コロナ以降、ニーズが急上昇!今「農泊」が注目されている理由とは

自然

2年以上猛威を振るっていた新型コロナウイルスも少しずつ落ち着き始め、近頃ではちょっとした遠出を楽しむ人も増えています。
もちろん引き続き感染対策は必要ですが、先の見えない自粛生活で溜まったストレスを発散するためにも、時には外出してリフレッシュすることも必要ですよね。

そんな今、「久々に遠出するとしたらどこがいいかな、何をしようかな」と悩んでいる人にお勧めしたいのが「農泊」です。
今回は、「農泊とは何か」「なぜ今、農泊が注目されているのか」などについて解説していきます。

農泊とは

農泊とは、農山漁村地域に宿泊しながら、地域ならではの体験や食事を通して滞在を楽しむ旅行の在り方です。
地域と農林水産業の活性化を促すことを目的に、近年政府が力を入れている取り組みです。

農泊が関心を集めるようになったのは、2016年3月、政府が「世界が訪れたくなる日本」を目指し、「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定したことがきっかけです。
この中で、政府は農泊を推進し、2020年までに全国の農山漁村で50の地域を創出することを目標に掲げています。
また、2017年に閣議決定した「観光立国推進基本計画」においては、農泊をビジネスとして実施できる地域を、2020年までに500地域にするという目標も示されています。

その後、農山漁村の活性化を包括的に支援するためにスタートした補助金制度の「農山漁村振興交付金」は農泊推進対策も対象となっており、2021年度末の時点で農泊推進対策を採択している地域は600地域近くとなっています。

農泊における主な地域資源

農泊では「地産地消」をテーマに、郷土料理や創作料理を通して地域の食文化を発信しています。
海産物や野菜はもちろん、中にはジビエを堪能できる農泊先もあります。

また、農林水産省は農泊推進対策の一環として、2016年より「SAVOR JAPAN」の認定を行っています。
SAVOR JAPAN(農泊 食文化発信地域)とは、地域の食や食にまつわる文化などの魅力を海外に発信し、インバウンド誘致の活性化に貢献した地域に送られる認定です。
2022年5月時点では、北海道十勝地域、長野県伊那市、宮崎県高千穂峡・椎葉山地域を含む計31地域がSAVOR JAPANに認定されています。

宿泊

農泊における宿泊先は、民泊やホテル・民宿はもちろん、地域によっては修繕した廃校や古民家などユニークなものまであります。
りっぱな地域資源である廃校や古民家を宿泊施設として提供することは、これらの価値を維持し、後世まで残していく効果があると考えられています。
各宿泊先では、地域の人々と交流しながら郷土料理を味わったり、工芸品を作ったりすることができます。

体験

農泊では、ミカン狩りやカヌー体験、そば打ちや紙漉しなど、その地域ならではのアクティビティを楽しむことができます。
地域の人々の暮らしを体験することで、農泊者は都会の生活に疲れた心身をリフレッシュできるとともに、郷土文化への理解を深めることができます。

景観+α

日本農業遺産に登録されている山梨県の「複合果樹園システム」、世界農業遺産に登録されている岐阜県の「長良川中流域」など、その地域でしか見ることのできない景観を、農泊なら時間に追われず堪能することができます。

今、農泊が注目されている理由

「世界が訪れたくなる国」を目指して「明日の日本を抱える観光ビジョン」が策定されたことから分かるように、農泊は当初国内からの利用者に限らず、インバウンド(訪日外国人旅行)に向けた取り組みとして掲げられました。

しかし、2020年初頭に新型コロナウイルスが世界的に流行して以降、インバウンドビジネスは過去に類を見ないほどの大打撃を受けました。
観光庁のデータによると、2019年の訪日外国人客は約3,188万人であるのに対し、2020年には約411.6万人にまで激減しています。
さらに2021年には約24万5900人と、2020年をも大きく下回る結果となっています。

2022年以降は世界中で少しずつ行動規制の緩和が進み、インバウンドも徐々に回復していくと考えられていますが、2019年以前の数字に戻るにはまだまだ時間がかかるものと考えられています。

インバウンド需要が低迷する一方、国内では意外にも農泊ニーズが高まっていると言われています。
その理由は、「コロナ渦におけるリモートワークの普及」です。 今まで首都圏のオフィスで働いていた人々(主にクリエイティブワーカー)の中には、リモートワークの導入をきっかけに都会を離れ、観光地に滞在しながら仕事も行う「ワーケーション」にトライする人も増えているようです。
数ある観光地の中でも、農山漁村は開放感があり「三密」状態になりにくいこと、また「自然に癒されたい」という思いから滞在先として希望する人が多いと言われています。

新しい生活様式が浸透した今、農泊への注目が高まるのは当然なのかもしれません。

農泊の実施例

北海道余市町

北海道余市町は札幌から日帰り圏内であるため、長年通過型観光地域にとどまっていました。
しかし、2018年に「北海道版構造改革・地域再生特区」に認定されてからは、地域農家が生産した果実を使ったフードやドリンクを製造・提供する農家民宿や農家レストランの整備を拡大するなど、農泊事業に積極的に取り組んでいます。

たとえば「農家民宿まるまったファーム21」では、滞在を通してりんごやさくらんぼなどの果樹栽培の歴史に触れることができます。
また、2011年から「ワイン特区」に指定されている余市町では、ブドウ畑の散策や収穫を体験できるワイナリーツアーも実施されています。

その他、余市の海産物を使った寿司握り体験や希少な現役女性漁師によるウニ剥き体験など、さまざまなプランを組み合わせえて農泊を楽しむことができます。

三重県鳥羽市

三重県鳥羽市は、「日本一現役の海女が多い町」として「相差(おうさつ)地域海女文化活性化協議会」を設立し、農泊ならぬ渚泊(なぎさはく)の推進に取り組んでいます。

町の中には現役の海女と交流できる「海女小屋 相差かまど」や、海女の信仰を体験しながら学べる散策コースなどが整備されています。
お土産売り場では、海女さんが海に潜る際に身に着けるセーマン(星形)やドーマン(格子縞)印のお守りが販売されるなど、古くからの海女文化や風習を広める取り組みが活発です。
もちろん食事処では、地域で獲れた旬の海の幸を味わうことができます。

これらの取り組みで得た利益の一部は、地域の海洋資源の保護、海女さんの所得向上、海女後継者の育成などに充てられています。

京都南丹市

京都県南丹市の美山地区には有形文化財として登録されている茅葺集落があります。
南丹市はそれらの茅葺古民家を宿泊施設として活用し、地域の活性化を図っています。

古民家運営の中心となっている株式会社ニシオサプライズが経営する古民家宿泊施設では、古民家滞在のハードルを下げるべく基本的に「泊食分離」となっています。
宿泊施設に併設されたレストランで食事をするのはもちろん、自炊やケータリングにも対応しています。

ちなみに、宿泊できるレストランの「オーベルジュナカザワ」では地域の食材を使ったフランス料理を、食品工房の「美山おもしろ農民俱楽部」では手造りの無添加ハム・ソーセージなどを楽しむことができます。

まとめ

農泊のことを知って、一度は体験してみたくなったのではないでしょうか?
なお、各地域の農泊状況は新型コロナウイルスの感染状況によって変わる可能性があるため、気になった場合はHPを事前にしっかりチェックしておきましょう。

参考URL:農泊をめぐる状況について
参考URL:多様な農泊の取組事例集

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