される全ての新車をゼロエミッション車(有害物質を一切排出しない車)に変える」という目標が表明されています。
またドイツでも大手自動車メーカーのフォルクスワーゲンが電気自動車の生産に力を入れる等、ガソリン車の減少に向けた具体的な動きが活発になっています。
その動きは欧米に留まらず、中国でも「エコカーが新車販売において占める割合を2035年までに50%にまで高める」という目標が自動車専門家団体により発表されています。 こうして各国で行われている取り組みを知ると、確かに「やっと日本も動いたのか」という風に感じてしまいますね。
車だけじゃない!日本におけるバイク電動化の動き
ガソリンエンジン廃止の動きが見え始めているのは、バイク業界も例外ではありません。
2020年12月、日本の大手バイクメーカーであるヤマハは「2035年を目安にバイクの全自動化を目指すことは、技術的に不可能ではない」と発表しています。
しかし一方で、「顧客がそれを求めているかどうかは別問題である」との見解も示しており、ユーザー側の電動バイクに対するニーズが未知数であることを懸念しています。
バイクは車に比べて趣味性が高いため、従来のバイクに馴染み深いバイク好き達が興味を示せるような電動バイクを普及させることは、エコカーの普及以上にハードルが高いのかもしれませんね。
今後ハイブリッド車が販売禁止されることはある?
ここまで読んで、「もしかしてハイブリッド車もいつかは販売禁止になるのかな…?」と気になった方もいるのではないでしょうか。
確かにイギリスではハイブリッド車も販売禁止対象となることが決まっており、前述した2030年までに電気自動車の販売を主流にすることが方針とされていますが、現在イギリス国内における電気自動車の販売比率は3%以下と非常に少ないため、現実的に考えて厳しいのではないかという意見も少なくありません。
その点、トヨタなどのハイブリッド車を得意している大手自動車メーカーを多数抱える日本では、ハイブリッド車と電気自動車を2つの軸とした新たな車社会の構築が期待されています。
まとめ
今回は日本における2030年以降のガソリン車の販売禁止を受け、それに関する気になる点について徹底的にチェックしていきました。
現状ではまだまだガソリン車が多く普及していますが、10年後には道路を走る車の半数近くは電気自動車…という光景が当たり前になっているかもしれませんね。
この点に関しては引き続き諸外国の動きも気にしつつ、日本が今後具体的にどのように取り組んでいくのか注目していきたいと思います