近年、日本では自然災害に対する防災意識や環境改善への意識が高まり、太陽光発電システムを導入する住宅が各地で着実に増えてきています。
しかし、実は地域によっては、発電量に大きく差が出る場合があることをご存知でしょうか?
太陽光発電はその名の通り、太陽の光をエネルギーにして電気を生むため、必然的に日照時間の長い地域の方がより多く発電できることが分かっています。
とはいえ、たとえ日照時間が短い地域だったとしても、工夫次第では十分な発電量を確保することも可能です。
そこで今回は、日照時間の長い県・短い県、住宅用システム普及率の高い県などをそれぞれ知った上で、なるべく多く発電するためにはどう工夫するべきかを、しっかりチェックしていきましょう。
日本各地の日照時間を知ろう!
日照時間の長い地域
日照時間が長い地域としてまず関東の中で挙げられるのは、埼玉県さいたま市と群馬県高崎市です。
この2地域は雲の量が少ない「快晴日」が全国的に見ても多く、また内陸部に位置しているため、潮風による塩害被害なども受けにくいと言われています。
特に埼玉県では、県が積極的に自家発電、及び自家消費を支援し促した結果、全国的に見ても住宅用システムの普及率が高い県となっています。
中部地方に位置する山梨県は甲府市・北杜市もまた、日照時間の長い地域として名をはせています。
四方を山に囲まれた甲府盆地は雲が侵入しにくく、その地形上快晴日が多いため、結果的に日照時間の長さに繋がっていると言われています。
そして山梨県も埼玉県同様、太陽光発電を始めとした再エネ普及に県を挙げて長年取り組んでいます。
日照時間が長いと言われている地域は、どこもその恩恵を無駄にすることなく、積極的に活用の場を広げていることが分かりますね。
日照時間の短い地域
「日本で最も日照時間が短い」と言われているのが、秋田県秋田市です。
秋田県は日本の中でも特に豪雪地帯として知られており、また夏でも曇りの日、雨の日が多いことから、結果的に日照時間の短さに繋がっていると言われています。
同じく東北地方に位置する山形県と青森県も、あまり日照時間が長くないことで知られています。
このように日照時間の短い地域では、日照時間の長い地域に比べると、どうしても発電量は若干落ちてしまいます。
では、やはり太陽光発電システムの設置には向いていないのかというと、一概にそうとも言い切れません。
自分の暮らしている地域の特性をよく理解し、そのうえで適切な製品を選ぶことが大切ですが、その点については2章の方で詳しく説明していきます。
北海道と沖縄は太陽光発電に向き?不向き?
日照時間の長い地域と聞くと、最初は沖縄県を含む九州地方を思い浮かべた方が多かったのではないでしょうか。
実際、宮崎県や高知県は全国的に見ても日照時間が長いと言われていますが、九州全体を見た場合には、そうとも言い切れない面があります。
中でも常に青空が広がっているイメージの強い沖縄県は、実は12~3月頃は曇りの日や雨の日が多く、夏でも1日の間の天気が変わりやすいと言われています。
また沖縄県はその位置上、例年多くの台風に見舞われています。
このことから分かるように、沖縄県の日照時間はあまり長くはないと言えるでしょう。
ただ、年間を通して見た沖縄県の最高気温は、実際のところ全国的に見ても低いということが分かっており、この点においては熱に弱いソーラーパネルに適した環境とも言えます。
一方、日照時間の短い秋田県に近く、日本で最も北に位置する北海道の場合も、やはり太陽光発電を行うには不利なのでしょうか。
実は意外にも北海道は、むしろ太陽光発電に向いているとの声が年々多くなっています。
そう言われる理由の1つに、北海道には日本で唯一梅雨がないという点が挙げられます。
また、台風の影響も受けにくい場所に位置しているため、冬場は大雪の心配こそあれど、年間を通してみれば比較的安定した天候、気候を保っていると言えます。
さらに日本最北端の稚内では、雪に反射した太陽光で発電を行う両面メガソーラーが設置されており、土地が持つ特性を存分に活かした取り組みが続けられています。
ちなみに北海道に設置する上で懸念される「積雪問題」ですが、ソーラーパネルの表面は滑りやすくなっており、またパネルが発する熱により雪は自然に落ちることが多いため、過剰に心配し過ぎる必要はありません。
むしろ注意すべきなのは、落雪による事故の可能性です。
雪が降った後はこまめに雪かきを行う、または雪止めの設置を検討するなど、できる範囲で対策を行うと良いでしょう。
最も住宅用システムの普及率が高いのは〇〇県
JPEAこと太陽光発電協会の調査によると、2017年には日本の戸建総数のうち、8.3%が太陽光発電システムを導入したことが分かっています。
また、総務省統計局の出したデータによると、2018年時点で最も太陽光発電システムの設置率が高いのは佐賀県、2位が長野県、3位が宮崎県だと言われています。
そして日本で一番日照時間が長いと言われている山梨県は、栃木県と並んで4位となっています。
ちなみに佐賀県が普及率1位に輝いたのは、2018年が初めてではありません。
日照度や快晴日率が特段に高いわけではない佐賀県が、なぜこれほどの普及率を誇っているのでしょうか。
実は、佐賀県はかねてより「太陽王国・佐賀」というスローガンを掲げ、長年行政による地道な普及促進活動が行われてきました。
その活動が功を奏し今や住宅用のみならず、事業用メガソーラーの普及においても、目覚ましい広がりを見せています。
発電量をできるだけ増やすには
ここまで、各地の日照時間や住宅用システムの普及率を見ていきましたが、中には「自分の住んでいる地域は太陽光発電に向いてないかも…」とショックを受けた方もいるかもしれません。
しかし、まだ諦めることはありません。
先ほども述べたように、大切なのはどの製品を選ぶかということです。
近年では、あらゆる気候及び地域条件に合ったソーラーパネルが多く登場しております。
たとえばパナソニックが販売している「HIT」というシリーズは高温耐性が高いため、気温が上昇しやすい地域への設置に適しています。
またQセルズというメーカーは、曇りの日が多く極寒の地と言われているドイツのライプチヒに研究施設を構えています。
そのような環境下で独自開発した「Q.ANTUM(クアンタム)テクノロジー」を用いたソーラーパネルは、照度の低い地域でも高い実発電量が確保できる点に定評があります。
このように、ソーラーパネルは一見同じように見えても、メーカーやシリーズによってその特性は様々です。
最も満足のいくパネルを見つけるためにも、お住いの地域の気候などを事前に確認することは大変重要と言えるでしょう。
また、当コラムの他記事でも度々述べていますが、ソーラーパネルを設置する方角はやはり、太陽光が長時間当たる南側が最も適しています。
他の方角には設置できないというわけではありませんが、やはり南側に設置した場合と比べると、どうしても発電量には差が出てしまうでしょう。
その場合は設置するパネルの枚数を増やしたり、高い発電効率のパネルを選ぶことで、ある程度は発電量を増やすことも不可能ではありません。
いずれにせよメーカーや施工店とよく話し合い、設置する製品や方角を決めることが肝要です。
まとめ
日本各地の気候や地形事情、また住宅用システムの普及率を知ることで、太陽光発電を少しでも身近に感じていただけましたでしょうか?
一見設置に向いていなさそうな土地でも、もしかしたら思わぬポテンシャルを秘めているかもしれませんね。