野良猫の増加=環境問題?猫を守るために本当に必要なこととは

環境問題

人々にとって最も身近な動物であると共に、その愛らしい姿からペットとしても人気の高い猫。
しかし、近年では人間の身勝手な事情により無責任に野に放たれた「野良猫」を発端とした、様々な問題が発生しています。
2018年の統計によると、日本では年間約3万頭の猫が自治体によって殺処分されています。
このうちの約2万頭は、まだ離乳もしていない幼齢個体であることが分かっており、野良猫が生み落とした個体だと考えられています。

その他の様々な問題も含め、かねてより野良猫対策の必要性は求められていましたが、2020年以降コロナ禍により外出が厳しくなったここ1、2年はペット需要が急増した反面、さらにその野良猫問題に拍車がかかっている傾向にあります。
今回は野良猫を取り巻く様々な問題、そしてそれらを解決するための対策について学んでいきましょう。

野良猫を取り巻く問題

一見自由にのびのびと生きている野良猫の姿は、猫が好きな人にとっては大きな癒しを与えてくれます。
しかし一方で、こうした野良猫による被害に悩まされている人々がいるのも事実です。
夜中の鳴き声、住居周辺にまき散らされる糞尿、車や住居を傷つけるなどの被害は、以前から問題視されています。

これに加え、近年では人間による野良猫への「餌やり問題」についても指摘されています。
無秩序に餌やりを続けることによって、残餌から悪臭や害虫が発生したり、カラスやハトが増加したり、他地域からの野良猫流入やそれによる繁殖などを招く可能性があります。
これらの被害は周辺の生活環境のバランスを崩すだけでなく、自然環境の汚染を引き起こす可能性もあります。

また、「多頭飼育崩壊」も野良猫問題の拡大に大きな影響を及ぼしています。
多頭飼育崩壊とは、文字通り猫などの動物を多頭飼いした飼い主が、無秩序な飼い方によってペットの異常繁殖を繰り返した結果、飼育不可能となる現象のことです。
一般的に、犬猫などを買う場合は早い段階で避妊・去勢手術を行い異常繁殖のリスクを防ぎますが、稀に「ペットが可哀想」「手術費用が無い」などの理由から手術を行わない飼い主がいます。

しかし猫は人間とは異なり、一度の出産で4~8頭出産する繁殖力の強い動物です。
飼い主がそのことを把握せずに多頭飼育を行った場合、過剰繁殖によって大量の猫が劣悪な環境で過ごすことになります。
そして飼い切れなくなり捨てられた野良猫たちが、前述したような様々な問題の発端となってしまうのです。

劣悪な環境下で無責任に多頭飼育を行うことは、れっきとした動物虐待です。
また、発情期に入った猫はホルモン分泌の影響で乳腺腫瘍にある可能性もあるため、飼育する場合は猫のためにも周辺環境のためにも、避妊・去勢手術を行うことを推奨します。

野良猫問題に対する行政の反応

既にいる野良猫への対策

猫をはじめとしたペットの飼育に起因した問題は、長年マナーや周辺住民間のみの問題として捉えられていました。
しかし、近年では動物愛護や環境保護の観点から行政機関による対策を求める声が多数挙がったことにより、各自治体による野良猫問題への取り組みが活発化しています。

行政による野良猫問題対策の一つは、「忌避剤を用いた住居への野良猫防止」です。
ただし、この方法はあくまでも一時的な対症療法となっており、根本的な解決を図るためには、やはり野良猫の頭数を削減することが必要です。
頭数削減に向けたより具体的な方法としては、「繁殖制限による増加防止」と「捕獲・保護による削減」が挙げられています。

そもそも前提として野良猫の中には、「所有者がいる外飼い猫」と「所有者がいない猫」の2パターンが混在しています。
外飼い猫の場合、その所有者は動物愛護管理法7条に定められた「動物の所有者又は占有者の責務」を負っており、適正な飼育を行う努力義務が課されています。
この適正な飼育とは「屋内飼育に努めること」を指しており、もし屋内飼育を行っていない場合は、周辺環境への被害防止措置、そして繁殖制限措置を行うことが求められます。

この点をより周知させるべく、国及び自治体では適正な飼育の徹底を図るための普及啓発活動が行われています。
また自治体によっては繁殖制限を推進する措置として、飼い猫への避妊・去勢手術の費用助成を行っているケースもあります。

野良猫を増やさないための対策

野良猫および外飼い猫に関する問題の対策が進められる一方で、これ以上「野良猫化」する猫を増やさないための働きかけも行われています。

元々飼い主がおらず純粋な野生状態にある猫であれば、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護管理法)の対象に含まれるため、法に基づく捕獲・保護が可能となっています。
しかし、人間の生活圏にいる野良猫は、多くの場合人と密接に関わりながら生活しています。
このような野良猫は「純粋な野生猫」とは異なるため、鳥獣保護法の対象から除外されてしまうのです。

そのため、動物愛護管理法35条1項では都道府県等に対して、「犬又は猫の引取りを求められたときは引き取らなければならない」と定めています。
ただ、これだけを見れば「住民が連れてきた猫を自治体が引き取ることで、野良猫の頭数を削減できるのでは?」と思えますが、同じく35条の3項では「飼い主の判別が不明な猫」が持ち込まれた場合には、周辺の生活環境に被害が及ぶ可能性があるなどの一定の条件を除き、引取りの拒否を行うことが認められています。
これにより多くの自治体では、明確な理由がない限り猫の引取りを拒否しているのが現状です。

行政が「飼い主不明」の猫を引き取らない理由

行政が飼い主の判明しない猫の引取りを拒否する背景には、猫の飼い主を調べる制度や、所有権に関する規定がまだまだ十分に定まっていないことが挙げられます。

前述したように、野良猫には「飼い主がいる猫」と「飼い主がいない猫」の2パターンが混在しています。
もし飼い主のいる猫が住民により持ち込まれ、行政が第三者に譲渡したあとに飼い主が発覚した場合は、その猫の所有権をめぐってトラブルが起こる可能性があります。
その他にも様々なリスクがあるため、自治体による積極的な引き取りは、現時点では難しいと言えるでしょう。

地域猫活動

行政による取り組みとは別に、住民やボランティアが軸となって行われている活動が「地域猫活動」です。
地域猫活動では民間が行政と連携を取りながら、「飼い主のいない猫の保護」及び「地域住民と野良猫の共生」を目指した取り組みが行われています。

地域猫活動の中心となっているのが、「TNR」というキーワードです。
TNRとは「Trap(野良猫の捕獲)」「Neuter(野良猫の不妊化)」「Return(捕獲した場所に戻す)」の頭文字で、「すべての猫に不妊去勢手術を行い、出産による野良猫の増加を抑制する」という目標が込められています。
TNRを順調に達成すれば、外部地域から猫が流入しない限り野良猫の数は減少していくと考えられています。

しかし一方で、「TNRでは根本的な野良猫問題の解決にはならない」「むしろ野良猫問題を深刻化させるのでは」という声も挙がっています。
なぜかと言うと、TNRを行うためには、野良猫の警戒心を解き、捕獲するために餌やりを行う必要があり、もしこの餌やりの管理を怠った場合は、無秩序な餌やりと同様の問題を引き起こす可能性もあるからです。
そのため、現在地域猫活動ではTNRに力を入れるだけでなく、地域の合意を得た上での餌場やトイレの設置、それらの管理や掃除、野良猫の飼い主探しなど様々なアプローチが行われています。

まとめ

今回は環境問題の一つとも言われている、野良猫を取り巻く問題について見ていきました。
老若男女問わず「猫好き」という人は多いですが、その中でも野良猫問題について深く降り下げて考える人は意外と少ないかもしれません。
「猫の幸せのために私たち人間が出来ることは何なのか」について考える人が、今後は少しでも増えていって欲しいものですね。

参考URL:動物愛護管理法(環境省)
参考URL:TNR先行型地域猫(公益財団法人 どうぶつ基金)

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