「ZEH」や「ZEB」って何?家造りと再生可能エネルギーのこれから

太陽光発電

「ZEH」「ZEB」という言葉を聞いたことはありますか?
近い将来、マイホームを建てようとお考え中の方なら既にご存知かもしれませんが、ほとんどの方にはまだまだ馴染みのない言葉なのではないでしょうか。

実はこの2つは、住宅資産価値や太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの普及に、今後深く影響してくるのではないかと言われています。
今回は、「ZEHとZEBとは一体何なのか」という点を解説しながら、住宅用太陽光発電システムのこれからを探っていきたいと思います。

ZEHって何?

ZEH(ゼッチ)とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称のことです。
とはいえこれだけ聞いても、「何のこと?」と思ってしまいますよね。

ざっくり説明すると、「断熱性の高い省エネ住宅=ZEH」となります。
より掘り下げて書くと、ZEHとは「高性能な断熱性を用いて住宅を建設し、さらに太陽光発電システムなどを導入して自家発電を行うことで、年間のエネルギー収支のマイナスをほぼゼロにすることを目指す住宅」のことを指します。

2018年7月の閣議決定において、政府は「2030年までに、新規住宅の平均でZEHの実現を目指す」という目標を掲げています。
このことから分かるようにZEHは国が積極的に推奨しているため、今後マイホームの建設を検討している人が取り組みやすいように、補助金制度も導入されています。
「断熱・省エネ・創エネ」の3つを同時に実現できるZEHは、まさに次世代型の住宅スタイルと言えるでしょう。

ZEH住宅にした場合のメリット

ZEH住宅を建設した場合のメリットは多数ありますが、ここではその中でも特に「これは嬉しい!」と思えるポイントに焦点を当ててご紹介していきたいと思います。
ちなみに、太陽光発電システムに関するメリットは当コラム内の別記事で詳しく述べているため、気になる方はそちらも是非チェックしてみてくださいね。

それでは、主なメリットを見ていきましょう。

光熱費の大幅カット

住宅をZEHスタイルにした場合の最も大きなメリットは、光熱費の削減だと言っても過言ではありません。
前述したようにZEH住宅にするためには、再生可能エネルギーを用いた自家発電を行うことが前提となっています。

そして現在、家庭用自家発電システムとして最も普及しているのが、太陽光発電システムです。
住宅用の太陽光発電システムで発電した電力で、生活に必要な電気をまかない、使い切れず余った電力は売電すれば、光熱費のみならず生活費全体の削減にも繋がります。

「昼間は極力電気をつけない!」「エアコンはなるべく使わない!」などの我慢をせず、快適に毎日を過ごしながらも節約が叶うのは、かなり嬉しい点だと言えるのではないでしょうか。

環境負荷の低減に貢献できる

現在、日本の多くの電力会社がメイン発電方法として用いている火力発電ですが、この方法では発電時に多量の温室効果ガスを排出するため、かねてより地球温暖化への影響が懸念されています。

それに対し、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを用いた発電方法なら、温室効果ガスの発生を最小限に抑えることができると言われています。
そのためZEH住宅に暮らしていれば、それだけで環境負荷の軽減に貢献できることになります。

資産価値が高い

日本には、BELLS(ベルス)という、住宅が持つ省エネ性能を評価する制度があるのですが、省エネ性に特化したZEH住宅であれば、この制度で高い評価を得ることができます。
この評価が高ければ高いほど、住宅の資産価値も上がるとされているため、万が一将来持ち家を手放すことになっても、それがZEH住宅であれば高値で売却できる可能性が高くなります。

冷暖房を多用しなくても、一年中快適な室温を保てる

ZEH住宅は基本的に高断熱、高気密の素材で造られるため、断熱材の種類によって多少の差はあるものの、年間を通して快適な温度を保つことが可能だと言われています。
また部屋ごとの温度にも差が出にくいため、「お風呂場が寒い!」「トイレだけ暑い…」などの経験をすることもほぼなくなるでしょう。
特に高齢者の方にとって、急激な温度差により引き起こされる「ヒートショック」は命を脅かす危険性があります。
その点、住宅内の温度が比較的均等になるZEH住宅なら、急な温度変化にも惑わされず快適に過ごすことができるでしょう。

ZEH住宅にした場合のデメリット

ご紹介してきたようにメリットの多いZEH住宅ですが、反対に僅かながらデメリットと感じるポイントもいくつかあります。
今後マイホームを建てる予定があり、ZEH住宅も視野に入れている方は、メリットとデメリットの両方をしっかり理解した上で、最終判断されることをお勧めします。

それでは、主なデメリットを見ていきましょう。

通常の住宅に比べて高コスト

断熱性に優れた素材を使用し、自家発電システムも設置するとなると、当然そういった設備のない住宅に比べれば、ZEH住宅の建設にかかる費用はどうしても高額になってしまいます。
もし自家発電システムに太陽光発電を選んだ場合は、それだけでも最低100万円前後は費用がかかると考えた方が良いでしょう。

とはいえ、長期的に見ればZEH住宅は節電や節約に適しているため、初期費用の高さゆえに敬遠してしまうのは勿体無いと言えます。
どうしても決めかねる場合は、専門の業者にZEH住宅を選んだ場合の長期的な収支シミュレーションを出してもらい、判断材料の1つにすると良いかもしれません。

住宅の設計が理想通りにならない場合がある

新しく家を建てるとなった場合、多くの人は「ここに大きな窓が欲しい!」「扉の位置はここが良い!」などの理想を抱くのではないでしょうか。

しかしZEH住宅の場合、まずは断熱性や気密性を重視するため、熱の出入り口になる窓や扉の位置や大きさには制限がかかってしまう可能性があります。
そのため住宅の見た目にこだわりがある場合は、建設業者とよく話し合い、その上で互いがある程度妥協はしつつも、なるべく納得のいく家造りを進めていけると良いでしょう。

ZEBって何?

ZEB(ゼブ)とは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング」の略称のことです。
その名の通りビルなどの建物全般のことを指していますが、主な目的はZEHとほとんど全く同じと言って良いでしょう。

唯一の違いを挙げるとすれば、ZEHは主に個人の住宅に向け推奨されているのに対し、ZEBは企業や法人が所有する建物に向けて推奨されている点です。
ZEHと同様、2030年までに新築公共建築物のZEB化を広めるという目標が掲げられており、年々国による開発が進んでいます。
普及を進めるべく、環境共創イニシアチブ(SII)が作成したZEB設計ガイドラインには、オフィスビルから銀行、病院、学校に至るまで、幅広い建築物の設計方法や事例が公開されています。

このように多数の人が働く場のZEB化は、仕事の効率化にも良い影響を与えると言われています。
その裏付けとして、国土交通省の知的生産性研究委員会による研究では、「職場環境が快適になると、従業員達の知的生産性も向上する」ということが分かっています。

ZEBの実現化に成功した建物は、前述した環境共創イニシアチブ(SII)がHP上で公開しているので、気になる方は是非一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

売電価格の低下などを受け、一時は衰退するかと思われた太陽光発電事業ですが、年々活発化しているZEHやZEB推進活動の影響を受けて、また徐々に普及率を上げていくのではないかと考えられています。
これからの未来を担う新しい建築スタイルであるZEHとZEB、その核となる再生可能エネルギーの活用が一体どのように広がっていくのか、今後も目が離せませんね。

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