昔は「獣の皮」に食べ物を入れていた!?意外と知らない食品容器・包装の歴史

カルチャー&ライフ

外食することが難しくなったこのコロナ禍では、テイクアウトやデリバリーを利用する人も多くなっています。
そんなテイクアウトやデリバリーに無くてはならない存在が、食品容器・包装です。
これがあるおかげで、私たちは食品を美味しく清潔なまま受け取り、食卓に並べることができます。

災害時に備えた備蓄食も、缶など密閉力のある容器のおかげで長期間保存することができます。
人々のエコへの意識が高まる昨今では、食品容器・包装の原料をプラスチック製から紙製に変える企業も増えています。

そんな食品容器・包装ですが、そもそも一体いつ、どのような流れで誕生したのでしょうか。
今回は、食品流通システムの発展と共に進化した食品容器・包装の歴史について見ていきましょう。

食品容器・包装のはじまり

食品容器・包装の文化が生まれたのは、人類の生活様式が草原を駆け回って獲物を捕らえる「狩猟」から、一つの場所に定住して馬や羊を飼う「牧畜」に移行してからだと言われています。
この頃、腐りやすい肉を長持ちさせるための燻製技術と同時に、ワラ、木、竹、貝殻などを利用した食品包装技術も発達しました。
中には、獣の皮や内臓で作った皮袋に食品を入れて保存するという方法もあったそうです。

やがて火を使った調理技術が飛躍的に向上すると、より大きく頑丈な容器が求められるようになります。
そこで生み出されたのが土で作った「土器」で、この技術は日本では縄文時代から弥生時代にかけて発展しました。
その後、陶磁器、青銅、鉄、ガラスなどを使った容器が続々登場するとともに装飾技術も進歩し、食品容器は単に食糧や飲み物を入れるためのものではなく、芸術品として楽しむ存在にもなりました。

文明の発展と共に食品包装文化は世界各地に広がり、人類の発展にも多大な貢献を与えることになります。
たとえば古代ローマでは、ローマ帝国の拡大とともに皮袋や陶器の壺に入れた酒類を遠方に輸送する習慣が生まれ、大航海時代には樽を使った食糧や水の貯蔵技術が発展しました。

食品容器・包装の近代化

缶・瓶が生まれたきっかけはあのナポレオン?

中世になり科学が発展すると、缶や瓶など現代でも使われている容器が開発されます。
従来に比べて圧倒的に密封、殺菌、保存能力が高かった缶や瓶は、たちまち食品容器の主流となり、欧州全土で長期にわたり勃発した宗教戦争における軍用食糧の確保と保存に大いに利用されました。

実は缶・瓶が発明された背景には、あの伝説のフランス皇帝・ナポレオンの存在があると言われています。
フランス革命後、ナポレオンは軍用食糧を確保するため、密閉性と殺菌性の高い新しい食品貯蔵方法を、懸賞金を懸けて募りました。
それにより発明されたのが、瓶による加熱処理方法と、瓶に食品を入れてコルクで栓をし、煮沸加熱する瓶詰の製造法です。

発明当初、この瓶詰は長期保存に適していたため重宝されていましたが、持ち運ぶには重くまた割れやすいことから、後に缶詰が発明されたと言われています。

缶・瓶の発展の歴史

開発当初の瓶はコルクで栓をし、その上から蝋を垂らして密閉していましたが、後にねじ巻き式の蓋が開発され、これは今でも瓶蓋の主流となっています。
前述したようにその重さと割れやすさから次第に缶に取って代わられるようになりましたが、中身が見える便利さ、口当たりの良さ、再利用のしやすさなどのメリットから、今でも飲料容器などに利用されています。

一方、瓶に代わる保存容器として開発されたブリキ缶は、当初はすべて手作業で作られており、スープなどの中身を入れた缶にはんだで蓋を取り付けていたため、食品容器としては決して衛生的とは言えませんでした。
その点を改良するべく編み出されたのが、「二重巻締法」という技術です。
この技術により、缶にはんだが混入するのを完全に防ぐことが可能となったことで、缶は密閉性も高く衛生的にも優れた食品容器となりました。

また、缶内部の酸素除去や加熱殺菌技術も飛躍的に向上し、今では「最も理想的な食品保存容器」と言われるに至っています。
その後も、缶切りいらずの蓋やゴミの排出を減らせるプルタブ缶など、缶を取り巻く技術は日々進化しています。

プラスチック容器の大量流通

戦後大量流通したプラスチック容器

2度の世界大戦後、経済成長に伴う大量販売・大量消費時代が到来すると、新たに開発されたプラスチック容器が大量生産され、食品容器の主流となります。
同時に、ビンや缶よりも軽量かつ低価格で加工できる紙を使った容器も大量生産されるようになりました。
特に、戦後の目覚ましい技術革新によって開発された合成樹脂から生まれたプラスチックからは、買い物用の袋、カップ、トレイ、ペットボトルなど、さまざまな形態の食品容器が製品化されました。

その後、今までは魚屋や八百屋など個々での対面式販売が主流となっていた食料品がすべてスーパーマーケットに集約され、大量に陳列・販売されるようになると、プラスチック容器は鮮度維持、省スペース、輸送のしやすさなど、あらゆる面で重宝されるようになりました。

大量生産が招いた「プラスチックごみ問題」

プラスチック容器が重宝される一方で、分別の習慣や再利用技術がプラスチック容器の大量生産に追い付かず、その結果近年では、プラスチックごみによる海洋汚染などの環境問題が深刻化しています。

プラスチックごみの国別海洋流出量を見ると日本は30位となっていますが、プラスチックの生産量では日本は世界3位にランクインしています。
実はアジア諸国に流通しているプラスチック製品のほとんどは、日本からの輸出品なのです。

また、国連環境計画(UNEP)が2018年6月に発表した報告書によると、1人あたりのプラスチックごみ廃棄量の世界1位はアメリカに、2位が日本であることが分かっています。
プラスチックごみを廃棄している総合量では、日本は世界5位となっています。

日本は今、プラスチックごみの排出を減らすとともに、プラスチック製に代わる食品容器の在り方について考える局面にあると言えるでしょう。

これからの食品容器・包装

プラスチック製に代わる食品容器が開発される中で、改めて今、紙製の容器が注目を集めています。
プラスチック容器と同時期に登場したにもかかわらず紙製の容器が普及しなかった理由としては、耐水性や耐油性に欠け、中身が酸化しやすいなどの欠点がありました。

しかし、近年では容器の内側に植物由来の樹脂で作ったフィルムを貼り付けた、水や油に強い紙製容器も登場しています。
また、森林伐採につながらない竹パルプや間伐材などを使用した容器も開発されています。

紙製容器はナチュラルで暖かみのある風合いとなっているため、「食品をお洒落に彩ることが出来る」という理由から取り入れる飲食店も増えています。
最近では、キットカットやブロンコビリーなどが紙製の包装や容器を取り入れたことも話題となりました。
食品容器・包装におけるプラスチック製から紙製への移行は、今後ますます進んでいくことでしょう。

まとめ

今回は、食品容器・包装の歴史について紹介していきました。
その想像以上に深い歴史は、今日の食文化の一端を担っていると言っても過言ではないかもしれませんね。
今度テイクアウトやデリバリーをする際には、頼んだメニューだけではなく、容器や包装にも少し注目してみてはいかがでしょうか。

参考URL:
・包装技術ねっと「古代~近代・包装資材の歴史」
・日本製缶協会「製缶技術の変遷・金属缶の歴史」
・国連環境計画「2018年度 年次報告書」

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