2022年6月7日、政府は全国に対し、節電協力を呼びかけることを決定しました。
対象となる期間は今夏および今冬を想定しており、特にエネルギー需給が厳しい状況になると考えられている冬には、計画停電などを実施する可能性もあるとのことです。
東日本大震災が発生した2011年から2015年までの間は、毎年夏と冬に節電要請が行われていましたが、一部原発の再稼働や再生可能エネルギーによる発電の普及によって電力供給が安定したため、それ以降は要請されることはありませんでした。
つまり政府が節電要請をするのは、2015年以来実に7年ぶりとなります。
そこまで電力需給がひっ迫している理由とは、一体何なのでしょうか。
今回は、節電要請が発表された要因と考えられる出来事と、私たちにできる節電方法について解説していきたいと思います。
節電要請が発表された要因
2022年3月に福島県沖で発生した地震
2022年3月16日、福島県沖を震源とする震度が発生し、福島県と宮城県で震度6強を観測しました。
この地震によって、東北にあるいくつかの火力発電所が自動停止し、さらに当時関東地方に寒波が迫っていたことも加わって、3月21日には東日本エリアに「電力需給ひっ迫警報」が発令されました。
それから数か月経ち、多くの火力発電所は運転を再開しましたが、一方で未だに復旧に至っていない発電所もあります。
老朽化した火力発電所の休止・廃止
近年、脱炭素化や電力自由化が進んだことを受け、老朽化した火力発電所の休止や廃止が増えています。
2016年度から2021年までの間は特に増加しており、毎年度300万kW前後の火力発電所が休止・廃止となっていることが分かっています。
2022年3月には、東京電力ホールディングス(HD)と中部電力が50%ずつ出資している発電会社のJERAが、同社が所有する9基の火力発電所を廃止することを発表しました。
廃止が決まった9基はいずれも長年運転を停止していたため、電力需給にすぐに影響を与えるわけではありません。
しかし、これは火力発電所の休止・廃止が進んでいることを象徴する出来事だと言えます。
日本のエネルギー政策の方向性を示す「第6次エネルギー基本計画」では、火力発電の今後の在り方について次のように言及しています。
安定供給を大前提に、再生可能エネルギーの瞬時的・継続的な発電電力量の低下にも対応可能な供給力を持つ形で設備容量を確保しつつ、できる限り電源構成に占める火力発電比率を引き下げていくことが基本となる。
その際、安定供給の確保を前提として、火力発電の脱炭素化に向けた環境対応に取り組みつつ、環境対応下での火力の競争力の強化・経済効率性の向上といった課題に取り組んでいく必要がある。
引用文献:「第6次エネルギー基本計画(7)火力発電の今後の在り方」
この文章の通り、現在は徐々に火力発電比率を下げ、代わりに再生可能エネルギーの比率を上げている段階です。
しかし、太陽光や風力といった自然エネルギーを活用する再生可能エネルギーは天候に影響を受けやすく、発電量の振れ幅が大きいため、依然として火力発電に大部分を頼っているのが現状です。
世界的にエネルギー転換の過渡期にある今は、こうした状況によるエネルギーの不安定化が余儀なくされています。
新型コロナウイルス
2020年、新型コロナウイルスが世界的な感染拡大を見せて以降、私たちのライフスタイルや働き方には大きな変化が生じました。
仕事の会議や学校の授業がリモートで行われるようになり、休日に外出せず自宅で映画やゲームを楽しむ人が増えたことは、電力需要の変動を予測困難なものにしたと考えられています。
また、新型コロナウイルスの感染状況に合わせて緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令と解除を繰り返すことも、電力需要の予測を困難にし、供給不足を招くと考えられています。
ロシアによるウクライナ侵攻
ロシアは元々、石油と天然ガスの生産・輸出において世界トップクラスを誇っていました。
しかし2022年2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を開始したため、現在世界中でエネルギー供給の不安定化が進んでいます。
アメリカ、イギリス、ドイツなどの西側諸国は、ロシア産石油の輸入を停止するなど対ロシア制裁を行うことで「エネルギーの脱ロシア化」を加速させています。
中でも石油の3割超をロシアに依存するドイツや、石炭の5割超を依存するイタリアなどにとって、脱ロシア化はエネルギー政策における大きな決断だと言えます。
しかし、その過程においてエネルギー供給の一時的な不安定化は免れないでしょう。
一方、日本はドイツやイタリアほどロシア産エネルギーには依存していないものの、そもそもエネルギー自給率がたったの11.8%と著しく低いことが課題となっています。
そのため、国際的にエネルギー供給が不安定化すると、影響を大きく受けやすいと考えられています。
私たちにできる節電方法は?
ライフスタイルを見直す
電力不足を乗り越えるためには、私たち一人一人の協力が必要不可欠です。
とはいえ、「節電すると言っても何をしていいか分からない…」という方も多いのではないでしょうか。
そんな時は、まず普段のライフスタイルを見直してみることをお勧めします。
たとえば毎晩遅くまで起きていたり、テレビゲームを長時間やっていたりはしないでしょうか。
当てはまった場合、早寝を心掛け、ゲームのプレイ時間を1時間短くするだけでも、毎日の消費電力量を削減することができます。
その他、使わない照明はこまめに消す、冷蔵庫を必要以上に開けないなどの小さな心掛けも、毎日続ければ十分な節電効果を生みます。
また、意外と見落とされがちなのが待機電力です。
待機電力とは、コンセントにつないだままの家電が電源の切れている状態でも消費する電力のことです。
資源エネルギー庁が発表している「平成24年度エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(待機時消費電力調査)報告書概要」によると、一世帯当たりの待機電力量は年間約6,000円にもなることが分かっています。
日本全国の家庭で年間約6,000円分もの電力が無駄になっているのかと思うと、ゾッとしてしまいますね。
待機電力を生み出さないためには、エアコンはオフシーズン中コンセントを抜いておく、コンセントが密集する場所には節電タップを導入するなどの対策がお勧めです。
停電対策グッズを揃えておく
冒頭でも述べたように、今年は場合によっては計画停電が実施される可能性があります。
しかしそれ以前に電力供給不足に陥ってしまい、突然の停電に見舞われる可能性もゼロではありません。
突然の停電に動揺することがないよう、最低限の対策グッズは今のうちに揃えておいた方が良いでしょう。
停電時にあると安心なものは、以下の通りです。
・食料・飲料水(最低3日分)
・ラジオ
・乾電池
・モバイルバッテリー
・ランタンや懐中電灯などの照明
この他にも、夏場はうちわや扇子、冬場はダウンジャケットなどがあると安心でしょう。
「もう既に防災グッズとして揃えてある」という方も、食料などは賞味期限が切れている場合があるので、今一度チェックしてみることをお勧めします。
太陽光発電システムや蓄電池を導入する
太陽光発電システムで自家発電した電力を蓄電池に貯めておけば、電力不足による停電に見舞われても、昼夜問わず安心して過ごすことができます。
「両方導入するのは経済的に厳しい…!」という場合は、まずは蓄電池だけでも検討されることをお勧めします。
当社は太陽光発電システム、蓄電池ともに長年取り扱っている実績があるため、導入に関して気になる点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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まとめ
今回は、政府が節電要請を出した背景と、私たちにできる節電方法について解説しました。
一人一人ができる限りの対策を行い、何事もなく電力不足を乗り越えたいものですね。
参考:電力需給検証 新型コロナウイルスによる電力需要への影響評価(電力広域的運営推進機関)
参考:JERA、火力9基廃止(日本経済新聞)
参考:電力・ガスの原燃料を取り巻く動向について(資源エネルギー庁)