太陽光発電においてパワーコンディショナー(以下、パワコン)は、発電した電力を家庭で使用できるようにする重要な役割を果たしています。長年使っていると故障する可能性が高くなるため交換する必要がありますが、交換時期や費用について知らないという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、太陽光発電システム用パワコンの交換時期や、交換にかかる費用などについて解説します。
パワコンとは?
パワコンとはパワーコンディショナーシステム(PCS)の略で、太陽光パネルで発電した電力を家庭で使用できる電力に変換するためのものです。
太陽光で発電した電力が「直流電力」であるのに対し、私たちが家庭で利用する電力は「交流電力」です。つまり太陽光発電システムで生み出した電力を使って家庭内の電化製品を利用するためには、直流電力を交流電力に変換する必要があるのです。その役割を果たすのがパワコンです。
また、電力の変換以外にも天候や日照時間に左右されずに発電効率が最大になるように自動調整する「MPPT(最大電力追従制御)」や、売電する際の出力電圧を調整する「逆潮流制御機能」といった機能も備えています。
パワコンの寿命は何年?
一般的にパワコンの耐用年数は10~15年と言われています。これはテレビ冷蔵庫、エアコン、電子レンジなどの家電製品とほぼ同じ年数です。
パワコンは電力を変換する精密機器なので、設置から10年が過ぎれば半導体やフィルター、コンデンサーなどが劣化してくる可能性があります。また、設置場所によっては温度や湿度の影響を受けてもっと早くに寿命を迎える場合もあります。
一方ソーラーパネルは、パワコンよりはるかに長持ちします。国税庁が定めた法定耐用年数は17年であるものの、実際には20~30年、場合によっては40年以上使われるケースも多いです。つまりソーラーパネルが長持ちするのに対してパワコンは10~15年で寿命を迎えるため、太陽光発電システムを運用している間に最低でも1回はパワコンの交換が必要になるのです。
劣化の原因
パワコンが劣化・故障する原因はおもに次の2つです。
①換気フィルターの目詰まり
パワコンに関するトラブルの中で最も多いのが、換気フィルターの目詰まりによるもの。パワコンの性能を維持するためには、電流変換回路の心臓部であるパワー半導体が排出する熱をいかに効率良く発散するかが重要です。フィルターが目詰まりして熱の発散が不十分だった場合、安全機能が作動してパワコンの稼働が停止してしまいす。そのためメーカーの多くは半年に1回、少なくとも1年に1回の頻度でフィルターの清掃をすることを推奨しています。
②雨水の入り込み
パワコン本体に雨水が入り込むことも劣化に繋がります。モジュールの隙間から落ちた雨水が数カ月かけて徐々に浸水するパターンもあります。また、パワコンと電気系統を繋ぐケーブルが劣化していることが原因で、雨により漏電ブレーカーが作動しパワコンの運転が停止してしまうこともあります。
寿命の見分け方
では、パワコンが寿命を迎えて交換するタイミングは一体どのように見極めればよいのでしょう。交換の目安となるポイントは以下です。
①発電量が極端に減る
②エラーコードが表示されている
③パワコンの表示が消えている
発電量が突然落ちた場合は、パワコンの故障が疑われます。また、普段発電量が表示されている場所に英数字のエラーコードが表示されていたり、何も表示されていない場合も故障の可能性が高いです。経年劣化のほかに自然災害などが故障のきっかけになるケースも多いので、そのような場合には必ずパワコン本体の様子を確認するようにしましょう。
パワコン交換のメリット
パワコンに異常が見つかった場合は該当箇所の修理か部品交換、またはパワコンごと交換する必要があります。ここで多くの人は「パワコンごと交換するのは手間もお金もかかりそうだし、できれば部品のみの交換にしたい…」と思うのではないでしょうか。しかし長い目で見れば、部品だけを交換するよりもパワコン自体を交換した方がお得です。
部品交換を繰り返すより割安
パワコンの設置からまだ何年も経っていない場合のであれば異常のある箇所のみの修理交換でも問題ないかもしれませんが、パワコンの耐用年数が近い場合はたとえ一部を修理交換してもまたすぐ他の箇所に異常が見つかる可能性が高いです。そうして故障と修理交換を何度も繰り返していると、いつの間にかパワコン全体を交換するよりも費用がかさんでしまうこともあります。
また、購入してから10年以上経ったパワコンの場合、そもそも部品の在庫が無くなっていることもあります。そのため設置から10年近くたっているパワコンであれば、早い段階で本体ごと交換するのが賢い選択と言えます。
高性能な最新モデルを使える
もう一つ、パワコンを交換する大きなメリット「最新モデルを使える」ということです。ほかの家電と同様に、10年前の機種と最新の機種とでは性能に大きな差があります。近年のパワコンは変換効率や省エネ性が向上しているのはもちろん、デザインやサイズなどもかなり豊富になっています。最新機種のパワコンは10年前のパワコンに比べて発電効率が高いので、交換費用こそかかるものの長い目で見れば最先端の高性能パワコンに交換した方が経済的メリットは大きいと言えるでしょう。
パワコン交換のデメリット
パワコンを交換するデメリットを挙げるとすれば、やはり費用が高額であるということです。思ってもみなかったタイミングで故障が発生した場合、いきなり交換とためらってしまう人も多いでしょう。
また、旧パワコンと異なるメーカー製のパワコンに交換した場合、表示モニターや接続ユニットなどの周辺機器と互換性がなくなってしまう可能性があります。同じメーカー製の場合も、最新モデルと旧型では周辺機器の仕様が変わっている可能性があるので、やはりパワコンを交換する際は周辺機器ごと交換する必要があります。
交換時期を過ぎたパワコンを使い続けるとどうなる?
寿命を大幅に過ぎたパワコンを使用し続けた場合、変換効率が落ちていきます。変換効率が落ちると発電量が減るので、当然ながら売電収入や自家消費できる電力量も減ってしまいます。そうなると太陽光発電を運用するメリット自体が薄まってしまいます。
さらに放置した場合、完全な発電停止や停電、火災などのトラブルに見舞われるおそれもあります。経済的メリットだけでなく安全面からも、やはり耐用年数を過ぎたパソコンは交換すべきだと言えます。
パワコンの交換費用は?
パワコンの交換費用は部品購入・施工代を含めて30~40万円程度です。部品のみ交換の場合は5万円程度が目安で、使用しているパワコンが保証期間中であれば無償で交換できることもあります。
パワコンの保証期間は長ければ10~15年、短ければ1~3年とメーカーによってさまざまですが、近年では10年の保証期間を設けているケースが一般的です。さらに10年間の保証期間をベースとして5年の延長保証(有料)を追加できるプランを用意しているメーカーもあります。
また、以前はパワコンを交換した場合に新しいパワコンに保証を付けられないケースが一般的でしたが、近年では交換したタイミングで新しく保証を設定するメーカーが増えています。例えば10年の保証期間中にパワコンが故障して交換した場合、新たに10年間の保証が新しいパワコンに設。けられるという具合です。このようにメーカーによって保証内容が異なるため、新たにパワコンを購入する場合は製品だけでなく保証内容もメーカー選びのポイントになりそうですね。
パワコンを交換する流れは?
ここからは、パワコンの買い替えから設置するまでの流れについて解説していきます。
①型番・状況を確認する
パワコンの不具合に気づいたら、まずはパワコンの型番を確認します。さらに不具合が起きている箇所や太陽光発電システムの状況などを確認して、メーカーか施工店に問い合わせます。
②修理か交換かの検討・見積もり
メーカーまたは施工店に相談しながら「部品だけの交換で良いのか」「パワコンごと交換するならどのモデルが良いか」などを検討します。修理するのか交換するのかが決まったら、見積もりを立てて施工日を確定します。
③交換工事開始
決まった施工日に業者が訪問して交換工事を行います。工事後は新しいパワコンと周辺機器の接続が確認でき次第、運転を開始します。なお状況によって、パワコンに加えて接続箱や表示モニターなど周辺機器の交換をすることもあります。工事開始から運転開始までは、半日~1日程度になるのが一般的です。
パワコンを交換する際は蓄電池の導入も検討を!
現在パワコンの交換を検討しているのであれば、あわせて蓄電池の導入も検討することをお勧めします。
ここ数年の間に、太陽光発電の運用目的は「売電」から「自家消費」に移行し
ています。これは再生可能エネルギーをもとに発電した電気を国が一定期間、一定価格で買い取る「固定買取価格制度(FIT法)」に関係しています。日本ではFIT法の前身となる「余剰電力買取制度」が2009年にスタートしているため、当時太陽光発電システムを導入した家庭では2019年にFIT法の適用期間が終了しています。太陽光発電の買取価格は下落の一途を辿っており、FIT法が適用されない家庭が売電で得ることができる収益は微々たるものです。そのためFIT法の適用期間が終了した家庭では、蓄電池を導入することにより太陽光発電を売電するのではなく自家消費する動きが広まっているのです。ですからパワコンを交換する際には、蓄電池の導入についてもあわせて検討するのがおすすめです。
蓄電池の導入に関して詳しく紹介した記事もあるので、ぜひあわせてチェックしてください。
また太陽光発電と蓄電池にはそれぞれパワコンが必要ですが、1台にまとめて活用できるハイブリッドパワコンも存在します。両方の役割を果たす機器を導入すれば、1台のパワコンで太陽光で発電した電力を蓄電しながら自家消費することも可能です。
まとめ
10年以上使用したパワコンは、本体ごと交換した方が長い目で見るとお得になることがわかりましたね。パワコンの交換をご検討の際は、ぜひ「太陽光発電最安値発掘隊」までお問い合わせください。太陽光発電システムを長年扱ってきた熟練スタッフが、お客様にピッタリのパワコン選びから施工まで真摯にサポートいたします。いつでもお気軽にご相談ください。