2015年に国連が目標に掲げて以降、先進国を筆頭に世界中で取り組まれているSDGsですが、国や企業ではもちろん近年では大学でも様々な取り組みが行われており、それは日本においても例外ではありません。
イギリスの「タイムズ」発の高等教育情報誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE:ティー・エイチ・イー)」が発表しているSDGsへの取り組み具合を基準とした「THE大学インパクトランキング2020」には、日本の大学もランクインしています。
その中でも上位にランクインした大学は、以下の通りです。
・北海道大学…SDGs目標2「飢餓をゼロに」において10位
・東京大学…SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」において1位
・東北大学…SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」において9位
さらに北海道大学は、全体ランキングにおいても全766校中76位と上位に食い込んでいます。
しかしランキングの上位に入っていなくとも、日本にはまだまだSDGsに取り組んでいる大学が多くあります。
その中から今回は代表的な10校と、それぞれの具体的な取り組みについて紹介していきましょう。
北海道大学
北海道大学では、「食のロバスト化」を目指す研究が行われています。
「ロバスト」とは、「あるシステム(もしくは体系)が環境や気候などからの外的影響によって変化することを防ぐ内的な強靭性」のことを指します。
北海道大学はこのロバストを含めた生産工学の概念を農林水産業に浸透させ、気候変動や人口増加にも左右されない持続可能な食糧生産を目指しています。
現在はこの目標を実現させるべく、他大学や行政機関などの協力のもと「ロバスト農林水産工学国際連携研究教育拠点構想」が進められています。
東京大学
東京大学は2017年に設立した「未来社会協創推進本部」のもと、「SDGsに関する取り組みを大学全体のアクションとして可視化および発信する」という目標を掲げています。
目標達成のための取り組みを具体的に可視化するべく、学内で行われる教育研究活動の中でも特にSDGsと関連性のある取り組みは「未来社会協創推進本部登録プロジェクト(SDGsプロジェクト)」に登録され、その登録プロジェクト数は2020年12月時点で200を超えています。
「途上国での貧困と自然災害の関連性分析」や「CO2とそれによる環境負荷を軽減するための微細藻バイオリファイナリーの創出」など、SDGs達成のカギとなるような様々な研究がSDGsプロジェクトには登録されています。
東北大学
東北大学では、SDGsが採択された年と同じ2015年より「社会にインパクトある研究プロジェクト」がスタートしています。
このプロジェクトでは持続可能性や環境問題、そして経済や教育など様々な側面から課題が設定されており、偶然にもSDGsとの共通点が多かったため、現在ではプロジェクト自体の達成とSDGsの達成の両方を目標に掲げています。
また東北大学大学院国際文化研究科では「グローバルガバナンスと持続可能な開発プログラム(G2SD)」という講義を2019年度より開講し、学生や院生達のSDGsに対する意識向上およびSDGs達成のための取り組みに率先して参加できる人材の育成を目指しています。
筑波大学
筑波大学はSDGsの概念が生まれるよりも以前から、社会や環境問題における取り組みを先駆的に行ってきました。
具体的には1977年の日本では初となる「環境科学研究科」の設立や、1983年の「国際関係学類」の設立などがあります。
また2013年には、文部科学省による「世界展開力強化事業」においてSDGs達成に貢献出来る人材の育成を宣言しています。
さらに2017年には、日本の国立大学として初めて「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に加盟しています。
UNGCはSDGsが採択される以前から人権問題や環境問題などに取り組んでいるグローバル組織となっており、筑波大学はこのUNGCに参加することで、より地球規模の課題に取り組むことを目標としています。
広島大学
広島大学は2018年に「広島大学FE・SDGsネットワーク拠点(NERPS)」を立ち上げ、「持続可能な発展を導く科学」を確立させるべく、全学においてSDGs達成のための教育力や研究力の強化に力を注いでいます。
その取り組みは学内に留まらず、SDGs目標11の「住み続けられるまちづくりを」に基づいた大学と市が一体となった地域貢献活動や、目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」に基づいた短期交換留学プログラムなどを行っています。
京都大学
「SDGs先進都市」とも呼ばれている京都市では、京都大学を含めた産学公が連携し、SDGsの達成に向けて考え、行動し、発信するための「京都 産学公 SDGs プロジェクト」が2019年に発足しています。
その後、さらにこのプロジェクトを推進してSDGsのより具体的な社会実装を目指すべく、京都市、京都大学、ソフトバンク、JTなどの連携のもと「京都超 SDGs コンソーシアム」が立ち上げられています。
コンソーシアムでは、「資源循環や省エネ・創エネに関する取り組み」「人口が減少している中山間地域の維持」「持続可能性をテーマにした教育プログラムの開発」など、SDGsの社会実装を目標とした取り組みやシンポジウムや博覧会等による発信・情報交換などが行われています。
立命館大学
学校法人立命館は2019年に「立命館SDGs本部」を設立し、大学に限らず初等部、中等部、高等部においても、「世界の問題を自分事として考えられる人材」を育成するための様々な活動を取り入れています。
初等部では1年を通じてSDGsの要素を組み込んだ授業を展開(主に5年生の取り組み)し、中等部・高等学校では校外研修で環境問題を抱える国や地域に訪問し、前後の授業も併せて解決策を考える横断型教育を行うなどしています。
そして大学では、学生主体のSDGsイベントである「Sustainable Week」が2017年より毎年開催されています。
このイベントは毎年学生に限らず地域の人々も巻き込み、様々な角度からSDGsについて考えるプログラムを展開しています。
早稲田大学
早稲田大学は、異なる分野の研究者や技術者の出会いの場を作ると共に、研究成果を社会還元するための支援促進を目的とした「早稲田地球再生塾(WERS)」を設立しています。
2018年には「早稲田地球再生塾第一回勉強会」が開催され、約130名が参加しました。
WERSはSDGsの他に政府が定めた未来社会の姿である「超スマート社会」にも対応し、またバイオテクノロジーを用いた環境問題の解決と経済発展を目指す「バイオエコノミー」の技術開発も目指しています。
名古屋大学
名古屋大学は「2024年度までに二酸化炭素排出量を30%減少させる(2005年度比)」という目標を掲げ、かねてよりエネルギー消費量が特に増加する夏季や冬季を中心に「省エネ・節電実行計画」を実施しています。
その取り組みが高く評価され、名古屋大学は「平成29年度(2017年度)省エネ大賞」において「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しています。
名古屋市立大学
名古屋市立大学は、2020年12月より医療系アプリ及びソフトウェア開発を手掛ける「ジーワン株式会社」と連携し、SDGsに基づいて計画された「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」に関する研究開発を開始しています。
このプログラムでは産学連携を基軸に自治体、市民なども巻き込んだ産学共創により、SDGs達成のための未来の社会像(拠点ビジョン)を策定するとともに、「拠点ビジョン実現のための研究開発」とそれを支える「持続可能な産学共創システムの構築」を推進しています。
まとめ
今回は、SDGsに積極的に取り組んでいる日本の大学10校を紹介していきました。
もしこれを読んでいる大学生の方がいたら、「自分の通っている大学は何か取り組んでいるのかな?」と調べてみてはいかがでしょうか?
そして大学生以外の方も、これをきっかけに「すぐにでも始められそうなSDGs達成のための取り組み」について考えてみると良いかもしれませんね。