風力発電の基本情報&メリット・デメリット

エネルギー(再エネ・化石燃料etc.)

時々旅行などで海沿いや高原に行くと、いくつもの風車がそびえ立っている壮大な光景を目にすることがありますよね。
実はあれらの風車の多くは、風力発電を行うために設置されたものとなっています。
風力発電の歴史の始まりはなんと約120年以上前にも遡ると言われており、
太陽光発電が開発されるよりもずっと前から完全な自然エネルギーとして人々の暮らしを支えてきました。

そんな風力発電には長年運用され続けるだけのメリットがあるのはもちろん、やはり他の再エネ発電と同様に少なからずデメリットも存在します。
風力発電についてより深く理解するためにも、今回は風力発電の基本情報から、メリット・デメリットまでをチェックしていきたいと思います。

まずは風力発電の基本情報をチェック!

仕組み

風力発電に用いられる風車といえば上部でクルクルと回る大きな羽が特徴的ですが、あの羽は通称「ブレード」と呼ばれています。
ブレードが風を受けて回転すると、伝動軸(文字通り動力を伝達するための軸)を経由して増速機のギアが入り、さらに回転数が増やされます。
そうして実際の回転よりもさらに多く、さらに速く回転させることでエネルギーを生み出し、変換された電気は送電線から各施設へ送られるという仕組みとなっています。

種類

風力発電には大きく分けて「水平軸タイプ」と「垂直軸タイプ」の2種類があり、これは「どの方向に回転軸があるか」によって分類されています。
この章では、それぞれの特徴や細かな分類について見ていきましょう。

水平軸タイプ

多くの人が風力発電と聞いてまずイメージする扇風機のような見た目の風車は、前者の水平軸タイプに該当します。
どちらかと言うと、水平軸タイプは垂直軸タイプよりも大型化しやすい上に電気の変換効率も高いため、日本における風力発電の多くはこのタイプで建設されています。

また水平軸タイプと一口に言っても様々な型があり、具体的には次のように分類されます。

・プロペラ型…羽の枚数が3枚と少ないためバランス良く回転するが、比較的騒音が出やすい。
・オランダ型…羽の枚数は4~6枚。風力よりも揚水発電に用いられることが多い。
・多翼型…羽の枚数が多く回転数はあまり稼げないが、静音性が高い。

上記の中ではプロペラタイプが最も回転数が多く変換効率も高いため、普及率もトップとなっています。

垂直軸タイプ

垂直軸タイプは、水平軸タイプよりも後に開発された風車です。
水平軸タイプと決定的に違うのはその構造で、ブレード部分が地面から垂直に空へ向いているような構造となっています。
水平軸タイプと同様に垂直軸タイプの中にも細かい分類があるので、ここではその中から一部を紹介します。

・ダリウス型…比較的新しいタイプで、弧を描いた弓のような形状が特徴。乱流に強く静音性が高い。
・直線翼型…中心から多方向に盾を構えているようなブレードが特徴。垂直軸タイプの中では比較的変換効率が高い。
・サボニウス型…円筒を縦方向に2分割して互い違いに合わせたような形状が特徴。回転効率は高いが変換効率は低め。

垂直軸タイプの大きな特徴としては「風向きに左右されない」というものがありますが、
水平軸タイプに比べると変換効率が低いため、現時点ではあまり多くは普及していません。
とはいえ言い方を変えればまだまだ開発の余地が残されているということなので、今後のさらなる性能向上に期待したいところですね。

建設場所

種類と同様に、風力発電システムの建設場所には大きく分けて2種類あります。

陸上

文字通り陸上に風力発電システムを設置する方法です。
設置に向いている具体的な土地条件は、「一定以上の風速で安定した風が吹いている広大な土地」だと言われています。
日本では北海道の苫前町や、三重県の青山高原などに大規模なウインドファームが設置されています。

海上(洋上)

海上風力発電システムは別名「オフショア(「岸から離れた場所」の意味)発電」とも呼ばれており、陸上よりも大きな風力を得られる点が近年注目を集めています。

また海だけではなく湖や港湾などに設置された場合も、「海上風力発電システム」と呼ばれます。
海岸線が長い島国付近、または遠浅な場所が設置向きとされており、現在は主にヨーロッパ各地での設置が進んでいます。

さて、風力発電に関する基本情報が分かったところで、次は風力発電を運用する上でのメリットとデメリットについて見ていきましょう。

風力発電のメリット

発電時にCO2を排出しない

現在日本で主力となっている火力発電に比べれば本当にごく僅かな上に環境に悪影響を与えることはほとんど無いと言えますが、それでも太陽光発電や地熱発電などの場合は、どうしても発電時に微量のCO2を排出してしまうという側面があります。

一方で風力発電は「風で風車を回す」という至極シンプルな仕組みによって発電エネルギーを生み出すため、CO2を排出させる可能性はほぼ皆無と言って良いでしょう。
ちなみに風力発電と同じく古くから人々が利用してきた水力発電も、CO2の排出量がほぼ無いことで知られています。

夜間でも発電できる

太陽光発電などの場合、太陽の出ていない夜間は発電することが出来ませんが、
その点風力発電は風さえ吹いていれば日夜を問わず24時間発電を行うことが可能です。

変換効率が高い

電気における変換効率とは、「生み出したエネルギーからどれだけ多くの電気を変換できるか」の割合を指します。
具体的な各自然エネルギーの変換効率を言うと、太陽光発電や木質バイオマス発電の場合は約15~20%、地熱発電の場合は約10〜20%だとされています。

その点、風力発電変換効率は約20〜40%と、自然エネルギーの中でも比較的高効率であることが分かっています。
ちなみに最も高変換効率なエネルギーは、最大約80%を誇る水力発電です。

風力発電のデメリット

風が弱い時&悪天候時はやや発電量が落ちる

風力発電は100%風の恩恵を受けて発電を行っているため、風の弱い日や風量の少ない日はどうしても発電量が落ちる傾向があります。
また、近年ではしっかり対策の取られた風力発電所も増えてきてはいますが、万が一台風や落雷などの影響を受けた場合は発電量が落ちるだけではなく風車が破損してしまうおそれがあります。

そのため、悪天候時は稼働が一時停止するようにあらかじめ設定された風力発電システムも少なくありません。
台風の多い日本に風力発電システムが多くない理由が、なんとなく分かってしまいますね。

とはいえ風が弱い日の発電量、そして悪天候時の安全性向上などに関しては現在も研究開発が進められているので、この点に関しては今後の性能向上を期待したいと思います。

騒音トラブルが生じる場合がある

現在主流となっているプロペラタイプの大型風車の場合、回転速度は約300km/hと新幹線とほぼ同程度となっています。
速いスピードで勢いよく回るためどうしてもある程度は風切り音が発生するのですが、まれにその音が原因で風力発電所と近隣住民との間にトラブルが生じる場合があります。
また、稼働音に生じる低周波音も人によっては不快感を覚え、場合によっては体調を崩してしまうこともあるようです。

設置地域の景観を損ねる可能性がある

この点に関しては、個人個人の感覚もあるため難しい問題ではあるのですが、風車を見て「すごいなあ」「綺麗だなあ」
と感じる人もいれば、一方で「自然の景観を損ねている」「昔からの風景が壊れてしまう」と感じてしまう人が一定数いることも事実です。
近年では、風車自体を観光スポットにしている地域も少なくありませんが、いずれにせよ風力発電システムを新しく設置する場合は、自然やその周辺に住まう生物に十分配慮した上で施工を進めるべきだと言えるでしょう。

日本における風力発電のこれから

前述したように風力発電はヨーロッパでは着実に普及率が上がっていますが、実は一方で日本における風力発電システムの導入率は、太陽光発電システムの約半分と決して多くはないことが分かっています。
政府は「2030年までに国内における発電の1.7%を風力発電システムがまかなえるようにする」という目標を掲げていますが、そのためにはコスト面、性能面、立地面など、まだまだクリアすべき課題がいくつかあります。

とはいえ、これらの課題を2030年までに解決することは決して不可能ではなく、むしろ風力発電システムのさらなる普及へ向けた伸びしろとも言えます。
一体どのように風力発電が日本国内で運用されていくのか、今後が楽しみですね。

まとめ

風力発電と一口に言っても風車には様々な種類があること、そしてメリットとデメリットはあるものの、デメリットの方は今後大いに改善されていく可能性があるということが分かりましたね。

ちなみに当社は太陽光発電システムの販売及び施工を主に扱っておりますが、姉妹社には風力発電に関する事業をメインに扱っている「風の谷計画株式会社」という会社もあります。
「風力発電についてもっと知りたい」「ちょっと気になることがある」という方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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