夏の風物詩・花火は環境問題の原因になる?近年開発が進む「環境に優しい花火」とは

環境問題

日本では、古くから夏の風物詩として親しまれている花火。
ここ1、2年は新型コロナウイルスの影響によって多くの花火大会が中止を余儀なくされていましたが、今年は感染状況を見つつ開催する地域もあるようです。
久しぶりの花火大会ということで、楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。

そんな花火ですが、実は近年では、「環境に悪影響ではないのか?」という観点から語られることも増えてきています。
そこで今回は、花火が環境に与えると考えられている影響と、開発が進む「地球に優しい花火」について解説します。

花火が環境に与えると考えられている影響

煙による大気汚染

花火が上がると、必然的に出るのが煙です。
花火の材料には、過塩素酸カリウム、炭素ストロンチウム、硫黄、鉛などが含まれており、煙にはこれらの材料が混ざり合ったものやPM2.5が含まれています。
そのため、もし花火の煙を直接大量に吸ってしまうと、ぜんそくや気管支炎といった呼吸器系疾患を引き起こす可能性があります。
また、直接は吸い込まなくとも、花火の打ち上げによって空気中に飛散した煙が地面や水面に降り注げば、土壌や水質汚染を招く原因にもなり得ます。

とはいえ、日本における打ち上げ花火による大気汚染はごくわずかなもので、そこまで環境に深刻な影響を与えることはないと考えられています。
一方、春節を祝う際に大量の花火や爆竹を使用する中国では、花火の煙でPM2.5濃度が悪化し、一時は大気汚染指数を示す6段階のうち「厳重汚染」にまで達しています。

また、ヒンドゥー教の新年を祝う「ディワリ」の際に同じく大量の花火や爆竹を使用するインドでも、一時はPM2.5の観測値が最大の「999」にまで達したことが分かっています。
これは、花火の大量使用が実際に環境に悪影響を及ぼすことがよく分かる例だと言えるでしょう。

玉皮などの残骸の発生

打ち上げ花火の火薬を詰める容器の「玉皮」は、一般的には厚紙などを原料としています。
花火が打ち上がった際、玉皮のほとんどは燃え尽きますが、一部の破片が燃え尽きず地上に飛散すると、自然分解されないままゴミになってしまうことがあります。
また、場合によっては人の頭に落ち、人的被害を引き起こすおそれもあります。
なお、飛散した玉皮を全て回収しようとするのは莫大な労力と費用がかかるため、あまり現実的ではないと言われています。

鳥への被害

2020年から2021年になる瞬間、イタリアの首都ローマではある市民が個人的に打ち上げ花火を行ったことによって、街中に鳥の死骸が転がるという事態となりました。
死骸のほとんどはムクドリで、花火に驚き一斉に飛び立ったことで窓や電線に衝突したり、お互いにぶつかったりしたことが死因だと考えられています。

これに対し、英国王立鳥類保護協会(RSPB)は「花火が野鳥に害を与えているというエビデンスはほとんど無い」とする一方で、「花火の影響は雷雨がもたらすものと非常に近い」とも述べています。

大規模な花火大会の場合、野鳥の棲み処のない開けた場所で行われることが多いため、このような事態が発生する可能性は低いでしょう。
しかし個人的に打ち上げ花火を行う場合、周囲に野鳥の止まり木が無いかよく確認しないと、野鳥の生態系に有害な影響を及ぼすかもしれないのです。

山火事の危険性

Sammy-SanderによるPixabayからの画像

花火を打ち上げた際に山に落ちた燃えカス、または山で個人的に行った花火が、山火事の発生を招くことがあります。

たとえば、2017年にはアメリカ・オレゴン州で当時15歳の少年が花火を山に投げ入れたことで、約200平方キロメートルが焼失する大規模な火災が発生しました。
この少年に対し、オレゴン州の裁判所は日本円でなんと約40億円にも及ぶ賠償金の支払いを命じました。

また、日本では2020年6月、新型コロナウイルス感染拡大の収束を願って全国各地で花火を打ち上げるプロジェクトが実施された際、北海道札幌市南区の藻岩山から上がった花火の燃えカスが山の中腹に落ち、計320平方メートルが焼ける事態となりました。
このプロジェクトでは、燃えカスが落ちると想定される場所には事前に水をまくなどの対策が取られていましたが、それでもこのような山火事が発生してしまいました。

山火事は、人々や野生生物の暮らしを脅かすだけでなく、二酸化炭素を吸収する植物の焼失と、さらなる二酸化炭素の発生の原因にもなります。
ほんの少しの燃えカスや、悪ふざけで山に向かって打ち上げた花火が、取り返しのつかない事態を招くことになるのです。

花火大会でのゴミのポイ捨て

花火大会では、かき氷や焼きそばなどの屋台を巡るのも一つの楽しみですよね。
しかし大規模な花火大会の終了後は、必ずと言っていいほど出店で買った食べ物の容器や、各自で持参した飲み物の空き缶などが散乱します。
それだけでなく、花火を見る時に使用したブルーシートがそのまま置き去りにされていることもあります。
こうしたゴミのポイ捨てや放置は、言うまでもなく地球環境を悪化させる大きな原因となります。

また、海辺や川の近くで開催される花火大会の場合、ポイ捨てしたゴミが海や川の中に入ると、地上だけでなく海洋環境も汚染されることになります。
実際、2018年に神奈川県藤沢市の片瀬海岸で花火大会が開催された後には、海辺に多くのゴミが散乱する様子を捉えた写真がSNS上で拡散され、多くの批判の声が上がりました。

このような現状を踏まえ、各自治体では花火大会開催前にゴミの持ち帰りを呼びかけたり、ゴミ捨て場を明確化したりするなどの対策を取っていますが、なかなか大きな改善には至っていません。
これに関しては花火自体の問題ではなく、花火大会に行く一人一人のモラルの問題だと言えるでしょう。

近年注目を集める「環境に優しい花火」ってどんな花火?

ここまで、花火が環境に与える影響について解説しましたが、これらの影響を最も憂慮しているのは、他でもない花火師の方々です。
そのため、近年では多くの花火製造会社が、環境に配慮した花火の開発に取り組んでいます。

そのうちの一つが、滋賀県長浜市に拠点を置く花火製造会社の「柿木花火工業」です。
柿木花火工業は、花火が打ち上げられた際に発生するゴミの減量化を目指し、4年の月日をかけて「エコ花火」を完成させました。

エコ花火の特徴は、玉皮に生分解性プラスチックを採用している点です。
これによって、もし魚や鳥が破片を食べたり、海に破片が流入したりしたとしても、生態系や環境に影響を与えずに済みます。

また、割火薬(花火玉を爆発させ光や色を遠くへ飛ばすもの)には独自に開発した植物の種を使用しており、地上に落下してもそのまま燃え尽きて自然に還るため、回収の必要がありません。

これらの取り組みによって、エコ花火はゴミの排出量を通常の15分の1程度に抑えることに成功しています。
これだけ環境に配慮していながらも、出来上がった花火玉は一般的な花火玉と同じように扱うことができるそうです。

また、神奈川県鎌倉市の花火大会では、「環境に配慮した花火大会」というコンセプトのもと、2014年より市内の神社や森林から出た間伐材を火薬に加工した「地産地消型花火」が採用されています。
さらに、今後は海に落下する玉皮に水質浄化作用を持たせる、魚のエサにもなる素材を使用するなどの案も検討しているそうです。

2022年の鎌倉花火大会は残念ながら中止となってしまいましたが、来年こそ開催されることを願いつつ、今後もその取り組みには注目していきたいですね。

まとめ

今回は、花火や花火にまつわる出来事が環境に与える影響について解説しました。
私たちがただ「綺麗!」と思いながら眺める花火には、綺麗なだけではないさまざまな側面があることが分かりましたね。

これからも夏の風物詩である花火を楽しむためには、花火と環境問題の関係について私たち一人一人が理解し、できる範囲で環境負荷を下げる取り組みをすることが大切だと言えるでしょう。

参考:中国でPM2.5急上昇、最悪レベルに 旧正月の花火で – テレ朝news
参考:花火、爆竹で大気汚染深刻 恒例の「正月」祝い―インド首都 – JIJI.COM
参考:エコ花火について – 関西の花火師 株式会社柿木花火工業
参考:「環境に優しい花火大会に」 地産地消の取り組み進む | 鎌倉

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